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2016年12月17日

PS Vita『サガ スカーレットグレイス』簡易レビュー

 年末3大ソフト、最後のひとつ『サガ スカーレットグレイス』が発売。なんとか『トリコ』はクリアーしたが、レビューはちょっとまとめづらく、遅れている。ひとまず先に『サガ スカーレットグレイス』の簡易レビューをしておきたい。以前の記事でもとりあげたTGSの動画PV などを見て、だいたいどういうゲームか把握してる人向きの記事と思ってくれい。

 気になるロード時間は、以前の「ロード時間改善動画」からは変わっていない様子。普通の RPG のように頻繁にザコ戦を行うものではなく、毎戦闘が中ボス戦のような感じであることと、ランダムエンカウント戦闘はなく、マップ上のオブジェクトに対して自分の意思で「今から戦闘に入る」ことを選ぶゲームなので、動画で見るほどにはロード時間は気にならない。

 ただ、ターンごとに行動を決定した後に入る「Ready Go」は、思った以上にテンポを削がれる。「せめて、ここさえなければなァ」と思うが、戦闘中のデータを Ready Go 中に読み込んでそうな感じなので、苦肉の策なんだろう。戦闘前準備画面に入るまで約6秒、決定して戦闘開始までに約9秒、Ready Go だけで約6秒。「大して気にならない」と突っぱねるには、少々厳しい時間なのは確かだ。

 読み込み時間の問題に関しては以前の記事↓を参照してほしい。

『サガ スカーレットグレイス』のロード改善動画
『サガ スカーレットグレイス』と Unity

 さてゲームのほうはというと、現時点では前情報以上のものは特に何もない。順番に見ていくと……

●マップ

 最初の印象通り、行き先指定画面に相当するマップ上を走るのはあまり意味を感じないし、ジョギングのような移動速度の遅さは、ここで時間を稼がれている感すらある。移動速度の遅さは、地図上での距離感の表現のためだろうし、マップ上で時折イベントを起こすことで、移動中を退屈に感じさせないよう、変化を持たせようとしているのは分かるが、結局「これまでの RPG で見られたような広大なフィールドマップを作るのが労力的に厳しかったので簡易式にしました」という以上の理由は見えてこない。


街や洞窟などの各オブジェクトは、一定距離内に入らないと表示されない。このため、実際に自分の足で隅々まで探索する必要があったり、木のオブジェクトが無数にある中にコッソリと祠が隠されていたりと、工夫は凝らされている。

『アンリミテッド サガ』の反省点として「キャラを動かせるようにした」とのことだが、「動かしたいって言っても、こういうことではないんだ……」というモヤモヤは残る。RPG における冒険の行程は旅そのものであり、旅するときに何を楽しむかというと、やはり風光明媚な景色であったり、そこを実際に歩く感覚のようなもの、だと思う。FF15 の前半はこの部分を大事にしている感じがして好印象だったが、ある意味、それとは対極的な作品。「そこは要らんと思うのでバッサリ切りました」という河津流・省略術。

 ただ、今回の開発規模やハード選択を見るに、最初から従来の RPG のようなフィールドは作れないこと前提だったような気もする。このマップの仕様も、「こうしたほうが良いでしょう?」というアイディアありきではなく、「どう省略するか」ありきというか。そう考えると、妥協点としてはほぼベストな位置なのかもしれないとも思う。

●街

 街も実際に歩いたり走ったりできるわけではなく、『ウィザードリィ』『エルミナージュ』のような、施設コマンド選択式。……とはいえ、正直もうちょい施設があると思っていたのだが、「街の人との会話」と「鍛冶屋」しかないのは驚いた。


さ、さみしい……。

 
会話対象も、ひとつの街にひとりだけで、鍛冶屋に行くと、さっき会話した町の人が「何を鍛える?」とか聞いてくる。お前が鍛冶屋かーい、みたいな。ここだけじゃなくて、全部の街がこんな感じ。

 また、「武器屋」「防具屋」はなく、すべて鍛冶によるパワーアップのみで調達する雰囲気。「道具屋」もなく、回復薬のようなものは今のところ見当たらない。そもそも戦闘中に「アイテムを使う」ということができない。また思い切ったことしてきたなーという印象。

 戦闘後に手に入るアイテムも、ほぼ「~の結晶」のみで、鍛冶屋でこの結晶を消費して鍛えていく。もうちょい、ナンタラの鉱石とかナンタラの毛皮とかにしてくれると、「お、武器か鎧の材料になりそうだな」とか「後衛の服の素材くせぇ」とか想像力も働くのだが、さすがにリングメイルの材料→水の結晶 30 個とか言われても全然ピンと来ねぇ……。

●戦闘

 そして戦闘だが……かなりデキが良い。もっとも、ここがダメならもうどうしようもないわけだが……。

 まず、敵味方の行動順があらかじめ分かった状態で始まり、これは画面下部に表示され、「タイムライン」と呼ばれる。これを見たうえで、パーティー全体の行動力を表す「BP」を消費して1ターンごとの行動を決めていく。BP は初期状態の陣形なら1ターンに1ずつ増えていく(ターンごとに BP が増えない陣形もある)。通常の RPG でいうところの「通常攻撃」は存在せず、毎ターン、全員が必ず何かしらの「技」を撃つことになる。強い技になればなるほど消費BPが多く、序盤のターンでは撃てなかったり、それを撃つために他のメンバーの行動を犠牲にしたりしていくことになる。BP が5あるなら、5人全員が消費 BP が1の技を使うか、消費 BP 5 の技をひとりが使って他のメンバーは待機か……みたいな感じ。

 重要なのは「連撃」の発生。ターン前に選択した行動とは別に、連撃が発生したメンバーたちで追加攻撃できるようなものなので、単純に攻撃回数が増える。これをいかに多く発生させるかが、戦闘を有利に進めるカギとなる。敵にも連撃が発生するため、戦闘は基本的に「敵の連撃発生を防ぎつつ、こちらの連撃発生を狙う」のが目的。

 連撃の仕組みだが、たとえば〇が味方、●が敵とすると……

 〇〇●●●〇〇〇

 こういう場合、真ん中の●は攻撃すべきではない。真ん中の●を倒すと、前後の●が繋がり、敵の連撃が発生してしまう。

 〇●〇●〇〇〇

 次に、こういう場合。●に囲まれた〇が倒されると、これまた敵の●が繋がり、連撃が発生してしまう。逆に、左か右の●を倒せば、前後の〇と繋がって、こちらの連撃が発生する。

 なお、最初から繋がっている部分では連撃は発生しない。あくまで、敵か味方が倒されたときに発動する。なので……

 ●〇〇〇●●〇〇

 こういう場合、敵味方どちらも倒れなかったら、どちら側も連撃は1回も発生しない。〇〇〇の部分の真ん中の〇が倒されれば、こちらの連撃が発生する。

 技の中には敵のターゲットを引き付ける効果があるものもあるので、真ん中の〇がそれを使ってわざと狙われて倒され、犠牲を出しての連撃狙いもアリ。もちろん、この戦闘で仲間の頭数が減るというのは大きな痛手なのだが、敵が全体攻撃を頻繁に使ってくるヤツだったり、仲間が軒並み瀕死状態とかなら、ヘタすると次のターンで全滅も有り得るわけで、だったら、ひとり殺してでも連撃出したほうが逆転の芽はある……ということも。個人的にはパーティーアタックもできるとおもしろかったなァと思ったり。まさかの仲間殺しで逆転とかおもろいやん……。

 連撃は参加人数が多ければ多いほど強くなるので、いかに「1体倒した直後の行動順を大勢の味方で繋げるか」になる。●〇〇●〇〇〇● ←この場合に、真ん中の黒を倒せば、こちらの5人全員が繋がるので5連撃となる。これが最大。

 つまりこれ、『パズドラ』や『パズルクエスト』などの「マッチ3パズル」の応用形なんじゃないかと思う。連鎖を狙うのと同じで、あれよりは遥かにシンプルなので、ややこしすぎて敬遠するような人も出ないだろう。あれをまさか RPG の戦闘に応用するとは思わなかったので、恐るべし河津神。


技の中には、行動順を後ろへ追いやるものや、詠唱時間を延ばすものなどもあり、これらをどう使うかで戦略を組み立てていく。シリーズお馴染みの技にも意外な効果が付与されていたりして、地味だった技が格上げされていることも。

 ひととおりのクリアーまでやってみないと評価は難しいが、今のところ、問題は回復手段。先述のようにアイテムとしての回復薬は存在しないっぽいので、回復系の術が使える術士を仲間にして頼るしかないのだが、術は詠唱に3ターン必要で、3ターン目に発動なので、急な対応ができない。そこは百歩譲って先読みの戦略性としても、言い換えると「3ターンの間、敵の攻撃に耐えられるだけの強さがなければ、回復もままならない」ということでもある。術が発動する頃には味方が何人か戦闘不能になっていたりすることも多いので、せめて発動まで2ターンだったらなァと思う。

 解決法としては、「味方と敵の強さの差が開きすぎていない状態に保つ」しかない。つまり「それなりに戦って成長して、強すぎない敵には挑まない」という、至極当たり前の RPG の文法にならうしかない。別にいいんだけど、それはサガっぽくない気がして……。……サガシリーズの偏ったゲームバランスに毒されすぎているだけなのかもしれんけど。

 なお、従来の「連携」は残念ながら「連撃」に置き換えられており、あの変な連携名もない。多分これも、各技名がどう短縮されるとかの確認やデバッグにかなり手間を取るから思い切ってカットしたんかなーとか、そんな気が。戦闘後のパラメータ成長も基本的に HP のみで、時々、武器スキルが上がったりする程度。「愛がアップ!」がないのは残念だが、成長要素はいろいろあるので、そこまで気にはならない。


技にはランクがあり、使い込むことで成長していく。すべての武器・すべての技を極めるのは大変そうだ。

 
各キャラには「ロール」という性格付けがなされている。成長すると、ロールのセット数上限も上がる。新たなロールを修得することもある。

 
陣形は今回も豊富に用意されている。新たに仲間を増やすことで、その仲間が持っている陣形を修得していく。陣形次第で戦い方が激変するので、仲間になりそうなキャラクターを見つけたらガンガン仲間にしたい。個人的にこの「マジカルシャワー」は、3BP使う「生命の雨」が1BPで使えるので重宝している。

 
今回、初めてそこそこリアルな頭身になったので、シリーズお馴染みの技も「実は、こうだったのか!」というものも多い。写真は「失礼剣」。寝転がりながら片手で斬りつけるという……。確かにこれは失礼。

 
「稲妻キック」も昔は地味な体術だったが、今回は新しい仮面ライダーのライダーキックかな? と思えるくらいにパワーアップ。さらに敵の行動順を押し下げる効果があるので、今回、稲妻キック大活躍。

 ちなみに、プレイ4~5時間くらいで強引にラスボスの居る場所には突撃できたのだが、アッサリと返り討ちに。プレイ時間が曖昧なのは、ゲーム中に総プレイ時間表示がないから。最近のゲームには珍しい。ラスボスの前座のようなボス敵がいて、「まあちょっとここまで急ぎすぎたし無理だろうな」と思いつつ戦ってみたら勝ててしまったので、「まさかこのままラスボスも……?」と思ったら、どう見ても HP が足りなくて速攻で全滅。もうちょっと世界をうろついてみます……。

 あと、戦闘に入る前に必ず「達成目標」のようなものが3つほど出るのだが、それが戦闘前にしか確認できないのは不便。「よし、この戦闘はもう勝てるな」という余裕が生まれてから「あ、そういえば条件何だっけ……」ということが結構あるので、戦闘中にも確認できないとダメだろう、これは。……それとも俺の記憶力が低下しているのか?

●音楽

 期待に応えるデキ。ノリノリのイトケンBGMを聞くと、本当に久々に「サガやってるな」という感覚。今にも特撮ヒーローが必殺技を繰り出しそうなイトケン節と、サガフロ以降に時折見られる叙情的なメロディーが合わさって、新たなサガにふさわしい曲群。イトケンも、久々の新作サガ作曲ということで力が入っている気がする。河津ゲーとしては『ラストレムナント』があったが、あっちはイトケンではなかったので、本当に久々の河津×イトケンコンビとなる。『サガフロンティア』以来だとしたら、新作は 19 年ぶり? ……インペリアルサガ? 何のことかな……。『ミンストレルソング』は一応リメイクなので除外ということで……。

 21 日にはサントラが発売されるが、これは買う人多そう。サントラの公式ページには今のところ試聴はないが、画面右上の「BGM1」~「BGM3」で、3曲だけ聴ける。この「BGM2」が主人公のひとり・レオナルドの通常戦闘曲なんだけど、このイントロだけでもう勃起するよね。BGM3に至っては、もはや御本人による何かのロマサガ風アレンジにしか聞こえないほどに歌謡曲。こんなんだから「異邦人」とか「かもめが翔んだ日」のロマサガ風アレンジとか出てくるんだよ! クソッ、最高だ、もっとやれ!

 戦闘曲も良いが、フィールド音楽もずっと聴いていられる安心感がある。あのマップ移動も、この音楽にだいぶ助けられてるよ。フィールドと戦闘の音楽は4人の主人公すべてで違うので、「ラスボスはどうなるのかなー」と、ちょっと気になっている。

 ・ ・ ・

 というわけで、現時点での結論としては読み込み時間を我慢してでもやりたくなるパワーのある作品。久々に技を閃きたい人や、異常にそっけない会話を見たいという河津スキーは買って損なし。『アンリミテッド サガ』以降、警戒していた人も、今回は大丈夫。あの頃にはなかったトロフィーという新たな目標もあるので、コンプリートを目指すなら、年末年始潰しても多分足りないだろう。主人公4人いるから、大変だぜ!

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