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2022年6月 4日

漫画版『十角館の殺人』

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 推理小説の中でも、「映像化不可能」な作品と言われ続けてきた『十角館の殺人』。2019 年から、まさかのコミカライズが始まり、先日 2022 年 5 月 23 日発売の第 5 巻で完結を迎えた。素晴らしいコミカライズだったと思う。

 映像化不可能な理由は小説のほうを読めば分かるし、まだ読んでいない人のためにも詳細は言えないが、さまざまなメディアミックスが行われるようになってからは、これは『十角館の殺人』という作品にとって地味な弱点だなぁとは思っていた。漫画化もドラマ化も映画化も無理。映えそうなのに、小説以外に広げようがないのだ。ただ、個人的にはこの「小説でしか成し得ない」という部分があるからこそ、推理小説の凄味というものをより強く感じた作品だった。

「じゃあ、このコミカライズはどうやって実現したの?」というと、ある意味では漫画の弱点でもある、ひとつのアイディアで乗り切っている。このアイディアを出したのが原作者の綾辻氏なのか、作画の清原氏なのかは分からないが、立派な発明だ。原作小説を読んでいれば、1 巻を読んだ時点で「あぁ、なるほど」と分かることだろう。

 キャラクターが全員耽美寄りの美形になっていたり、江南に至っては可愛い女の子に……という変更点もある漫画版だが、基本的には驚くほど原作に忠実。原作を初めて読んだときに「多分こんな感じかな……」と頭に思い描いていた十角館の内装が、ほぼそのまま再現されていて驚いたものだった。

 原作の細かい部分についてはさすがに忘れてしまっているが、「あれ? エラリイって真相に辿り着いてたっけ?」とか「真犯人も大変だな……。時代に合わせて、“衛星電話や携帯用 wi-fi を持ち込む奴がいたら壊さないと” とか考えさせられてる……」とか、今回、記憶と微妙に異なる部分もあったので、久しぶりに原作を再読してみるのもいいかも……と思わされた。

 1 巻の電子版が 6 月 9 日まで無料で読めるらしいので、興味ある人はゼヒ。

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