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2017年1月14日

安楽椅子探偵 ON STAGE

anrak

 1月5日に放映された懸賞金付き推理ドラマ『安楽椅子探偵 ON STAGE』。出題編が5日、解答編が13日放映で、10 日正午までにエレガントな解答を送った人には賞金 50 万円という企画。金の亡者と化した俺は新年早々フルスロットルで脳を酷使して挑んだのだが、惜しくもエレガント解答ならず。犯人名も推理プロセスも当たってただけに「うおおおう……」と悶えている。

 応募総数は 6,819 通、その内、犯人名正解は 4,081 通(約 60 %)、犯人とその理由まで正解は 32 通(約 0.47 %)だったそうな。32 名の内、2名が甲乙つけがたいエレガント解答だったため、賞金はこの2名で等分。残りの 30 名も特製クリアファイルとか貰えるらしいので「30 名に入ってるといいなァ……」とソワソワ。よく見たらこのクリアファイル、本格ミステリー 30 周年記念ということで我孫子武丸氏のサインも入っている。欲しいなァこれ。十角館のクリアファイルというだけで、すでに欲しい。どこまで言及していればエレガントで、どこまで書いていれば 30 名以内かが明確でないため、もはや祈るしかない……。

 ただ、今回はちょっと制作側の詰めが甘いようにも感じた。ミステリーにおける証明は完璧なロジックを求められるもので、この安楽椅子探偵シリーズは「映像から得られる情報のみで真相に迫る」という趣旨。ならば映像には細心の注意を払うべきだと思うのだが、引き出しの金具に撮影スタッフと思しき影が動いているのが映っていたり、喫茶店のメニューに「定休日は日曜」と書いてあったりと、推理に影響するミスが見られた。

 スタッフの影に関しては「この時間、この部屋に誰かが居た証拠」になり得るし、日曜定休日に関しては、犯行時刻に容疑者のひとりがその喫茶店で打ち合わせをしていたという重要なアリバイがあり、よりによってその日が日曜日。このドラマでは頻繁に回想シーンも挟まるのだが、この打ち合わせに関しては回想シーンが用意されておらず、打ち合わせをしていたという証言のみだったため、この証言が嘘である可能性が高かった。解答編ではこれらの点に特に言及されなかったため、スタッフのミスということなのだろう。

 映像以外にも、そもそもの作りにもいくつか疑問点があった。

・劇中でわざわざ意味ありげに語られる「犯人は、なぜ千秋楽に殺人を決行したのか」
 →特に意味はない。解答編で明かされる動機だと、公演初日に実行してもおかしくないような。

・「針がモロ見えすぎて、犯行前に誰かに気付かれたら終わるけど……」
 →至近距離でイスの背部分を見るスタッフが2人ほどいたけど、運良く2人ともスルー。

・「二卵性の双子という設定の意味は?」
 →特に意味はない。兄弟とか友人でも何の問題もなかった。

・「資料室の変化の比較対象が事件当日とその約1か月前になってしまうため、根拠の確実性に乏しい」
 →そこは考えなくていい。1か月の間に停電が起こった可能性や、誰かが何かをいじったりした可能性は除外。

 ……などなど。針はせめて「普段は見えないけど、イスにもたれたら刺さる仕組み」くらいにはできたような。

 今後 DVD 化などされて、「まだ見てないけど推理に挑戦する予定がある人」にとってはコアなネタバレになる可能性があるので一応伏せておくが(※見てもいい人はマウスでピーッと)、特に「安夫は『3時に資料室』という電話を受けた後、忙しかったので結局行かなかったという真相は参った。ここは事件の全貌を推理するための重要な部分でもあるし、この事実を明確にできる証拠は提示してほしかった。最低でも映像内に「その時刻に安夫が違う場所に居た証拠」を映しておかないと、アンフェアにあたるんじゃないだろうか。

 この企画は8年ぶりで、前回の『安楽椅子探偵と忘却の岬』でも挑んだのだが、最後の二択でミスッた苦い経験があった。今回はまあまあリベンジできたということで満足なのだが、この企画、スポンサーを募ってもっと定期的にやってほしいなァと思う。特に出題編の映像は本当に何度もチェックすることになるため、間に入る CM(配信だと PR 動画)が脳に刷り込まれてしまった。宣伝効果はスゴいと思うので、各企業、検討してほしいものだ。毎年恒例くらいにしてくれると、いい楽しみになるし、普段は推理小説なんか読まない視聴者も推理する楽しみを知ることで、推理小説人気の拡大や、推理作家の宣伝にもなるんじゃないだろうか。

 ただ……映像のチェックは、原作者も映像制作スタッフも念入りにお願いしたい。あと、クリアファイルくれ。

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