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2020年10月26日

PCエンジンあれこれ話

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 先日、PCエンジン互換機『Analogue Duo』が 2021 年に海外で発売されることが報じられた。PCエンジンDUO を意識した形状で、ファンにはたまらない作り。PCエンジンDUO は家庭用ゲーム機の中でもトップクラスのスタイリッシュなデザインだったと思う。

 Analogue 社はこれまでにファミコンやスーパーファミコン、メガドライブの互換機も出しているのだが、ステートセーブ&インストール機能がないっぽいので、「なら、実機でよくない……?」と個人的にはちょっと敬遠している。この Analogue Duo も、おそらく同じだろう。非公式ファームウェアを入れればそのへんもなんとかなるらしいのだが、そうするとグレーゾーンにいっちゃうわけで……。

 Analogue 社のマシンはどれも「エミュレータではなく FPGA」という点が最大かつ唯一のウリで、音と映像の再現性や、低遅延にこだわる実機派向け。しかし、今は CD 自体が経年劣化で読み込めなくなる可能性が出てきている時期。普通にディスクを入れて、ディスクをブン回して、ゲーム中も当時と同じ読み込みを行うの……? なんと悠長な……と感じてしまう。

 また、すでにうーぱーぐらふぃくすという物が出ているので、実機派でもこちらのほうが良いんじゃないかと感じる。「うーぱーぐらふぃくす」は PCエンジンの実機(白エンジン、コアグラ、コアグラII)に接続する機器で、無改造で装着できる。海外で、似たような製品として Super SD System3 というのがあるが、まったく無関係。

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こんな感じで装着する

 ステートセーブはないが、吸い出したゲームを SD カードに入れて起動できる。CD 系は PC 上で CD Manipulator を使って吸い出し、Hu カードの吸い出しは、これと PC を接続して行う。バックアップメモリの内容を PC に保存することも可能。また、CD(※SD カード内のデータ)への読み込み速度も、実機と同様にするか、可能な限り速くするかも選べる。ゲームによっては読み込み速度を速めると不具合が出るケースもあるため、こうなっていると思われる。HDMI 規格から外れた映像信号を出力する関係で、本体の接続側が DVI 端子になるが、DVI - HDMI 変換ケーブルを使えば、問題なく HDMI で出力できる。

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この超画質。外周部の格子模様は映像の範囲を分かりやすくするためのもので、設定で真っ黒にもできる

 この「うーぱーぐらふぃくす」、2年ほど前に購入したのだが、当初は動作が非常に不安定だった。SD カードとの相性問題が結構あるようで、俺の場合は、途中でゲームが止まってしまう現象に悩まされていた。「ひとまず、アップデートで安定するまで置いておこう……」という感じだったのだが、システムカードを SD カードから読み込めるようになるアップデートを機に、安定して動作し始めた。

 不具合が出たときに困ったのは、うーぱーぐらふぃくすがおかしいのか、本体が古くておかしくなっているのか、スーパーシステムカードがおかしいのか、使用している SD カードがおかしいのか、判別がつかなかったこと。本体、スーパーシステムカード、SD カードをそれぞれ複数用意して試せば原因の特定はできるだろうけど、中古の PC エンジン本体やスーパーシステムカードは一時期より値上がりしていて、安い物でも 5,000 円くらいになっている。2個3個と気安くは買えない。

 仕方なく、最も安い SD カードを買い換えてみて試したところ、症状が若干マシに。『スナッチャー』の序盤、車を運転しているシーンでほぼ確実に止まっていたのが、時々止まる程度になった。でも今度は「時々止まるって何だよ……」って感じで、安心してゲームできないのなら意味ないなぁ……としばらく放置していたのだが、前述の、すべてを SD カードから読み込めるようになるアップデートから安定して動作するようになり、不具合の原因がポツポツと掴めかけてきた。結論としては、公式でも言われているようなので SD カードの相性問題はあるが、俺の本体の Hu カード読み込みスロットか、Hu カード自体のどちらかが劣化しているのも確実となった。

 この「うーぱーぐらふぃくす」の良い点でもあり弱点でもあるのが、実機を使用すること。エミュレーションではなく実機で動作しているので、実機と比べて再現性がどうのこうのではなく、実機そのものの動きをする。ただし、今の時点でちゃんと動作する健康な本体を持っていることが前提で、DUO より前の、白エンジンかコアグラが必要になる。古い物なので、今は大丈夫でも、いつかは壊れるだろうし……という不安もある。

 また、CD-ROM2 のゲームを動かすならシステムカード(※スーパーシステムカードでも可)、SUPER CD-ROM2 を動かすならスーパーシステムカードを吸い出す必要がある。物が古いだけに、この吸い出しも結構厄介で、何度やっても吸い出しミスが発生。ファミコンカセットを本体に挿して電源をつけたら、画面が真っ暗とか真っ青……ってのは当時を知る人ならよく経験したと思うが、こうした接触不良を起こしてゲームが起動していない状態だと、吸い出しが成功しない。

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吸い出した物をROM チェッカーで調べてみると、CRC が一致しない物ばかり……。

 システムカードが壊れているか、本体の Hu カード読み込みスロットがダメになりつつあるか、どっちかだな……と諦めムードだったのだが、何度か試していたら、奇跡的に吸い出しが成功。吸い出しが成功したときは、吸い出し後にそのカードが実行される。たとえば、何らかのゲームの Hu カードを吸い出した後は、そのゲームを起動したときの画面になる。失敗していたときは、吸い出し後に真っ暗な画面続きだった。吸い出しに失敗していても、吸い出し作業自体は普通に完了したように見えるため、ここに気付くまで結構かかってしまった。吸い出し後に、常にROM チェッカーで調べて、「データベースのCRCと一致しました。」と出るかどうか確認したほうがいいだろう。

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システムカード吸い出しの場合、吸い出し作業後にこの画面が出ないとダメ

 読み込めない Hu カードは他にもいくつかあったのだが、しつこく何度も挿し込み直して電源を入れたり切ったりしていたら、なんとかなった。中でも、最後まで立ちはだかったのが GAMES EXPRESS CD CARD の吸い出し。これだけはマジで壊れてるのかもな……と諦めつつあったときに、奇跡的に成功した。

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GAMES EXPRESS CD CARD は、吸い出し後にこの画面が出ればビクトリー

 GAMES EXPRESS CD CARD はハッカー系の各ゲームに同梱されている物で、青と緑の2種類があったりするが、中身は一緒らしい。とりあえず、どちらかを吸い出して持っておくと安心。

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『ハイレグファンタジー』も動く

 ちなみに、他の吸い出し機で吸い出したシステムカードのデータをすでに持っているなら、それを SD カードに入れるだけでいい。昔のバージョンではこれができず、吸い出したシステムカードのデータではなく、実際のシステムカードを本体に挿しておく必要があった。少なくとも俺の環境では、これがネックだったようだ。そりゃあ、吸い出しの成功率がこれだけ低いくらいに読み込めていないとなると、まともに動作していたときのほうが少なかったんだろうなと分かる。

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システムカードのバージョン違い画面確認用に、Ver 1.0 のシステムカードも常備。これらは今後、Polymega でも使うことになるかもしれない。あと、たしか『獣王記』はシステムカードが Ver 2.0 以上だと不具合があったハズ

「本体の Hu カードスロットの読み込みがイカレているのか」、「システムカード自体がおかしくなりつつあるのか」、どちらかは不明だが、「正しく吸い出せたシステムカードのデータを SD カードに入れる」ことで、今までの不具合が一気に解消したので、このどちらかが主な原因だったと思われる。本体のファームウェアも幾度となく更新されているため、そっちで改善した可能性もあるが……。やはり、本体の劣化が最も深刻な問題かもしれない。

 また、本体だけでなく、正常に動くコントローラや AC アダプタの確保も問題となる。AC アダプタは互換性のある物がまだ売られているのでなんとかなる。2018 年頃にこれを購入したが、問題なく動いている。カスタマーレビューで「動いた」とあるので、こっちでも多分大丈夫だろう。

 コントローラが問題だが、コロンバスサークルの『【MD/PCE用】スーパーコンバーター』があれば、PS3 / PS4 用のコントローラが使えそうなので、確保しておくべきなのかもしれない。遅延があるのかどうかは不明。俺は奇跡的に問題なく動くアベニューパッド6を持っているので、今のところ、これでなんとか凌いでいるが……。PCエンジンに限らず、各ゲーム機ごとに優れたコントローラってのはあるんだけど、消耗品なのに入手手段が少ないので、ホント、なんとかならんものかと思う。「どんなコントローラでも 3,000 円で直します!」みたいなサービスをどっかが継続的にやってくれんものだろうか。修理用パーツを常時確保しておくのが難しいのかなぁ……。

 ・ ・ ・

 古い物をベースにしているという不安はあるが、CD-ROM 機よりは壊れにくいだろうし、システムカードを吸い出した後はすべてが SD カードからの読み込みで完結できるので、かつての PCエンジンのプレイ環境をより快適に、高画質で楽しみたい人にとっては良い品。まあ、そろそろ Polymega が出るから、今あえてこっちを買う人は珍しいだろうけど……。Polymega の内部は既存エミュレータのカスタムらしいので、Polymega で「あれ? 実機でもこんなだったっけ?」と感じたときの動作比較用にもいいかもしれない。

 ほとんど「うーぱーぐらふぃくす」の話になってしまったが、Analogue 社といえば、少し前に携帯機の互換機「Analogue Pocket」が話題になった。ゲームボーイとゲームボーイアドバンス、別売りのアダプタでゲームギア、ネオジオポケット、リンクスまでいけるうえ、別売りのドックで HDMI による外部出力も可能。ネオジオポケットの外部出力が貴重すぎるので欲しかったのだが、先日の予約開始と同時に瞬殺。二次予約の開始を心待ちにしている……。

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