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2016年12月 7日

『懐かしスーパーファミコン パーフェクトガイド』レビュー

 先日、この記事で「ロクな資料本がない」と書いておきながら恐縮だが、この本、一応、全ソフトのリストが掲載されているっぽいので、「これも資料本の一種ではないか……? ううむ、チェックしておくべきか……」と悩んでいたところ、Kindle Unlimited の対象だったので、30 日無料をお試ししてみることに。先の記事のコメント欄で、この本はウィキペディア及びゲームカタログ@wiki から文章を無断転載しているらしいことを教えていただいたので、どうにも買う気にはなれなかったのだが、無料なら……。

 最近何でもそうだけど、Kindle Unlimited は放っとくと勝手に継続して契約することになってしまうので、無料期間後も契約するつもりがない人はここから解約しておくべし。

 ちなみに「どれが無断転載かなー」と思いつつ、とりあえずゲームカタログ@Wikiで『F-ZERO』を調べてみたら、「似通っている」では済みそうにないほど似ている箇所があって、初っ端からヒット。その後、ウィキペディアの『F-ZERO』の項を見てみると、これまたヒット。どう見ても両者の記述を足したとしか思えない。この本を持っている人や、同じく Kindle Unlimited で読める人は確認してみるといいと思います……。

 ・ ・ ・

 というわけでザッと読んでみたが、この内容で「パーフェクトガイド」は如何なものかと思うネーミング。「隠れた神ゲー」「音楽が良かった」「乗り物が印象的」などカテゴリ分けしてのランキング形式で 10 本選んでいくのがメインで、別に全ソフトを紹介しているわけでもない。一応、巻末に全ソフトリストがあるが、あくまでタイトルと発売日だけのもので、価格は無記載。ウーン。

 あと、気になるとこだけササッと読んでいっただけでも結構なミスがあった。

 まず「これはひどい」と思ったのは、歴代ゲームハードのページの、旧 Xbox の写真。

 なんと、Xbox One の写真になっている。

 OK、君たちが Xbox にまったく興味ないのはよく分かった。さては「なんか黒くてゴツい」くらいのイメージしかないな?

 黒いし、見た目が似てるのは分かるが、仮にもこういう本を作ろうとしているということは編集もライターもそれなりにゲームは好きだったり詳しかったりするはずで、そういう人たちがこんな見落としをするのかと驚いた。

 というか、グーグルの画像検索で「Xbox」と入れたら、ちゃんとトップに出てくるのだが、なぜ2番目のほうを載せたのか……。

 あと、気付いた点について、チョコチョコと。

●40 ページ目:『エメラルドドラゴン』

「RPG としては多少粗い点もあり、脇役キャラがスグに死んでしまうようなストーリーが災いしたのか、惜しくも『ドラクエ』や『FF』のような “主流” にはなれなかった。それでも愛された作品。

 この野郎、ヤマンにケンカ売ってんな? ヤマン以外はシナリオ上、効果的な死亡だったろうが! ヤマン以外は! あとな、脇役が死にまくるなら FF も負けてねぇぞ。FF2 は何人死んだと思ってるんだ。通夜が追っ付かないレベルだぞ。

 エメドラが主流になれなかった、というのはワケワカメで、ドラクエ・FF と比べたら、ほぼすべての RPG が主流になれていないだろう。エメドラは、むしろ成功した部類。まずパソコン版の時点で PC-88、PC-98、X68000、MSX2、FM-TOWNS と出まくってて、その後に PCエンジンでグラフィック大幅強化&キャラにドンピシャの声優熱演→最後にスーパーファミコンにまで移植されたんだから、そこの変遷書いとかないと。移植度にしても、スーパーファミコンにしてはがんばってたほうだろう。ヤマン以外は。

●41 ページ目:『美少女雀士スーチーパイ』

 見出しが「ジャレコの特技!? あからさまなオッサン狙い!!」って、オイオイ。当時のオッサンならニチブツマージャンとかそっち方面だろうし、脱衣目的なら、そもそもスーファミでスーチーパイやらんだろう。あと、オッサン狙いが特技って、地味にジャレコにも失礼。

『スーチーパイ』はイカサマ技をメインに押し出して、初心者・未経験者には取っ付きにくい麻雀というゲームをより身近に、手軽に感じさせる入門的なソフトであり、同時に園田健一の描く可愛いキャラたちの掛け合いを楽しむ、言ってしまえば、純オタク向けの商品。女性ファンも居てほしいくらいにはキャラが可愛いのだが……。スーパーファミコン版を語るなら、この作品だけが後の「アイドル雀士」じゃなくて「美少女雀士」な点について書くべき。

 そして、これ。

「もちろん全年齢向けなのでアダルト要素はないが、作りこまれたグラフィックは美少女ゲームとして二十分に成立している。」

 まさかこんなところで「くぅ疲」リスペクトじゃないだろう。きっと。「十二分に」という表現はあるが、「二十分に」は、ない。つよそうではあるけど。

 ……いやもちろん単純な誤植だとは思うが、これ、どうやったらこうなるんだろう。「じゅうにぶん」ってタイピングしていく過程で、何をどうやっても「にじゅうぶん」にはならない。「くぅ疲」コピペは元から「にじゅうぶん」と勘違いしているとしか思えないが、こういう本に原稿を書く人間に、そんなヤツいるのか? という。仮にも文章のプロだろ?

 さらにこのページの左上にある『ファイアーエムブレム』の紹介では、

「任天堂のシミュレーションRPGシリーズ『ファイアーエムブレム』は
 スーパーファミコンでも3作が『紋章の謎』『聖戦の系譜』『トラキア776』のリリースされた。」

 と、かなり混乱している。1回でも読み返せば気付きそうなものだが……。

●46 ページ目:『かまいたちの夜』

『かまいたちの夜』が「ホラーゲーム」のコーナーに入れられていて、完全にホラーとして扱っているのが気になる。あれは犯人を推理するミステリーであって、決してホラーではないんだけどなぁ。同コーナーのラインナップが『クロックタワー』『弟切草』『学校であった怖い話』と完全にホラーなので、余計に気になった。

 あと、見出しが「サウンドノベルの金字塔 ピンクのしおり集めに 悪戦苦闘のセレクト」って、ピンクのしおりは集めるものじゃないぞ。頼むから、せめて『かまいたちの夜』をやったことがある人に書かせてくれ。紹介文を見ても、明らかにやったことない人がネットで調べた情報を元に内容を想像してる感が出てて、胡散臭さがスゴい。

●52 ページ目:『アンダーカバーコップス』

「ウィットに聞いて富んでいる」という表現が気になった。「ウィットに富んでいる」「ウィットに富む」は分かるが、誤植か? それとも俺の知らない表現があるのか?

 ・ ・ ・

 サテラビューやニンテンドウパワー、果ては幻の任天堂製プレイステーションにまで画像付きで言及しており、「スーファミ都市伝説」や、CMを集めたコーナーなど、膨らませれば資料的に良い書籍になりそうな企画がちょいちょいあるのだが、よりによってこれらが全部後半のモノクロページに追いやられており、ページ数も少なく、なんとも残念なイメージが強い。

 全部を細かくチェックしていけば、まだまだ間違いや変な表現は出てきそうだが、そもそもなぜこうなったのかを想像すると怖い。これ、製作中に何かアクシデントでもあって、急遽ライター数人に声かけて、3日くらいで仕上げたんじゃないだろうか……みたいな怖い話が思い浮かんでしまう。

 奥付を見ると、書いてそうなのは8名。128 ページを8で割ると、ひとり 16 ページ。1日に約5ページ。短期集中で1日 15 ~ 20 時間労働なんてゴロゴロある業界だから、3時間に1ページ完成させればいい計算になる。やったことのないゲームは概要をネットで調べて、写真はエミュで……いや、掲載されている写真はかなり小さいので、それすらもネットから拾ってきて OK とかアンビリーバブルな作り方をしていたと仮定して、もし、レイアウトと文字量出しだけは編集によってすでに完成していたとしたら……3日での完成も充分に有り得るんだよなァ。怖いことに。※個人の妄想です。

 さすがに3日はないにしても、人間、急ぐととんでもないミスが出るもの。「怖いなぁ……怖いなぁ……」と稲川淳二みたいな独り言を言いながら読み終えるのでした。

 しかし改めて知ったが、この Kindle Unlimited は、なかなかにヤバい。かなりの雑誌が無料リストに載るので、月額 980 円だけで大量の雑誌を読めてしまう。特に女性の場合だと、ファッション誌は毎月複数買う人が居そうだが、980 円で何種類も読めるので、スゴいお得な気が。

 欠点を挙げるなら、対象の本が多すぎて、順番に確認していったら日が暮れること。同じ雑誌のバックナンバーが引っかかるので、こういうのは「この雑誌のバックナンバーを調べる」とかにして、表紙画像だけバーッと並べてくれると検索性高そうなんだけどなァ。

 ネットの記事にもあったけど、あの『ムー』がバックナンバー含めて読みまくれるので、無料期間中にできるだけ読んでみたい。試しに今月号を読んでみたが、巻頭特集が「ミステリーサークル2016」。「まだやっとったんかワレ」という気持ちもあるが、ミステリーサークルって元々は「UFO の着陸跡じゃないか」ということで関心が寄せられてたはずなのに、なんかもう「どれだけキレイな図形を描くか」の競争みたいになっていて、もはや職人芸の域に達したミステリーサークルの数々を拝むことができる。

 あと、どういう意義のページなのか分からないが、2ページだけ、最近のゲーム紹介があった。まさかあの『ムー』で、『フィリスのアトリエ』なんて単語を見ることになるとは思わなかった。映画や書籍の紹介もあったので、こういう雑誌であっても、世俗の流行りものには触れておく感じなのだろうか。

 しかしこうして読んでみると、「いかに “ありそう” に見せるか」の誌面作りの技術を学ぶには最高の教材じゃなかろうか。と同時に、休刊・廃刊が相次ぐ現代の出版業界において刊行され続けているということは、それだけ読者が居るか、または赤字であっても別の何かで補填してでも存続させる勢力があるということの証明でもあり……。

 怖いなぁ……怖いなぁ……。

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| コメント (2)

コメント

怖いゲーム「月面のアヌビス」の「ざくろの味とは姉妹品的な関係にあり」ってキャプションは、ウィキペディアの文章そのまんま。
クソゲー「真・聖刻」の誤字のくだりはカタログwikiからのほぼコピペ。


投稿者 ab : 2016年12月 7日 19:58

全部チェックすれば、多分そこ以外にもゴロゴロ出てきそうですよね……。

パクり元が個人のサイトやブログではなくWikiというのも、ある意味、悪質といえます。
「それを誰が書いたのかの証明」や、「多数の人が情報を書き寄せる形式のWikiで著作権は認められるのか?」など、
クリアーしなければいけない問題が多い。一番キツいのは、ある意味、無料で公開している情報なので、
「パクられた側にどういう不利益が生じたか」の証明が難しい。考えれば考えるほど頭が痛くなるネタです。

結局のところ、こういう件で裁判とかは仮に勝っても裁判費用のほうが多くかかったりしそうで現実味のない話になってくるので、
読者側で「ここは平気でパクった情報を元に本を出すところ」として脳内ブラックリストに入れていくか、
ツイッターなどで「この本はこういうパクリをしている」と情報拡散して、著者や出版社に打撃を与えるしかない、
というのが悲しいところでもあります……。


投稿者 夢崎 : 2016年12月12日 08:23

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