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「前髪で目のあたりが隠れて顔がよくわからない」……こう言うと今やギャルゲーの主人公だが、
本来はプレイヤーが感情移入できるようにするための措置だった。
本作の主人公・アレスは、一切喋らない、いわゆる “ドラクエタイプ” だが、しかしどこか、確固とした意志を感じる。
ただのプレイヤーの分身ではない。アレスというキャラクターは非常に立っている。
ゲーム開始から終了に至るまで、アレスはひとりだ。
仲間キャラなどは居らず、落ちている武器やアイテムを駆使して魔物を薙ぎ倒して進んでいく。
頼れるものは己の身ひとつ。
このゲームを初めてクリアした時、本当に「やった、クリアしたんだ」という実感が湧いた。
とにかくプレイヤーがアレスを動かさないことには何も進まない、常に能動的でなければ
活路が開けないゲームだからだろう。地の底に落とされ、辿り着けるかどうかもわからない地上を目指して、
アレスはひたすら剣を振るう。次第にプレイヤーは、まるで自分が地の底に落とされたかのように、
必死で前に進み始める。シチュエーションとゲームシステムの完璧なまでの融合。
ラスボスを倒し、エンディングが始まる。今まで必死で目指していた地上が今、目の前にある。
……空の色とは、こうも青かったろうか。木々の緑は、かくも緑だったろうか。
暗く薄汚れたダンジョンの壁ばかりを見ていたせいか、色が本当に鮮やかに見える。
そのとき、心から「良かった、地上に出れた」と思ったものだ。
これはゲームなのに。自分はディスプレイの前に座ってマウスを動かしていただけなのに。
近年、こういう「孤独」を煽るゲームシステムは、ホラーゲーム以外ではネガティブにとらえられがちだ。
“地味” 、“寂しい” 、“盛り上がらない” 。
しかし『ブランディッシュ』は、そこがいい。孤独だから、いい。
エンディングまで辿り着いた人ならば、この感覚を分かってもらえるのではないだろうか。
愛して止まぬ、この心地良い孤独感を。
このゲームの凄いところは、戻ろうと思えばスタート地点まで歩いて戻れることではないだろうか。
実際に戻ってみて思う。本当に、今までこれだけの距離を歩いてきたのだ。
そう思うと、まるで本当に自分の足で踏みしめてきたかのように、ダンジョンマップが思い出される。
最近の RPG ではもう珍しくなくなったが、エンディングでは移動歩数も表示される。
このゲームでの移動歩数は、まさに誇るべき「記録」であり、想い出の数なのである。
2001/02/20 夢崎
……なお、本攻略書内で述べた「ブランディッシュ七不思議」だが、7つどころか3つも無いので、探さないように。
©Falcom
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