2017年2月28日
『仁王 公式ガイド』レビュー……と『仁王』進捗状況2月 27 日発売だった『仁王 公式ガイド』。コーエーの攻略本ということと、税別 1,800 円という価格もあって、何の疑いもなくAmazonで予約していたのだが、届いて見てビックリ。薄い。税別 1,800 円でこれは嘘だろ? と思い、最初のページを開いてみると……
Oh……。Nioh……。最速攻略本だ、これ……。 このトラップに引っかかった原因としては3つ。 ●このご時勢に、まだ「最速→完全攻略本」の流れをやっていること自体が珍しい 最近は攻略本が出ること自体が珍しいが、ゲームの発売から約1か月経過後の攻略本は、大抵、完全攻略本のほうである。このタイミングで、コンプリートじゃないほうの攻略本を出してくること自体がまずありえないので、攻略本を買い慣れた人間ほど引っかかりやすい、高度なトラップ。最速攻略本の価格が税別 1,800 円ってのも、なかなかない。 コーエーの攻略本での過去の前例にしても、「マスターガイド」と「コンプリートガイド」に分けての同日発売や、上下巻に分かれているものはあったが、「公式ガイド」という微妙なネーミングで単巻であることと、この公式ガイドが Amazon に掲載されたときは、まだコンプリートガイドの存在は明らかになっていなかったというのも巧妙。計画的犯行臭がスゴい。せめて店頭で実物を見ることができていれば、薄さで回避できたのだが、Amazon ではそうもいかない。 あと、以前の『零』のときに「コーエーの攻略本は売り切れやすい」ということを身をもって知ったので、買うなら早めのほうがいい、と 急いだのも裏目に出た。『零』シリーズの攻略本は、零 ~眞紅の蝶~ 攻略&設定資料集 くれなゐの杜 そして、残念無念なことに、内容も微妙だ。かろうじてステージのマップは役立つかも……程度で、肝心要のボス攻略法がページの4分の1スペースで、たった4行の解説に留まっているのは、さすがにどうかと思う。
『仁王』において攻略本が欲しくなる要素の大半が「ボスの攻略」だと思うので、ここは最低半ページ、できれば丸々1ページ使って「ここの地形を使って、こうするとラクだぞ」的な紹介などを、写真を交えて紹介するべきだろう。 ボスの写真も、妙に暗い。↑の画像でも分かると思うが、実際の誌面をなるべく明るく撮ってみたのが、これ。
元々、ややザラつく感じの紙質なので、普通以上に画面が暗く見えてイカン紙質ではあるのだが、それにしても……という感じ。ちなみに、同じ画面をキャプチャして、縮小してみたのが、これ。↓
ステージ攻略にしても、載っているのは関ケ原編までで、アイテムや武器防具データのページにはアイコン表示もなく、単純に見づらい。守護霊のページの写真も、これまた暗く、しかも今度は写真に謎の斜線が入っている。
・ ・ ・ ゲームのほうは、ちょっと忙しくてまだクリアーまではプレイできていないのだが、今のところ、イイ感じ。難しすぎずカンタンすぎず、ボスで苦戦して「あー、こりゃ、しばらくここで詰まるな」と感じても、しばらくリトライしていたら「あ、いけた」となることが多い。今のところ、『ダークソウル』シリーズよりリトライ率は低い。最終体験版は正直かなりキツかったが、あれよりは遥かにマシになっているように見える。最終体験版のステージとボスは中盤くらいにあるモノらしいので、そこに到達したら結局同じ苦労をすることになるかもしれないけど……。 しかし、ただでさえ攻略本が死滅しかかってるんだから、良質な本だけを出していってくれよ……とガックリくる1冊だった。ステージマップにしても、大判の本にしたほうが見やすかっただろうし、せめて設定資料やインタビューでも入っていれば存在価値も生まれたのだが、この様子だと、コンプリートガイド発売後はまったく不要な本になりそうで、残念感が加速する。 今の世代がこんな本を税別 1,800 円で掴んだ日には、攻略本不信になって、二度と攻略本なんか買わなくなるぞ。ていうか切実に返品させてくれ。最速攻略本と知っていたら買わなかったぜ。 この質を見ると、3月 30 日発売の仁王 コンプリートガイド ■関連記事
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2017年2月19日
PS Vita『かまいたちの夜 輪廻彩声』レビュー名作サウンドノベル『かまいたちの夜』に、主に以下の変更を加えたリメイク作品。 ・シルエット→イラストに変更 一番驚いたのは、金のしおり後に出現する「ちょっとエッチなかまいたちの夜」を新規声優で録り直しているところ。よくよく考えてみると、そこだけ当時のドラマ CD の声優が演じたらワケ分からなくなるし、やむを得ずの録り直しなのかもしれない。元々、あのドラマ CD の透はハッスルしすぎだったが、あれに全然負けておらず、よくここまで再現したなと感心する。今回の透の声優は殊勲賞かもしれない。 ゲームシステムは PS1 版をベースに、理想的な最終進化を果たしている。高速既読スキップがマジでありがたい。もちろんフローチャートは健在で、総プレイ時間表示まで用意。音楽鑑賞モードあり、CG鑑賞モードあり、トロフィーもある。さらに、選択肢コンプリート率や全メッセージコンプリート率まであり、ここまでを 100 %にしないとプラチナトロフィーは取れない。システム面では究極の『かまいたちの夜』といえる。
新規シナリオに関しては、竜騎士07氏のものに加え、かつてのファンブックに掲載されていた『A Novel』(我孫子氏執筆)も収録されている。ただし選択肢はないので、あくまでオマケだろう。 さて、良かった点は以上です。以下、各要素を見ながらのレビュー。ハッキリ言ってスゲェ長いので、このゲームに大して興味のない人はスルーしたほうがいい。推敲もしていないので、後ほど、少し時間が経ってから書き換える部分もあるかもしれない。良ければ、本作が発表された昨年時に印象を書いた記事と合わせてご覧いただきたい。
今作は、23 年前に発売されたスーパーファミコン版と比較しても、あらゆる演出力が低下している。「シルエットがイラストに変更になった」こととはまったく別のことで、特に腹立たしいのは、作る側に当時のような技術がないからそうなったわけではなく、完全に手抜きと妥協によるものという点。リメイクするのはいい。時代に合わせてイラストにした『かまいたちの夜』を出すのもいい。ただ、クオリティは、しっかりしてほしい。その一部を挙げてみよう。
BGM は全曲が新アレンジされてはいるが、曲の印象は以前のままなので、誰も気になることはないだろう。ただ、ここまで印象が変わらないのなら、40 曲以上もわざわざ新アレンジで作り直す意味あったんかいな、と思わなくもない。ちょうど PS1 版のサントラにはプレミアがついているので、そのまま流用して再販すればサントラ結構売れそうなのに……と思ったが、再利用しようにも、権利関係ややこしいのかな……。 夕食時にコートの男を見るときの、「あの人、ヤクザかな」の BGM だけが新規の曲に変わっているのだが、これは効果音扱いかもしれない。たしかスーパーファミコン版のサントラにも入っていなかったはず。まあ何にしろ、なんでこれだけを新たに作ったのかは謎のままだけど……。 ……と、曲はそんな感じだが、効果音の違和感は、なかなかに多い。例のアレが「デドー」ではなくなったのが一番大きいが、「ピンポーン」のチャイム音も、一軒家のチャイムっぽくて、どうにも響かない。「ピンッ ポンッ」って感じ。以前は「ピィィーン ポォォーン」だった。あの微妙に伸ばす感じのチャイム音だからこそ、あのシーンの怖さが引き立っていた気がするんだが……。 また、過去のバージョンでは田中の部屋に踏み込むときに BGM はなく、風が吹きすさぶ音が BGM 代わりだった。それがまた、あの部屋で起きている不可解・不安な状況の演出に一役買っていたと思うのだが、今回は吹きすさぶ風の音は最初だけで、会話が始まると無音になるのが気になった。緊迫感がいきなりなくなる感じ。窓も開きっぱなしなんだから、ここは会話中も風の音を入れてほしかった。 ついでにツッコんでおくと、田中の部屋に突入した際にはためくカーテンが、今回は一切動かない。
あと、雪が落ちる音も微妙で、遠くで雷が落ちたような音。今回の効果音は総じてイマイチ。昔のをそのまま使えば労力的にも軽減できるだろうに、これも権利関係の問題なのだろうか。
基本的に、立ち絵に工夫がまったくない。 シルエットのときはキャラクターの位置関係などもちゃんと表示していたが、今回の立ち絵はひどく手抜きで、絵師に数パターン描かせたものを使い回しているだけ。言ってしまえば、よくあるギャルゲー・エロゲーの作りだ。名場面、といえるようなシーンは一枚絵で表示するべきだとは思うが、一枚絵が描かれているのは、ほんの一部。掃除用具入れから猫のジェニーが飛び出してくるシーンも、動きなし。 特に小林さんは、基本の立ち絵を腕組みポーズにしてしまったせいで、あらゆる場面で腕を組んでいることが多く、本編で犯人を取り押さえるシーンの文章では「小林さんが犯人の首に両腕を巻き付けた。」と書かれているのに、腕組みしたままの小林さんの立ち絵を犯人の背後にまわらせるだけなど、失笑ものの演出。せっかくイラストにしたんだから、こういうシーンこそ、描き下ろそうや……。
しかもこの後、こうなる。
ていうかこの絵師さんは、死体の表現にしても、黒目の部分を白目の上のほうに描いとけば OK と思っているフシがある。死んだり気絶したりしたら全員眼球が上向きになるわけではないぞ。
本作の前評判はとにかく萌え絵がもたらす影響への不安感が10割といってもいいくらいだったと思うが、その不安は、そのまま的中している感じ。もう、「やっぱり」という感想しか出てこない。 これは断言するが、登場人物の年齢の描き分けができていない点が最大のネックだと思う。OL 3人組はヘタすると小学生に見える。
春子によると、裏で結構汚いこともしてきて今の地位を築いた人なので、その割には瞳が純朴すぎるというか、目元だけを見たら少年の瞳のような感じなのも気になる。なんか、見れば見るほど、ギャグマンガのキャラがキリッとした顔してるようにしか見えないんだよな……。 宝探し編における香山など、コメディタッチの役どころなら可愛く見えてくるのだが、本編だと、後半では犯人候補として疑われるキャラでもあるからなぁ。誰もが怪しく見える “疑心暗鬼” こそが『かまいたちの夜』本編の事件の魅力でもあるので、とりあえずコイツは違うな感がハンパないイラスト版の香山は、本編では致命的。もうちょい、マジメな顔(犯人でもおかしくない感じ)と、破顔したときの可愛い中年っぷりとを、絵のタッチで描き分けてほしかった。多分、香山の持つキャラクター性に対して、絵が上品すぎるんだと思う。啓子の絵を見たときも思ったが、この絵師さんは多分、ブス・ブサイクが描けない人だ。 それでは、適当にキャプチャして保存しておいた香山フェイスシアターをお楽しみください。
迫力不足という点では、スパイ編もなかなかキツい。
あと、スパイ編のクライマックス、真理が透を助けるシーン。
ちなみにこの画面では一切血が出てないが、次の画面で↓こうである。
絵師さんが謝罪した件は本当にわけが分からなかった。絵師さんは何も悪いことをしていない。頼まれた仕事をしただけだろう。謝るという行為は、悪いことをしたときや、自分に過失があったと認めるときにするものだ。今回のケースだと、絵師さんはスパイクチュンソフトや 5pb. の許可なしに勝手に謝罪したらイカンと思う。ただでさえ今は悪質なまとめサイトが必要以上に悪い方向に煽ってくる時代なんだから、「絵師が謝罪」というキーワードだけが独り歩きして、発売前のゲームに悪影響を与えるだけ。ていうか、実際、独り歩きしてたよね……。 「適材適所」という言葉があるが、今回の『輪廻彩声』は、それが誰の目に見ても「こ……この絵でいくんか?」ということだっただけ。結果的にやっぱり不評、ということになったとしても、絵師さんは何も悪くない。この絵師でいこうと決めた開発陣が悪いのだ。 ……しかし、この結果を見ると、この絵師さんにとって今回の『かまいたちの夜』の仕事は何も良い結果を生まなかったように思う。明らかに年配の人間を描き慣れておらず、描けるものの幅の狭さを宣伝してしまった。
●みどりが色白
元のゲームはもうあるんだからさ、絵師さんも最低限、1回はゲームやっとこうよ……。文章と矛盾出ちゃってるじゃん。あと何より、開発・販売側もチェック段階で指摘しないと。 PSP の『バーストエラー イブ・ザ・ファースト』で、小次郎の髪型が短髪に変わったのに「長髪男」と書かれていたのを思い出してしまった。思えばあれも、シナリオを書く人と絵を描く人の連携が無惨なまでにとれていない悪例だった。
雪の迷路編で遭難から帰還したとき、ペンション内で死体を発見して「香山さんの奥さんだ。」と言うが、この時点で透と真理は香山夫妻と出会っていないので、知らないはず。夕食後にナイター→雪の迷路編のほうなら問題ないのだが、ペンションに1回も行っていない状態からも雪の迷路編には入れるし、実際そっちのほうで「香山さんの奥さんだ。」になっているのを確認したので、これは「宿泊客らしき女性」のように修正しておくべきだろう。 ただ、これはスーパーファミコン版や PS1 版ではどうだったかを確認していないので、もしかすると昔からこうだったのか……?
このエンディングは「すぐに、一緒になれるだろう。」の名文によって、バッドエンドながらもファン人気の高い END だが、今回は自室の部屋の扉を映し続けるのではなく、すぐに吹雪の景色になってしまった。 このエンディングは、プレイヤー自身も自室の扉を見つめ続けることで「今にも犯人が、あの扉を開けて入って来るんじゃないか……?」という緊迫感があって、そこが大事だったと思うのだが……。
あのシーンは、シルエットのときは実際に何かが動いて、プレイヤーも「あれっ」&ゾクッと感じた名場面なのだが……。 ほかにもいろいろあるけど、キリがないので……。
たとえば叔父さんの車はセンターメーターになっていて、時代設定を刷新しているんだなと感じさせる一方で、夕食時に透が真理に対してかますギャグが谷啓、ハナ肇、植木等という、当時でも古く感じるラインナップのまま。迷宮編のネッシー・フッシーネタも、そろそろ本気で通じないと思う。 『鎌井達の夜』編の砂嵐演出にしても、最近のテレビはゲームの電源を消しても砂嵐になどならないので、今の世代はヘタすると砂嵐が何のことか分からないんじゃないだろうか。青い画面にして画面右上に緑色の文字で「VIDEO 1」とか表示させたほうがリアルだったように思う。現代風にリメイクってんなら、こういうところは手を抜いたらイカンだろう。
正直、女キャラの誰かが「アハハァ!」とか高笑いしながらイッちゃった目で武器振り回して戦うような、地の文が厨二病にかかってどっか行ったまま全然帰ってこない系のシナリオをやりそうな予感がしていたので、氏にしては随分まともなの出してきたなという印象。氏にしては。 以前、『真かまいたちの夜』のレビュー内で、初代『かまいたちの夜』のシナリオ群がウケた理由として、「殺人事件の話が主ではないサブシナリオでも、終盤には必ず、何かしら隠されていた真実が明らかになったりして、根底にあるのは常にミステリーだったからだと思う」と書いた。 そういう意味では、たしかに今回の竜騎士07氏のシナリオにもその要素があり、ちゃんと『かまいたちの夜』という作品の一端を担っている、といえる。竜騎士07氏っぽい(というか最近のラノベ作家にもありそうだが)、「めしゃめしゃめしゃめしゃ!!」など、擬音を文字で書いてしまう辺りや、地の文なのに透自身が喋っているような文章が混ざる辺りは気になってしまうが、そういうのは比較的序盤だけ。とりあえず読後感は確実に『真かまいたちの夜』よりは遥かにマシだった。ちゃんとカタルシスがある。
だが、このシナリオ、選択肢なしのマジノベルなので、“ゲームのシナリオ” としてはどうなんだろう、と思う。(※序盤に1か所だけ選択肢があるが、あれはどれを選んでも結果が変わらないので、選択肢の存在自体に意味がない) たとえば、微ネタバレになるが、犯人ではなく「自分がここにいる理由」「死んだ人物の名前」をプレイヤーに考えさせ、入力させることもできたのではないだろうか。せめてそれがあれば、と感じた。今回、ファンブックに載っていた『A Novel』も選択肢なしでそのまま収録されているが、このシナリオに選択肢がないことに違和感を覚えさせないためのデコイ役として入れたのではとすら感じた。 と同時に、初代『かまいたちの夜』以降、シリーズとして幾度となく送り出しては、初代を超えられぬ結果を残し続けてきたことに対して、竜騎士07氏なりの「もうええやろ」とでもいうような、「『かまいたちの夜』という作品は、もうこのまま眠らせてやってくれ」という引導のようにも感じた。あと、終盤でどさくさに紛れて季節を夏にしてひぐらしを鳴かせているのは笑った。 ひとつだけ苦言を呈すなら、この話は舞台がペンション・シュプールである必要はなく、『かまいたちの夜』の登場人物である必要もなく、話の内容に「かまいたち」が関わっているわけでもないので、『かまいたちの夜』の追加シナリオとしてこういう話を出してくる意味は、あまり感じられなかった。本編、オカルト編、スパイ編、Oの喜劇編、といった主要シナリオにおいて、「かまいたち」もしくは「かまいたちで切られたような傷跡」が必ず絡んでいただけに、惜しく感じた。もちろん、宝探し編や迷宮編といった小粒のおまけシナリオ的なものには「かまいたち」は絡んでいないので、絶対ダメというわけではないのだが。竜騎士07氏が本作のために書き下ろした話というよりは、竜騎士07氏が普段からストックしておいたショートストーリーの1つに『かまいたちの夜』の登場人物を当てはめたような印象を受けた。 ただ、この人は本当にミステリーには向いていないというか、何をどうがんばってもオカルトやファンタジー方面の要素が入ってきてしまうので、『弟切草』とか『かまいたちの夜2』のほうが向いている気はする。
今の世代に、今の時代に合った『かまいたちの夜』を……というコンセプトは良いと思う。だが、おそらくはイラストにしたせいでレーティングが CERO Z に跳ね上がっており、若い今の世代に向けるはずが、18 歳未満お断りになってしまっているのは如何なものだろうか。 しかも、プラチナトロフィー取得までやり込んで全シーンを確認したが、「この程度で CERO Z になるのか……」という印象。表現的には、スーパーファミコン版の頃のほうがキツいシーンはいっぱいあった。間違って真理を突き落としてしまった後、首がガクンとなるシーンとか。今回は階段の下で真理が倒れて動かないだけだから、応急手当もせず、いきなり全部放っぽって外へ走り出す透の行動には違和感を覚えた。
勘違いしないでほしいのだが、シルエットを絵にすること自体を批判しているわけではない。「萌え絵にすることのメリット」が分からないのだ。仮にも殺人事件の解明がメインのサスペンスなゲームなんだから、どういう時代だろうが、萌え絵はマズいとしか思えない。場の緊張感がゴッソリ抜け落ちる。コメディタッチと、鬼気迫る劇画並のものが両方描ける達者な人に任せるのなら、イラスト版『かまいたちの夜』も大歓迎だよ。 あるいは、全編が楳図かずおみたいな絵柄の『かまいたちの夜』だったら見てみたい。『漂流教室』風の。冒頭、スキーを終えた透と真理がペンションに向かったら地面がクレーターみたいにえぐれてて「ペ、ペンションがないっ!」とか、やってみたくなるだろう。あと、オカルト編が原作を数倍超えた怖さになると思う。
多分、開発・販売側は、『かまいたちの夜』をやったことのない今の世代に向けて、言うなれば『シュタゲ』チックに新生した『かまいたちの夜』を作りたかっただけなのだろう。しかし、萌え絵がすべてを狂わせた感がある。可愛い絵で新規の客を釣ること自体は別に良いと思うが、『かまいたちの夜』という作品に限っては、トレードオフで失っている物のほうが大きく感じた。 宝探し編のメッセージにしても、常に画面いっぱいに文章が出るゲームだからこそあのトリックが生きたわけで、今回の会話ウィンドウ方式だと、ログ画面に話者表示が混ざった状態で表示されるので、元のトリックを知らないことには、気付くのがほぼ不可能になってしまっている。ネットがあるからどうとでもなるやろという判断なのかもしれないが……。
とにかく発売前から悪い意味で話題になっていたが、個人的に気になっていたのは、「当時の世代が『かまいたちの夜』という作品から感じたスゴさを、形は違えど、ちゃんと表現できているか」という点のみだった。絵を見て分かるように、今の若い世代に向けて作られたものなので、開発・販売側としては、当時のファンが何を思おうが感じようが構わないわけだ。「そもそもお前らは購買ターゲットじゃねぇよ」と。 ただ、これを若い世代がプレイして「大したことないね」で終わってしまった場合、同時に、当時の『かまいたちの夜』も、今の若い世代にそれ以下の評価を喰らうことに繋がる。それが怖い。だって、まさか大昔に発売されたリメイク元のほうが何倍も優れているなんて、普通は思わない。「昔のはもっとスゴかったんだって」と言ったところで、「またまた。シナリオは一緒でしょ? 大げさな」で終わる。 「これをやった人が、シルエットの『かまいたちの夜』にも興味を持ってくれるといいな……」などと、優等生的な意見を述べるつもりはない。普通、微妙なものをプレイした後で、その元となった作品に触れようなどとは思わないからだ。 だからこそ、「当時は名作と評された作品を今の時代に合わせたリメイク」というのは慎重を要するのだが、発表当初から、あまりその辺りのことを深く考えていない感じというか、「シルエットを絵にして、文章も会話ウィンドウにだけ表示して……要するに最近のギャルゲー方式に変えてもいけるっしょ」的な、随分と軽んじている感があって、そこがずっと懸念点だった。結果は、ここまでに書いたとおりだ。 『かまいたちの夜』はストーリーがスゴいわけでもなく、トリックがスゴいわけでもない。「文章を読み進める」ということをゲーム化して、ヘタするとただのゲームブックになりかねないものを、とても丁寧に、ひとつひとつのシーンを、シルエットと音を使って描写していく。画面をまたがないように読みやすく計算された文章と、親しみやすい我孫子氏の文体は普段は文章をそんなに読まない人まで大勢引き込み、その職人的な緻密な仕事と手腕がスゴかったのだ。ウィキペディアによると、スーパーファミコン版だけで 75 万本売れたんだぜ? 文章読んでいくだけのゲームでだぜ? 金田一や名探偵コナンによる推理ものブームの前だぜ? リメイク作品のメリットは、大きく分けて以下の3つだろう。 ●1:それを知らない今の世代にその良さを伝えるとともに、シリーズを眠らせずに、継続してその存在感を誇示し続けていくこと しかし本作は、3を優先しすぎて、2を完全に捨てた感がある。こう言ってはナンだが、本作が売れようが売れまいが、話題になろうがなるまいがどっちでもいいというオーラを感じる。逆に、「そんなことはない、売れてほしいと思っているし、好評を博してシリーズ復活の狼煙になればいいと思っている」……のだとしたら、手を抜きすぎである。
『真』のときにも書いたが、好きなシリーズに辛辣なことを書くのはホントにツラい。体調おかしくなってくる。でも、嘘をついて「最高です!」なんて絶対に書きたくないし、仏心でそんなことを少しでも書いて「この要素は好評だったんだな」と勘違いでもされたら次回作以降で更なる負のスパイラルを生み出すので、ダメだと感じた部分や、「こうすりゃ良かったんじゃないの」的な代案は、可能な限り書いていきたい。好きなゲームに対して、俺ができることはそれだけだ……。
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