2017年1月24日
3DS『クリーピング・テラー』レビュー1月18日配信。『クロックタワー』『トワイライトシンドローム』形式の、サイドビューホラーアクションアドベンチャー。って適当に言ったけど、こういうのの正式なジャンル名、何て言うんだろうね……。 森の奥にひっそりと佇む、古い屋敷。日本からホームステイしてきた女子高生・アリサは、友人であるエミリー、ボブ、ケンたちと共に、「何か恐ろしいものが出るらしい」と噂されるその場所で肝試しをすることになった。 「女子高生が古い屋敷を探索するというだけで再生数が稼げる」という不純な動機で、ボブが動画撮影のためのカメラをまわし始める。頼まれると嫌と言えない系女子であるアリサは渋々撮影に協力するが、突如、屋敷の床が割れて、アリサは遥か地中の洞窟へ落ちてしまう。アリサは、シャベルを持った大男に追いかけられながら、隠れたり反撃したりしつつ脱出を試みる……といった感じのストーリー。
990 円という低価格ダウンロード専用ソフトということに加え、ホラー大好き&『クロックタワー』大好き、『トワイライトシンドローム』も大好きっ子なので、問答無用で購入。PS1 の『トワイライトシンドローム ~探索編~』は、発売日にどこにも売ってなかったんだぜ……。何軒まわったことか。最終的に、普段は行かない遠くにある店で奇跡的に1本だけあったものを買えたのだが、そのときにレジで店員が「こんなの入荷したっけ……」と言っていたのを覚えている。……今考えたら、これって結構ホラーやん? 話が逸れたが、シャベル男はモロに『クロックタワー』シリーズにおけるシザーマンのようなもの。いやァ、久々だなァこういうの……とワクワクしながら始めたものの、総じてカンタンすぎるというか、「プレイヤーが考えることが何かあるだろうか」というくらいに脳みそを使わない。もう少し、「あれをあそこで使えばいいんじゃないか?」とプレイヤーが想像できる余地を作ってほしかった。 また、何をすべきかの現在目標が常に表示されているので親切ではある……のだが、マップ上での現在位置が「今いる階」しか表示されないので、探索中に「あれ? これ、右から何番目の扉だっけ」となったり、突然、目標が「病院を探索しよう」といったアバウトなものになって全フロアを歩き回ってみるしかなくなったりと、親切なのか不親切なのか分からないチグハグさも見受けられる。 ホラーゲームなんだから、一歩先では何が起きるか分からない……くらいのハラハラ感を常に演出すべきだと思うが、怖いシチュエーション、怖い演出といったものも全然見当たらない。停電とか! 鏡とか! 突然ガラスが割れる音とか! 階段を上がってくる足音が聞こえてドキドキしてたら実は仲間の足音でホッ……とした瞬間、後ろからドーン! とか! ホラーの鉄則である “緊張と緩和” からのドーン! がないのだ。 ほぼ唯一の明確なホラー要素であるシャベル男の襲撃も、単なる時間稼ぎに感じられてしまうのが残念。恐怖感ゼロ。その理由を考えてみたが、仮に鉢合わせても、ほんの少しの体力と引き換えにAボタン連打で反撃できることと、隠れられる場所に入れば、逃げ込んだタイミングがギリギリでない限りは確実にやり過ごせるのが大きい。 特に、地面近くに紫色の霧が漂っていたら出現する予兆なので、バレバレ。ホント、紫色の霧だけは要らなかったと思う。たしか1回だけ霧なしで出てきて、完全に油断していてビックリした。
じゃあ、その辺りを絞って難しくすれば良かったのか? というと、これは判断が難しい。変に絞るだけでは、単なるクソゲーと化しそうな気がする。 だが、これほどまでに考えて解くものが存在しないと、物足りなさ……というより「俺は今、ゲームをやっている……のか?」と、なんだかよく分からなくなってくる。「カギを発見→カギのかかったドアへ向かう」の流れが多いのだが、カギを手に入れた瞬間に「1F応接室の鍵」とか表示されるので、「どこのカギだろう」と考える間もない。すでに目は下画面のマップを追っているし、あとは最短ルートで向かうだけだ。この辺りが、どうにも作業と感じてしまう。 そんな中、唯一ゲームらしい点といえば、4種類の結末があるマルチエンディング。クリアー後、分岐らしい分岐点がまったく思い浮かばず、初回プレイだと「どこで分岐したんだ?」と悩むレベル。速攻ググりまくったが、なかなか情報が出てこなくて参った。しまいにゃ自分で検証して攻略ページ大完成である。これから遊ぶ人は役立ててくれ。 常に現在の目的が表示されているが、アバウトな目的のときもある。体力が減るとヤバいが、回復アイテムが豊富に落ちている。ホラーゲームなのに、プレイヤーを怖がらせようとする仕掛けがまったくと言っていいほどない。「新アイテム入手→どう考えてもあそこで使うヤツだよねこれ」のコンボの嵐で本編がカンタンすぎて消化試合と化している一方、マルチエンディングの分岐がノーヒントすぎる。親切と不親切の差の激しさ。こういったアンバランスさがそこかしこに見られるのが、このゲームに対する違和感の正体だろうと思う。
音やグラフィックをはじめ、素材はとても丁寧に作られているのだが、前述の通り、それらを組み合わせて「ゲーム」にしたとき、思った以上にゲームとして機能していない感がある。ストーリーも「えっ、まさかこのまま何のヒネリもない?」という感じのベタな展開で、クリアーし終えたとき、ビックリするほど得るものがない。ゲームとしては、仮にスーパーファミコンの時代に出ていたとしても時代遅れ扱いされたのではないだろうか。それくらい、前時代的。 このゲームは、刺青ゲーで一部で有名だった日活によるソフト第二弾だが、やはり、ゲーム作りそのものに慣れていないというのもあるのだろうか……と思ったら開発会社は別で、これを見る限りでは、今まで充分な量のゲームを作ってきた所っぽい。う、うーむ。 そもそもなぜ日活がこんな時期にゲームに参入してきたのかと思っていたら、ここのインタビュー記事によると「本業である映画でオリジナル作品として展開できるような新規IPを作っていきたいという思いから、ゲーム事業を立ち上げた」らしい。なるほど、映画の原作となるゲームタイトルから作ろうとしていたと考えると、納得。たしかにホラーゲームの映画化はポツポツあるし、原作ごと自分の所で権利を持っていれば、制作費も抑えられて、かなり強みになるだろう。 しかし……おもしろいゲーム作りって、手間もお金も才能も、膨大に必要なんだよなァ。結局、映画を作るときに有名ホラーゲームの権利持ってるところからライセンス受けたほうが安上がりだった……なんてことは、いくらでも予想できてしまう。 ただ、情報がない中、ググりまくってでも4種類のエンディングを全部見るまでプレイさせるものはあったわけで、なんだかんだでこのゲームに悪いイメージは持っていない自分がいる。続編が出たら、普通に買っちゃうと思う。何だろうなぁ……顔のパーツが描かれていない、のっぺらぼうみたいなキャラなのに、アリサはかわいいんだよなぁ。しかもゲーム中で尋常じゃない高所から3回も落下して無傷というタフネス。それでいて、ちょっと走っただけでしばらく走れなくなるほどの虚弱体質。頼まれたら嫌と言えない系女子。そしてポニーテール。……無敵やん? 無敵と書いてエクスタシーと読む。それでは聴いてください。X JAPAN で「I'll Kill You」。(クロックタワー繋がり)
このゲームはイベントシーンはスタートボタンでスキップできるので、2周目以降は助かったし、セーブデータが 10 個まで作れるのも良かった。マルチエンディングの分岐チェックのために結局 10 個全部使い切った。ホント、変に良くできている部分とそうでない部分が混在しまくっているゲーム。 もし次回作があるなら、とりあえずストーリーにヒネリがなさすぎたので、あと2回くらいどんでん返しを入れてほしいことと、何かしらの「考えて解く」ゲーム性の追加は、なんとかしてほしい。それだけで、だいぶ化けると思うんだよなァ、このゲーム。んで、「このアイテムに、まさかこんな使い方が!」という要素を入れておいて、それに気付いた者だけに困難なベストエンディングへの道が開ける……とかにすると、俺が喜ぶ。 ・ ・ ・ 一時期、『トワイライトシンドローム』が高値になってしまっていたが、最近は落ち着いているみたいなので、久々にやってみるかな……と思わせてくれる1本でもあった。でも『夕闇通り探検隊』のプレミアっぷりは相変わらずパネェ……。 ![]()
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