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2011年6月 3日

『Shadow Complex』レビュー

パッケージ


 2009 年配信の、Xbox LIVEアーケード(ダウンロード専用)ゲーム。ダウンロード配信されるゲームは小粒なものが多いが、これは探索型アクションゲームとして充分なボリュームを備えている。


■やたら強い謎の一般人を怒らせてしまった、かわいそうなテロ組織の壊滅物語

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 ハイキングに来た主人公・ジェイソンと、その彼女・クレア。不意に姿を消したクレアを「オイオイ、隠れんぼはナシだぜ。出ておいで」とバカップル全開で探索していると、クレアの背負っていたバックパックを発見。彼女の身に何かあったのか……? と周囲を調べていたら、森の中に作られた謎の秘密基地と、怪しい男たちに連れて行かれるクレアの姿を見つける。「クソッ、一体、何なんだここは」と悪態をつきながら、ジェイソンは基地に潜入……というか正面から普通に入る。


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扉の近くに行ったら自動で開く親切ぶり


 中に入ると、セキュリティカメラが左右に動いて監視している。引っかかると、その先の扉がロックされてしまうが、ひとつ前の部屋に戻ればカメラはオールグリーンに。誰も来ないし、特に警報は鳴らない。

 この秘密基地、大丈夫かと心配になるほどのセキュリティの甘さを堪能していると、ついに基地内の人間に出くわす。背を向けていたので、普通に近づいてみたら「Bボタンを押せ」的な指示が。押してみると……


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バックパックを背負ったハイキング男の蹴りがテロ組織の人間にクリーンヒット


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銃を持った相手にクロスカウンター


 誰よりもプレイヤーが「うわっ、強えぇ……」と焦るほどの戦闘力を見せつけ、基地内のモニター室に辿り着く。モニター越しに、尋問室に捕まっているクレアを見つけると回想シーンへ。父親に戦闘技術を叩き込まれたにも関わらず、人を殺すということに抵抗を見せるジェイソン。

「兵士は人殺しとは違う! ジェイソン、お前も、その意味は分かっているはずだ」
「俺は、あんたとは違うんだ!」
「ジェイソン……自分より強大なものに立ち向かうことになった時、きっと私が言っている事が分かるだろう」

 割とありがちな厨二的回想シーンを終え、「父さんの言う通りってことか……」とつぶやいたジェイソンは本格的にクレア奪還に動き出す。でも回想が適当すぎて、「これで主人公が強い理由は分かったよね?」という言い訳にしか見えないのだが、いくら凄腕の兵士でも、これだけの基地と大人数の規模を誇るテロ組織相手に単身でここまでやれるものなんだろうか。


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メタルギア並の兵器が来ても、顔色ひとつ変えずにグレネードで快勝するジェイソンさん


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備え付けのガトリングガンで兵士を皆殺しにするジェイソンさん


 防弾装備なし、へルメットなしというピクニック状態の軽装で武器は全部現地調達。もはやゴルゴ13かジャックバウアーの域だが、被弾してもHPがちょっと減るだけで済むというジェイソンさんは、もしかすると「13日の金曜日」の、あの人の生前のお姿なのでは……と、そのタフネスぶりに目を見張るばかり。時々、独り言をつぶやくのだが、そのセリフの中には「殺すのも慣れてきたな……」と、ご開眼の兆し。お前、人殺しがどうとか父親に抵抗しとったやんけ。


 敵兵士は敵兵士で、主人公を見失うと「奴はどこだ……!?」とキョロキョロした後、しばらく隠れていると無線で「……始末した」とか報告してるのが聞こえてきて、「オイオイ、見失っただけなのに嘘の報告するなよ!」とツッコミどころ満載。この組織の壊滅は、主人公のチート性能と組織のやる気なさ加減が合わさって、なるべくしてなった結果なのかもしれん。


■アナザー『メトロイド』

 ジェイソンさんのタフボーイ伝説は置いといて、ゲームのほうは『メトロイド』の正統進化系。たしか開発者がメトロイド好きを公言していて、「任天堂がなかなか続編作らないから俺が作ってやったぜ!」みたいな感じだったと思う。『メトロイド』自体は時々続編が出ているのだが、FPS 化してしまっているため、昔ながらの「あのメトロイド」がやりてーんだよ! というパッションをダダ漏れ現地直送した感じだろうか。

 ゲーム中は9割方、サイドビュー。見た目は 3D だが、画面奥に居る敵を撃てること以外は 2D と思っていい。アイテム回収率やマップ完成率もあり、最近だと DS の『悪魔城ドラキュラ』シリーズくらいしか探索系がなくて欲求不満気味だった探索スキーにはたまらない作り。


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マップ確認画面。ほうら、マップを埋めたくなってきただろう?


 探索が進むと、組織内に大仰な装置で保管されている謎の高性能アーマーを集めていくことになり、集まり具合によって二段ジャンプが可能になったりする。本編の進行ルートを無視した近道があったり、ちょっとずつ探索できる場所が増えていく例の楽しさも完璧だ。「アイテム回収率 100 %で2時間以内にクリアー」「アイテム回収率 13 %未満でクリアー」という実績もあるので、全てを知り尽くした上での2周目攻略もアツい。


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フル装備したジェイソンさん。見た目はこんなだけど、ちゃんと前は見えているらしい。無防備な頭は余裕の表れである


■敵が逃げようとしたので核爆弾で撃墜することにした

 そんなこんなで一般人に追い詰められてしまったテロ組織のボスは、巨大エアシップで逃亡を図る。遠く離れた上空なので、銃ごときでは撃墜できない。そこへ出現するヘルプメッセージ。


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 マジでー!? 今ちょっとデリケートな話題だから避けたいんだけど、それ撃つってことは、この辺一帯、放射能で汚染されね!? ジェイソンさん、これで敵倒して組織潰しても、自分もタダじゃすまないっす。「ここで俺が止めないとアメリカが……」って愛国心も結構だけど、恋人とピクニックに来た一般人のセリフでもないし、ここまででもう充分にアンタやりすぎっす。


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 こうしてアメリカに平和が訪れた。


■まとめ

 いろいろ書いてきたが、実際のところ、ゲームとしては当たりの部類に入る。ゲームシステムの基本が『メトロイド』なので、「これは新しく生み出された面白さではなく、メトロイドの面白さだ」と言われるとそれまでだが、できることなら『メトロイド』に歩んでほしかった進化の道を、ほぼ完璧に近い形で見せてくれた。それに、ちょうどいい長さの探索型アクションゲームというのは、いくつ遊んでも飽きないものだ。事実、ダウンロード回数は 30 万回を超えたそうで、低価格ダウンロードゲームながら、大成功と言える。

 タイトルの『Shadow Complex』の意味がよく分からなかったので調べてみたが、Complex には「複合体」のような意味もあるらしい。影の複合体……テロ組織のような、暗躍する組織の存在を示唆しているということだろうか。

 続編は「当然、あるだろうな」と感じさせる終わり方だったが、出るとしたらおそらくシステム使いまわしになりそうなので、できれば価格は安く抑えてほしい。通常 1,200 MSP なのだが、半額セールの時に 600 MSP で買ったので、満足の1本だった。

 ちなみに、割と近い距離で核爆弾が炸裂したように見えたけど、クリア後、主人公もヒロインも普通に生きている。エアシップを撃墜されたボスが狼狽しながら、主人公を前にして言うセリフが印象深い。

「お前は一体、誰なんだ!」

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