2009年11月 4日

Xbox360『シュタインズ・ゲート』レビュー


パッケージ


 予想外の名作だった。
 プレイ途中で『この世の果てで恋を唄う少女 YU-NO』と『ひぐらしのなく頃に』が真っ先に頭をよぎったのだが、クリアしてみると、どちらとも異なる。
 似て非なる時空もの。タイムトラベルとタイムリープの違い。タイムパラドックスにまつわる多世界解釈、パラレルワールドといった概念。
 これらの要素の総決算的な作り。

 いわゆる「タイムリープもの」が持つ王道的な面白さは確実に押さえつつ、「携帯電話とメール」という、今の時代に合わせた小道具を使って
 タイムリープという使い古された題材を上手く再料理している。

 重厚な名作、というよりは「中高生の頃にこういう作品に出会うと、絶対感動するだろうなぁ」という良質なSFジュブナイル小説的な印象を受けた。


■第一印象と注意点

 序盤は主人公の厨二病的言動がものすごいことと、全体的に2ch語をはじめとする「ネットでしか使われない言葉」がスゴい頻度で使われるため、それらを理解していることが前提。
 と言っても、TIPSで解説が出るし、普通にネットやってれば分かるようなものばっかりなので、特に困るようなことはないと思う。

 主人公がとってもアレなので、体験版の時点で拒絶反応を示してしまう人も居るんじゃないかと思うけど、クリアしてから考えてみると、これも必要な要素だったと感じる。

 厨二病的言動と2ch語については、むしろよくぞここまで会話中にオンパレードで盛り込めたなと感心。
 主人公の性格と2ch語の攻勢で抵抗を感じる人も居ると思うけど、そこだけが懸念材料の人は、とりあえず我慢して6章までやってみてほしい。

 体験版は、プロローグ~1章がまるまる遊べるので、雰囲気を知りたい人は体験版をやってみるといい……んだけど、本当に面白くなるのは6章からなのよね……。

 全11章の中、6章に入ってから物語の核となる事件が起き、そこからストーリーが本格始動するため、もし「買ったけど積んでる」という人が居たら、
 そこまでの長さに諦めず、6章までやってみてほしい。俺は、そこから止まらなかった。5章まではプロローグだッ!


■システム面

 基本は凡庸なノベル形式だが、普通にキャラと会話してる際にもケータイにメールや着信があり、確認・返信が行える点が、このゲームの最たる個性。
「選択肢」は一切存在せず、主にメールへの返答、メールを送るか否かで分岐する。


ケータイ


 十字キーでのメール本文スクロールや添付された画像の確認などの感覚がリアルで面白い。内容が怖いときなどは特に。
 ケータイって、つくづくホラーに向いてるアイテムだなと感じた。
 このケータイとメールのシステムは、ホラーアドベンチャーに応用すればもっと効果的になりそうだ。

 会話中にケータイをいじると「マナーがなってない」と言われるキャラも居る。
 この場合、とりあえずは着信を無視して、後でチェックするという妙なリアル感も。
 この辺も今後進化させると面白そう。


■ストーリー

「未来ガジェット研究所」という妙なサークルを主催している主人公とその仲間たちは、偶然にもタイムマシンのようなものを作ってしまう。
 それは「過去へメールを送信できる」機能を備えており、主人公たちが発信するメールの数々で、未来がとんでもない方向へ変化していってしまう……といった感じ。

「ジョン・タイター」という人物にまつわる実在のエピソードを物語中に盛り込み、そこを基点とした独自の時空解釈が、既存の「タイムリープもの」と一線を画しているように感じた。
 ジョン・タイターについては、面白い話なのでググってみてほしい。

「悲劇を回避するために同じ時間を繰り返して試行錯誤する」というのはタイムリープもののメイン部分でもあるが、
「主人公の行動によってシナリオが分岐し、女キャラ個別エンドがあり、ロード・セーブを駆使してハッピーエンドを目指す」というゲーム的なシステムそのものが、
 こういう「時間」を扱うシナリオと相性が良い。
 タイムリープそのものが非常にゲーム的なものなのだと再確認させられた。


・歴史が変わることの恐怖演出が秀逸

 個人的に一番印象的だったのは、主人公たちがタイムマシンを作ってしまったことから無数の未来が生まれ、それによって大変バッドな結果になってしまった人たちの末路。
 主人公も、その結果を見てしまうから、なんとしても歴史を変えようとするわけだが、とにかくその「恐怖」の描写が上手い。
(やった人にだけわかるキーワード:「手紙」「15年後に……」)

 そして、その恐怖の質はホラーではなく、「この話の先が見たい」という牽引力になっている。
 これが、このゲームで一番好きな部分だったかもしれない。


■キャラクター

 主要キャラの数は決して多くなく、各キャラが非常にわかりやすい個性づけがなされているので、取っ付きやすい。
 序盤の主人公が一番取っ付きにくい。


紅莉栖
左から、まゆり、紅莉栖、ダル。
序盤のサークルメンバーは主人公を含めたこの4人で進行する


 最近、ゲームをやっていて「別に悪役でもないのに、なんかムカツクような、親しみにくいキャラが多いな」と感じることが多かったのだが、このゲームではそういうことがなかった。
 いわゆるギャルゲギャルゲした絵ではなく、妙に特徴的な絵柄も、良い方向に作用しているように感じる。

「メールでは書くけど、同じ口調を実際には喋らねーよ」みたいなことがある。
 いわゆる2ch語のようなものだが、メールでは全開で来るキャラ、会話もメールも2ch語バリバリのキャラ、顔文字を多用するキャラ、えらい長文のキャラなど、
 メールの文体がキャラクターの個性描き分けの一端を担っているのが面白かった。
 これは昔のゲームにはない、今のゲームならでは。


■残念な点いろいろ


・個別エンドを作ることを意識しすぎるあまり、その多くが、不自然なバッドエンドになってしまっているように見える

 もちろん、それらのエンドを経験した上で最終的にトゥルーエンドを見ることを想定した作りになっているので、仕方ないと言えば仕方ないんだけど。
「登場する女キャラには個別エンドが存在しなければいけない」というギャルゲーの呪いから逃れられてない印象というか。これ別に全然ギャルゲーじゃないのに。

 システム的に、各エンドを見ずにいきなりトゥルーエンドに入ることもできてしまう(確率的には相当低いけど)ため、最初は攻略サイトの類は見ないで進めたほうがいいかも。
 個別エンド到達やCG回収は、後で既読スキップを使えば、どうとでもなる。
 一応、新しいチャプターに入るたびにセーブデータを別で作っておくと後で便利……かな?

 あと、コンフィグ画面は2ページ目があり、Xボタンで2ページ目にいける。
 そこでメッセージスピードや既読スキップ、特定キャラのボイスON・OFF設定ができるので、なるべく早めに自分好みの設定に。
 俺はクリアするまで2ページ目の存在に気付かなかった。


・エロゲへの逆移植を視野にでも入れているのかと思うような微エロシーンが各キャラに用意されている

 つーか絶対考えてるだろ、みたいな。むしろもう準備してるだろ、みたいな。それくらい怪しいレベル。
「これは実は元がエロゲーで、そういうシーンだけ切り取りました」と言われたら信じるレベル。

 Xbox360で発売されてるアドベンチャーゲームはPCからの移植+追加要素が多いんだけど、これは360オリジナル。
 多くのプラットホームで出したほうが売上稼げるだろうし、PCへの移植はありそうな気配がプンプンするなァ……。


・エロゲ的な作りのため、表示される絵の変化に乏しい

 ノベル主体だから別にいいといえばいいのだけど、キャラの立ち絵をそのまま動かしたり重ねたりアップにしたりといった手法はさすがにもう古く見えるので、
 もうちょい手間をかけてでも各絵のバリエーションは増やしたほうが良かったような。
 ……まあ、これは予算と制作時間の都合もあるよな、絶対。


・ゲーム性が弱い

『この世の果てで恋を唄う少女 YU-NO』では、好きな位置に「宝玉」をセットし、いつでもそこに戻ってこれるというシステムがあり、数ある分岐をマップで見ることができた。
 これは「時間」をテーマに扱うアドベンチャーゲームのシステムとしては究極形であり、ゲームシステムとストーリーの融合という点で最高傑作だと思っているが、
 そういった「文章を読み進めること以外に工夫されたゲーム的なもの」を少なく感じた。前述のケータイくらいだろうか。
 なので、「自分で考えて解いてる」感はない。あくまで、ストーリー重視のノベルゲーム。

 ケータイに関するシステムについては諸事情で機能をかなり削減したという話を聞いたような気もするので、当初はもっとイロイロ詰め込むつもりだったのかもしれない。
 あんまり機能つけすぎると操作メンドそうなので別にこれでもいいとは思うけど、多分、2ch(ゲーム中では「@ちゃんねる」)のスレッドを見る機能でもあったんじゃないかしら。


e?
メールマークの下の「e」が機能していない。インターネットエクスプローラーか?


・TIPSが惜しい

 チュンソフトの『街』のTIPSは小ネタが効いてるものも多く、出てくるたびに読むのが楽しみでもあったオマケ要素だが、
 本作のTIPSは、あくまで難解な単語、注釈が必要な単語の解説に留まっているのがちょっと残念。
 2つ同時に出てきた場合、もう片方を調べるのがメンドイし。


 以上を読むと「残念な点のほうが多くね?」といったように見えるが、全然そんなことはなく、たいへん面白かった。
 元々100点満点中90点近くまできてて、上に書いた点が改善されたらもう100点じゃねーのコレ、という感じ。


■総括

「2010年 宇宙の旅」という作品もあるように、昔、「2010年」というのは、それだけで反則的なほどに未来的な響きを持っていた。
 リニアモーターカー、宇宙旅行、そしてタイムマシン。
 俺が子供の頃に読んだ絵本にも、2010年というのはあらゆる科学の到達点のような勢いで描かれていたものだ。

 しかし2009年になった今、割と何も実現できていない。
 最も完成に近いのがリニアモーターカーだが、速いっちゃあ速いけど、新幹線が登場した時ほどの驚異はないように思う。
 しかも実際に日本で実用化される見込みは2035年頃という記事をどっかで読んだ覚えがある。
 遠い。リニアモーターカー程度でこれなのだから、宇宙旅行だ時間旅行だというのは、もし可能になったとしても、まだまだ絶望的なほどに未来の出来事なのだろうと思い知らされる。

 あの頃、想像できなかったのはインターネットと携帯電話。そして、その普及率だろうか。
『シュタインズ・ゲート』では、携帯電話と、それを用いるケータイメールがタイムリープの核として描かれる。
 来年は2010年だ。このゲームは2009年に発売できたことも、その価値のひとつだろう。未来に、恐怖と希望を感じさせてくれる。

 このゲームに限らず、時空を跳躍するストーリーというのは、モノホンの科学者がプレイしたら「これはねーよwww子供向けストーリー乙www」と鼻で笑う程度のものなのかもしれん。

 だから。
 俺は科学者じゃなくて良かった。

 このスタッフの次回作を楽しみにしている。
 エル・プサイ・コングルゥ。



■おまけ……実績メモ

 基本的に実績wikiに記載されている点に気をつければ問題なく解除できるが、実績「暴虐のシスター」については、るかのメール「お菓子を作りました」に「家族」で返信した後、まゆりからの電話をその場で取って応対しないと、次の「家族についてです」のメールが送られてこないので注意。



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