■さいごに


禁じられた性の大陸に、ある日、難破船が漂着した。
なんと、はるか東方のジパングから、最愛の姫との仲を
鬼によって引き裂かれた失意の英雄"一寸法師"を乗せて…
小さな仲間リリパットとコロルと共に、愛のアイテム
『打ち出のこづち』を求めて、壮大なる冒険とロマンの旅が今始まる。
"愛"、"花"、"星"の三つの紋章とコケシを手に入れ、
宿敵『レズの魔法使い』をヒイヒイ言わせろ!!

以上は、パッケージ裏に書かれた本作品のストーリーであるが、この時点ですでに
微妙な矛盾をきたしている。補足すると、主人公たち3人は小人族であり、
身体のサイズが人間よりも遥かに小さい。『打ち出のこづち』で大きな身体になるのが目的なのだが、
上記のストーリーでは、途中から『レズの魔法使い』をヒイヒイ言わせることが目的になっている。
たしかに『打ち出のこづち』を持っているのはその『レズの魔法使い』であり、ヒイヒイ言わせれば
喜んで『打ち出のこづち』くらい、くれるのかもしれないが。
…という風に、のっけからちょっと心配させてくれるわけだが、その心配は間違っちゃいない。

『ハイレグファンタジー』はPC-エンジン用RPGである。
いや正しくは「PC-エンジン、DUOシリーズ用RPG」である。
本体のHUカード部分とCD-ROM部分を同時に使う、アーケードカードと同じ仕組みだからなのだが、
本来は読み込み速度を軽減してゲームをスムーズにしたり、スペック以上のゲームを
可能にしたりするはずのこのシステム、『ハイレグファンタジー』においては
何のために使われているか不明。読み込みは別に速くないし、画面的にはファミコン。
さらには本体のバックアップメモリを全て使用するため、他のゲームのセーブデータは
消すか、「天の声」と呼ばれるセーブデータバックアップカードに保存しておくかするしかない。
なんとなく、PC-エンジンそのものを乗っ取って動いているようなゲームである。

説明書の画面写真が明らかに実際のゲームとは異なっていたり、
フィールド上でしかメニュー画面を開けなかったり、また、そのメニュー画面では
何故か無音になったり、と、とにかく不安にさせてくれる要素が目一杯なのだが、中でも
「フィールド上でしかメニュー画面が開けない」というのは致命的であり、これは
ダンジョン内で回復アイテムが使えないことを示す。ダンジョンを進んでいって、
ザコ敵で受けたダメージをボスの前で回復する、という行為ができないため、プレイヤーは
ザコ敵との戦闘からしてペース分配を迫られる。かろうじて戦闘中はアイテムが使用可能なのだが、
やっぱりテント系のアイテムは使用不可。このゲームのフィールドは決して広くなく、少し歩けば
どこかの町か村には着くため、テント系のアイテムはどこで使用するか不明だったのだが、
ラストダンジョンに着いてようやく分かる。全ダンジョン中、ラストダンジョンだけは途中に
セーブポイントがあるのだ。ここではメニュー画面が開けるので、ジョブチェンジ等も行える。
要するに、テント系のアイテムはラストダンジョンまで必要ない。

さて、ロゴや戦闘画面の構成などからして、明らかにファイナルファンタジー(以下、FF)を
パクッていると思われるのだが、果たしてこれで「パクッた」と言って良いのかどうか、と思えるほど
「FFの快適な部分」を見事に殺している。先程も述べたが、フィールド上でしかメニュー画面が
開けない。これはまた町の中でも開けないことを意味し、武器屋などで新しい武器を買っても
町の外に出ないと装備できない。もちろん、買う時に現在の状態と比較してどれくらい攻撃力が上がるか、
などの表示は無いし、だからと言って値段が高ければイコール強い、というわけでもない。
とりあえずセーブしておいて全部1個ずつ買い、装備して攻撃力をチェック。中で最も強かったのを覚えておき、
ロードしてそれだけを3人分買う、といった行動がデフォルトである。

なお、このゲームはとにかく下品であり、町の住人も、卑猥なことを喋らない方が少ないという非常事態。
ダチョウという乗り物があるのだが、コイツがまた「つかみはオッケー」などと喋り、
プレイヤーの神経を逆撫でしたり、飛空挺がコンドームを膨らませた形をしていたり、
クリスタルからジョブを授かる、という「FF5」的要素もあるのだが、
クリスタルは「コケシ」であり、いやらしい色をしているなど、下品さにぬかりがない。
大陸の名前がポケベル大陸ツーショット大陸というのも、なんだか涙を禁じえない。
『メグスリン』という魔法が睡眠の魔法だったり、アビリティ『マゾ』ダメージをくらうと回復したり、
素直に「上手い」と言っていいものかどうか戸惑う要素もバッチリだ。
あと、戦闘画面の背景が、どう見ても「FF6」を撮り込んだのでは、と思われるのだが、多分、
スクウェアがこのゲームを見ても、別に訴えないだろう。

もう言わなくてもいいと思うが、これは正規のルートを辿って販売されたゲームではない。
ファミコンなどにも存在した、独自の流通を使ったイレギュラーなゲームである。
だが別に違法というわけではないらしく、いわば同人ゲームみたいな扱い。
「GAMES EXPRESS」制作となっているが、販売にはやはりあのハッカーインターナショナル
関わっており、いつの間にか同社のゲームファンになりつつある自分が怖くもあり、むしろ望むところ。

しかし筆者はこんなゲームが大好きであり、やりたいことをやっちゃっているという点で、
正規のゲームよりも魅力を感じてしまうのは、いけないことだろうか。

2001/05/XX



…後日、二次元ドリームマガジン(Vol.06)という雑誌で、本ゲームの紹介・ストーリーの流れについての
原稿を書かせて頂く機会があった。世の中、何が起こるか分からないものである。
興味があるという酔狂な方はまんが王倶楽部コアブックスなどで通販可能な様子なのでどうぞ。





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