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2002年3月14日
ありがとう!『痛快!! マイホーム』
いつの間にか発売しており、店頭で俺をビックリさせた『痛快!! マイホーム』第2巻。コミックバンチのオフィシャルサイトによると、8日に発売していた様子。なお、やはりその本屋にも1冊しかありませんでした。
第1話で小雪センセが言っていた一国一城の「欠点」も何だったのか分からないまま終焉を迎えてしまう「痛快!! マイホーム」。最終話を読めば誰もが「あ、打ち切りだ」と確信する終わり方なのですが、以前この日記でも紹介した最終話直前のプレゼンは見物。「異常なまでにクルマが好きなお客さんの、クルマを中心にした家」という元々クルマ大好きの池沢先生ならではの題材だっただけに、「俺だったらッ……こんな家が欲しいッ……!!」という気持ちがスパークしてしまったのか、ものすごい家をデザイン。注文主であるクルマ好きのお客さんの言葉は全て池沢先生自身のセリフと思ってもいいくらい、アツすぎる情熱がほとばしってしまっております。
後半は、勢い余って1ページまるごとフェラーリを描いたり(史上最大の「ドーン」つき)、2ページ使ってフェラーリの起動法を素人置いてけぼりで解説してしまったりと、それまでの「痛快!! マイホーム」とは完全に毛色の違った中身が濃すぎる展開ですが、「現実にはそんな注文客はいないだろう、でも、もし、いたら……」という部分を掘り下げた、「マンガだからこそ」の面白さがあったように思うのです。
たとえば面白い野球マンガというのは、「野球」というルールに沿っていながらも反則ギリギリの奇想天外なアイディアがあるもので、これがいきなり「主人公が魔法を使って敵チーム全員を金縛り」とかしてしまうと「なんだそりゃ」ということになります。そこで考えられたのがいわゆる「魔球」であり、「ピッチャーがボールを投げ、そのボールがキャッチャーミットにおさまる」という最低限の「ルール」を守っているからこそ面白いわけです。でもまあ、最近は「魔球」も時代遅れの感があり、大抵の野球マンガでは避けてますが。要するに、ルールという「リアル」と、ある種、非常識な奇抜なアイディアという「アンリアル」によってマンガの面白さは成り立っていると思うのです。
「痛快!! マイホーム」が最後に見せた「面白さ」は、奇抜ながらも、そういう家を作ろうと思えば作れるという点と、真にクルマ好きな人間ならそう考えるだろう、というか作者が実際にクルマ狂という「リアル」、「でもやっぱりその家はおかしいよ」という「アンリアル」が生み出したものだと思います。そして、もし、この連載後半に見せた異様なパッションを連載当初から放つことが出来ていたら打ち切りも無かっただろう、と確信するのです。個人的主観ですが、第1話は別にして、2話以降が池沢マンガにしては平凡で、退屈であったように思います。
なお池沢先生の代名詞とも言える「サーキットの狼」では、とあるレースの最終コーナーで主人公が「このままじゃ負ける」と他のクルマが3速に落とす中、ひとり、4速全開で突っ込み、コーナーを回り切れずカベに激突。しかしスピードがのっていたため、激突した時の衝撃でクルマが逆さまになったままゴールへ滑っていき、結果、トップという展開があるのですが、これも池沢先生ならではの、「無茶なマンガ的展開でありながらも、有り得なくは無い」という、リアルとアンリアルの絶妙のせめぎ合いで、追い詰められた池沢先生の発想は常人のそれを遥かに越えることの証明でもあります。
俺は池沢先生の次回作を待っています!
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