2012年4月30日

PS3/PS Vita『真かまいたちの夜 11人目の訪問者』DLC「みゆきとサトミ編」レビュー

omori


 本編に登場するみゆきと沙都美の、看護学校時代の話。
『真かまいたちの夜』の各シナリオの執筆担当者は一部明らかにされていないが、
 このシナリオは我孫子氏によるものと明言されていたので、期待は高かった。しかし……。


 ■謎のシステム面

 まず、全編音声ドラマにする必要性が全く分からない。
 文章が表示されないため、常に耳に意識を持っていないと話が把握できなくなる。

 通常のサウンドノベルは、別にボイスを聞かなくてもいいし、ページが進む前にちょっと立ち止まって、
 内容を再確認してから自分のペースで次のページに行ける。
 適当にボタン押しすぎて次のページに行ってしまっても、ログの読み返しもできる。
 何か用事があれば、そこで止めといてしばらく放置もできる。

 しかし、みゆきとサトミ編では1章ずつがノンストップで読み返しができない。
 いや、正確にはできるのだが、選択肢表示中と、章の区切りだけ。
 選択肢か章の区切りまで進まないことには一時停止もかけられないのは心底参った。

 唯一、PSボタンを押すことでPS3の本体メニューは出せるが、音声は止まらず流れ続ける。
 しかもこの状態で選択肢の箇所まで進んでPSボタンを押してメニュー解除すると選択肢が表示されず、
 フリーズしたのと同様の状態になる。しばらく放置することで元には戻るが……。
 おそらく、PSボタンを押してからの時間をカウントしておらず、音声が流れていたのと同じ時間が経過すると進むのだろう。

 あえて音声ドラマにすることでプレイヤーからコントローラへの意識を離し、
「どこかで隠しコマンドでも入れたら何か起こるのか!?」と思ったが、何もなかった……。


 ■誰得ストーリー

 話のほうも、キャラの掘り下げをしたかったのかもしれないが、内容があまりにも生々しいというか、
 実写ドラマにありそうな雰囲気が目に見えるようで、
「『かまいたちの夜』シリーズのサブシナリオのひとつとして、こんな話をやる意義はあるのだろうか……」と思ってしまう。

 ゲーム中のみゆきと沙都美からは想像もできないほどシリアスな話で、
 どちらかというと「知りたくはなかった、あの人の素顔」みたいな印象。
 個々のキャラクターに関しても、あくまでゲームキャラとして受け止めていたみゆきと沙都美が
 嫌な意味でリアルに描写されているため、「こ、この掘り下げ方は違うのでは……」という違和感が拭えなかった。

 なんというか、みゆきと沙都美が親友となるまでのハートフルストーリーという印象を植え付けたいのかもしれないが、
 みゆき完全に利用されてないか、これ。あと、沙都美の窮地は何もかもが自業自得すぎる。
 出会った頃の沙都美が異様につっけんどんな態度なのも謎だ。


 終盤ではある事実が明らかになるが、その判明だけでこのシナリオを持たせようとしているのも残念だった。
 序盤から「夜間、沙都美は誰と話しているのか?」という謎が提起されるが、
 みゆきが「電話にしては、相手の言葉を待つときの無言時間がない」ということに早々に気付いてしまっているため、
 プレイヤーにも真相が想像しやすい。これは描写するべきじゃなかったんじゃないかな……。


 ■総評

 少なくとも、このシナリオを読み終えることで沙都美に良いイメージを持つ可能性があるのは女性だけだと思うし、
 女性でも全員が全員、そうは感じないだろう。
 看護学校時代に起こった別の殺人事件で、親しくもなかった2人がピンチをキッカケに親友となった……みたいな話のほうが、
 このゲーム的には良い作用を起こせたんじゃないかなと思う。
 ピンチの乗り越え方も、おとなしいけど頭脳明晰なみゆきと、派手で行動派の沙都美のいいとこが発揮できるような感じで。
 ……ベタだけどね。


 DLC商法については最後にまとめて書きたいが、これは正直タダでも見たくなかった話だった。
 制作時はすべてのシナリオを一気に作って、どれをDLCにするなどは明確に決めていなかったと思うが、
 DLC化することで、「金を出してこの話を買ったのだ」という意識がプレイヤー側に発生してしまい、
 このシナリオの負の印象が余計に増している。

 確か我孫子氏が自身のツイッターで「自分の書いたシナリオがDLC扱いになっているとは知らなかった」
 というようなことを書いていたので、どのシナリオをDLC化するかはチュンソフトが勝手に決めた可能性が高い。
 しかし、適当に決めたのではなく、話の内容を見て決めたのだとするなら、チュンソフトの判断は正しかったんじゃないかと思う。
 もしこのシナリオがソフトに入っていたら、『真かまいたちの夜』全体の評価にとってはマイナスにしかならなかった気がするから。


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[真かまいたちの夜 11人目の来訪者] | コメント (2)

2012年4月29日

PS3/PS Vita『真かまいたちの夜 11人目の訪問者』DLC「混浴編」レビュー

omori


 時期を3か月ほど逸したけど、ホラ、いい感じにクールダウンする必要もあるじゃん?
 とか言い訳して寝かせておいた『真かまいたちの夜』のDLC。
 現在、5月30日までの期間限定で値下げされてるらしいので、
「中古で安くなってそうだし、ゴールデンウイークに『真かま』やるかー!」という奇特な……
 ……いや、ミステリー好きな人に、紹介を兼ねたDLCレビュー。
 ていうかこの機会を逃したら絶対レビュー書くの忘れると思った。あと、DLC買うの待っとけば良かった……。

 というわけで、すべてのDLCシナリオについて一気に書いたり、以前のレビューに付け加えたりすると
 全体的に鬼のように長くなりそうなので、個別に。まずは混浴編。
 シナリオについて若干ネタバレしているので、ネタバレダメゼッタイな人は流しチラ見でヨロシク。


 男湯に入ったつもりの主人公。
 しかし、こっちが間違えたのか向こうが間違えたのか、沙都美とみゆきが入ってくる……というところから始まるお話。
 こういう状況の場合、どっちが間違っていようと男が圧倒的に不利なため、
 湯気と泡で頭・胸・脛毛を隠して、無言で女になりすましてやり過ごす……というシチュエーションは本編より緊迫感がある。


katou
収納棚に隠れて、脱衣所で交わされる会話を盗み聞きする主人公の図。もちろんボイス有り。
沙都美は本編でも「~なのお?」と語尾に「お」をつけて伸ばす喋り方なのだが、
このシーンに限っては期せずして加藤鷹みたいになってて、ちょっと笑ってしまった


 しかし、いざ沙都美と並んで体を洗い合いっこし始めると、沙都美が自分の胸を使って主人公の背中を洗い始めるなど、
 完全に痴女スレスレのレズ状態。こっちは見ず知らずの女だと認識されているはずで、初対面で何も知らない女にここまでするか!?
 でも、いいよいいよ。「ホモが嫌いな女子なんかいません」という名言があるが、レズが嫌いな男もそうそう居ないよ。
 世の中、やらしいに越したことはないよ。


omori
メガネを外しているのでよく分かってないみゆきに対して、裏声で女になりすまして対応するオーモリ。
大きなリボンは好きなアニメにまつわるアイテムらしいが、
巨大リボンは『1』の「Oの喜劇」を意識してのものだろうか……。


 胸を触られそうになるが、なぜかオーモリがたまたま持っていたシリコン製のプニプニ物体を両胸につけることで危機を回避する主人公。
 しまいには女性キャラ全員入ってきて、やらしい声出しながらお互いに体を洗いっこするという異様な状態に。
 ラブコメ的なちょいエロピンチというシチュエーションは方向性としては良かったと思うが、
 後半は話そっちのけで「エロいボイス出しとけばいいだろ」的な流れになってしまっているのは残念。
 まあ、こういうエロコメのお約束、最後は結局バレるのだが……。


待っちくび
シリコンが胸から外れてバレた後の主人公の発言。
オヤジギャグにしか見えないが、なんか一周まわって面白く感じてしまった


 ただ、バッドエンドは秀逸だった。
 男湯だと思って入ったのに、沙都美とみゆきが入ってきたものだから、腰にタオル一枚姿で脱衣所から脱出。
 そのまま自室へ直行するも、鍵を脱衣所に忘れてきて、腰にタオル一枚姿で廊下で立ち往生。寒さから来る冷えにより便意を催す。
 そこへ対人苦手な雪乃がやって来て変態と間違われ、なぜか全身に生卵をぶつけられる。よろめいて倒れ、雪乃を押し倒す姿勢に。
 何の騒ぎだと集まってきた宿泊客に、全身生卵まみれになった状態で雪乃に襲い掛かっているように見られる。
 満を持して、便意が爆発。公衆の面前で脱糞してしまう。
 とんでもないドタバタ劇の末の、実際に起きたら一生もののトラウマ確実の悲惨なオチは、初期の「こち亀」並。


 あともうひとつ、脱衣所で「どう? うらやましい?」と、なぜか贅肉を自慢するオーモリに対して「うん」を選ぶと……


niku
「なんでやねん!」的な選択肢かと思ったのだが……


mochi
「どう?」「すごく……モチモチです」


hitomi
お前は何を言っているんだ


uho


kankei


homo


hana
開いちゃった


unedori
雀の鳴き声をBGMに迎える朝。これは……


end
~HAPPY END~


 まさかの展開、まさかの朝チュン。チュンソフトだけに。
 本当に「ハイ、終わり」な淡白バッドエンドが多かったこのゲームなので、不意を突かれて一番面白く感じたバッドエンドだった。
 この選択肢自体もすごく自然だったため、思わぬ結果になって「まさかこんなことに」感が出ているのも良かった。

 もう、これがこのシナリオのベストエンドでいいだろ……と思ったが、バッドではない、ちゃんとした結末のほうが
 バッドエンドのような終わり方だったので、他のシナリオ同様、やはり結末の作り方には不満が残る。

 沙都美やみゆき、他の女性キャラが続々と入って来るのは、なぜなのか? 単に主人公が本当に間違えたのか?
 と考えたとき、"誰が何をしたのか" 、納得いく答えは、ひとつしかない。そこまでは予想できる。
 でも、「主人公がなぜそんな目に遭わなければいけないのか」といった理由や、
 女ではないことがバレて非難されて……"それから、どうなる?" といった部分。
 読み進めながら、おそらく大半のプレイヤーの興味は、そこに向くんじゃないだろうか。話のシメに対する期待というか。
『1』でいうなら、最後の一文が表示されて、BGMスタート→画面フェードアウト→スタッフロールまでの、あの余韻というか。

 その部分に対する期待に関しては他のシナリオ同様、「あれ? これで終わりか」と肩透かしを食らった感は否めない。
 長い文章を読んだ後の最後の一文って、やっぱり重要。
 って、ピンクシナリオにマジレスする俺、超カッコ悪い。

 シルエットの使い方も今ひとつだった。
 尻をこねくり回して誘うみどりさんを見た後じゃ「もっとエロく見せられただろう……」と、ちょっと残念。


hadaka
扉を上手く使って隠しているアングル。
お前らシルエットだから隠す必要ないだろうがァァァ!


satomi
バレた後、ボコボコにされる主人公。この沙都美のハイキック時、
「あ、これ正面から見たら見えてるな」という意味で、このシルエットが一番エロかった


 総合的に見るとエロさは弱いのだが、本編クリア後に出現するオマケシナリオのひとつとしてなら、納得のデキ。
 最初からゲームに入っていれば全体としての評価を少し上げるシナリオになっただろうに、
 別売りにしてしまったことで、「本編をやった結果、DLCを買わなかった人」にプレイしてもらえず、
 結果的に『真かまいたちの夜』の評価を下げる一因になってしまっている気がする。
 このゲームに限ってはホント、DLC商法は大失敗だったと思う。

 でも、この混浴編で、ひとつ確実な不満がある。
 おさわり選択肢どうしたよ……。


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[真かまいたちの夜 11人目の来訪者] | コメント (2)

2011年12月20日

PS3/PS Vita『真かまいたちの夜 11人目の訪問者』レビュー

PS3パッケージ VITAパッケージ


 シリーズの再起を賭け、長い開発期間を投じて作られた渾身の一作……だと思っていたのだが、どうやらそうではなかったようだ。
 フタを開けてみれば『2』と同じく、我孫子氏が「監修」というハンドルを操作しきれなかった印象。
『2』のホラー一色ほど特殊ではなくなったが、じゃあ『真』のほうが一般性はあるかと言われると、それもどうかなと思う。
『2』のサブシナリオはとにかく不気味で気持ち悪かったが、読ませる文章、文章力という意味では圧倒的に上だった。

 我孫子氏としては自分以外のカラーをより多く取り入れて新しいものを作りたいと思っているのかもしれないが、
 文章を読み進めていくゲームにおいて、「複数の作家を使ってひとつの作品を作る」ということは並大抵の難しさではない。
 本で言うならアンソロジーなわけで、そこに「まとまり」を求めるのは不可能に近い。

 初代『かまいたち』のバラエティ豊かなシナリオ群がウケた理由は、
 各シナリオ、まったく毛色が違うものでありながらも、作者がひとりであることで文体に統一感があったことと、
 殺人事件の話が主ではないサブシナリオでも終盤には必ず、何かしら隠されていた真実が明らかになったりして、
 根底にあるのは常にミステリーだったからだと思うのだ。

『真』は、各シナリオの作者が好き放題に書いた印象が強く、結末も「え? これで終わり?」というようなものが多かった。
 結果的には、我孫子氏以外の作家による『かまいたち』の威を借る同人サウンドノベル集……と、
 ファンとしてはあまり口に出したくない結論になってしまいそうだ。


●ミステリーとしての、本編のデキ

『1』の事件は、緻密な計画ではなかったが、状況に応じた機転と冷徹さを持っていれば実際に犯行が可能な事件であり、
 そのリアリティが恐怖と説得力を生んでいた。ペンションの人間も、ただどんどん殺されていくのではなく、
「なぜこの場面でこの人を殺したのか?」という、犯人の焦りや思惑を推理する面白さがあった。

『2』は計画的犯行だったが、あまりにも偶然の要素が重なりすぎていたため、ゲームとはいえ、フィクションすぎる事件だった。
 どうやって犯行に及んだかのトリックは面白かったのだが、それ以外の部分に無理が生じすぎていて、
 リアリティがない分、説得力に欠けていた。

 それでは『真』はどうなのか──というと、『1』の「計画的ではない」部分と『2』の偶発性が同居しており、
『2』のような大トリックがない分、シリーズ史上もっとも地味で、都合の良いだけの事件になってしまっている。
 

ミステリー編
死体の第一発見者、雪乃。彼女はこの日、体調が悪かったため、
ラウンジに居た全員に「風呂に死体がある」ことを伝えると気絶してしまうが……
※以下、微ネタバレ(文字反転)↓
彼女がここで気絶していなければ、この事件は成立しない。


「これはゲームだ」と完全に割り切るなら、「計画的ではない」ことと「偶然」によって推理しづらい状況が作り出されているため、
「一体これはどういうことなのか」という「謎についてあれこれ想像すること」自体は楽しめるかもしれない。

 だが、『1』にあれだけスリルがあった理由は、何だろうか。
 序盤から漂う疑心暗鬼ムード。
 ひとり、またひとりと殺されていくことによって絞られる犯人像と、追い詰められていく恐怖。
 死体は増えるが、それに伴って得られるヒント。

 登場人物たちと一緒に推理しながら少しずつ真実に近付いてゆく感覚は、
 まるでプレイヤーもペンションに宿泊したひとりとなって殺人鬼の居るペンションに閉じ込められてしまったかのような臨場感があった。

 しかし『真』は、最初の死体発見からムードがあまり変わらず、今ひとつ、殺人事件が発生したのだという緊張感がない。
 次々と死体は増えるが、ひとりひとりの死に対する反応が軽く、事の深刻さが伝わってこない。
 推理中も、ロジックと言えるようなものはほとんどなく、考え、推理する楽しみは薄い。
 殺されるペースも早く、作品世界にドップリと没入する前に終わってしまったような、全体的に短い印象を受けた。

 ほかにも「回収しきれていないのでは?」と思われる妙な伏線があり、詰め切れていない感じもした。
(※やってる人にしか分からないが、序盤で池谷がオーナーを急いで探してたのは何だったのか? など。)


●サブシナリオのデキ

 まず、数あるしおりの中からピンクのしおりが真っ先に登場するのに、
 肝心のピンクシナリオは後日DLC配信という意味不明さは、どうにかならなかったものかと思う。

 中古対策や単なる商法としてこうしたのなら、もうゲーム作ることを辞めたほうがいいレベルだが、
 厳しくなっているというウワサのコンシューマエロ規制上、思う存分エロシナリオをやるにはこうするしかなかったのだと思いたい。
 ソフトとしてはCERO Dだしな、これ。……DLCだとCERO審査どうなるのか知らんけども。

 それ以外には、6つのサブシナリオが存在する。
 その内のひとつ、「犯人当て編」は問題編と解決編に分かれており、解決編はDLC配信なのだが、
 これはあえて真相を遅らせて発表することで、配信までの間にユーザー間で議論を交わさせるためのものかもしれない。
 でも、これをやるなら何か景品でも用意して、配信日までに犯人の名前をチュンソフトに送信するとかして、
 真相と正解者は公式サイトで後日発表にしたほうが良かったんじゃないだろうか。
 当てようが外れようが何の意味もなく、単にひとつのシナリオを楽しむのに時間がかかるだけというのは……。


 サブシナリオの存在は、ある意味では本編よりも重要といえる。
 初代『かまいたち』の評価は、舞台と登場人物はそのままに、文章の変化だけであれだけ違うストーリーを描いたという点によるところが大きい。

『2』では、このサブシナリオ群のほとんどがホラー色の強いものになっていたため、
 初代にあったような「読み終わった後のカタルシス」が消え失せ、後味の悪いものばかり、という印象に埋もれてしまった。

 さあ、それでは『真』では……というと、冒頭でも少し触れたが、『2』の特殊性は消えたものの、文章力ではシリーズのすべてに劣っている。

 まず、全サブシナリオに言えることだが、起承転結が上手く構築されていない。 
 やたらダラダラと「承」が続いた後、「転」なしで「結」だったり、「転」が「転」としての役割を果たしていないまま「結」に行ったりする感じ。
「プロの仕事」を感じないデキだった。

 それが特に顕著だったのは「妖怪編」。
 妖怪編は『真』におけるギャグ担当ともいえるシナリオだが、個人的にこのシナリオはキツかった。
 いかにもライトノベル風……というとライトノベル作家に失礼な気もするが、素人目に見ても文章力が拙く、
 作者の「どうだ、面白いだろ!? さあ、笑え!」という不気味な圧力のような、薄ら寒いものを感じた。

 このシナリオでは、今風な喋り方をするキャラ・沙都美がツッコミ役になるが、
 他のシナリオに比べ、このシナリオだけ変にボイスが豊富でフルボイスに近い。
 本編ですらフルボイスではなかったことを考えると、力の入れ方を間違っている気もする。

 後半のツッコミはわざとだらけた雰囲気になってくるが、
「33分探偵」の水川あさみのようなツッコミを声優が演技たっぷりでやってる感じで、どうにも「わざとらしさ」が鼻につく。
「33分探偵」は面白かったが、あれを見てからこれをやると、余計にキツい。


妖怪編
文章で読むとそうでもないものも、声つきで読まれるとなんだかなぁ、と感じるものが多い。
声優がわざわざ「やる気のない演技」で「へー、そうなんだー」「すんごーいー。かっこボーヨミー」
と言っているのを聞くと、オタクのわざとらしい会話のような気持ち悪さがある


妖怪編
地の文のやる気のなさがライトノベルっぽさを助長している。
「比喩だよ」は地の文だと思うが、主人公のツッコミだとしても不要だし、会話文の後は改行すべきだろう


 なんで沙都美がそんな役回りをするかも分からないまま話は続くが、
 ひょんなことから大量の妖怪の封印が解けてしまい、「これから山場か!」というシーンで、ものすごい唐突に終わる。
 スタッフロールでは、沙都美の「え!? これで終わり!? こんな話書くなんて、作者、頭おかしいんじゃないの」というボイスが流れる中、
 スタッフロール中の文章で作者が「うるせー」とか「沙都美ちゃん可愛いよね」と会話し始める始末。
「お前、肝心のシナリオをちゃんと作らないで、何ふざけてんだよ……」という思いと、
 マンガの中で作者とキャラが毒にも薬にもならない会話してるのをムリヤリ見せられてる感があって、
 さすがに、ちょっとヤなものがあった。

 すべてのツッコミを沙都美にこなさせていることからも、作者の沙都美びいきは分かるが、
 シナリオとしてのデキを重視するならば、登場人物をまんべんなく面白く見せることを重視すべきだったろう。
 ヒロイン・京香はこのシナリオにおいては居ても居なくてもどっちでも同じくらいの存在感になってしまっているし、
 オタク色を前面に出しまくるキャラ・オーモリは単にウザい。
 そんなウザさを作者も分かっているのか、他のキャラに殴る蹴るをさせているが、
 いくらウザいとはいえ、ボコボコにすればスッキリするってもんじゃない。
 そもそもウザいことをさせずに、どのキャラにも面白味を感じられるように描くべき。


 キャラ萌えを語りたいんだったら、このゲームを遊んだ人が共感できる相応の理由と、
 狂気すら感じさせる、その人独特の偏った視点が不可欠だし、
 そもそも、小説を書く人間は極力、作品中で自分の姿を感じさせてはイカンと思う。

 特にこれは複数の作家のシナリオをまとめて『真かまいたちの夜』というひとつの作品にしたものなのだから、
 ひとりではしゃぐのではなく、複数の作家が合体して、その人がひとりで書いているかのような統一感が必要。
 アンソロジーに参加した同人作家のようなノリは頂けない。

 エロゲーや同人ゲームの会話ならこういうのもアリかもしれないが、
『かまいたち』シリーズとしてこういうのをやられると「これは違う」感がスゴい。
 サブシナリオは本編と同じくらいの気合と覚悟で作らなければダメだ。
『かまいたち』の持つ魅力は、サブシナリオも含めたすべてにあるのだから。


●追いきれなかった『1』の残り香

 舞台がペンションであることに始まり、登場人物に熟年夫婦が居ること、体格のいいイケメンが居ること、
 今風の若い女の子が居ること、ミステリー編で犯人を指摘できなかった場合は皆殺しルートになること、
 犯人の名前入力シーンが2回あり、後のほうではハッピーエンドにできないこと、
 犯人が分かっていても、ハッピーエンドに導くための犯人名前入力シーンを見つけるほうが難しいなどなど、
『1』の形式を踏襲している部分が見受けられる。
 
 ただ、『1』は皆殺し寸前になっても2回目の犯人入力シーンで当てれば犯人自体は分かるようになっていたが、
『真』では2回目の犯人入力では何を入力しようが犯人は明確にならず、むしろ余計に推理しづらくなっている。

 2回目の犯人入力は「事態としては手遅れだが、次回プレイへの大いなるヒント」か、
「犯人は判明したが、犠牲者が多く出すぎた……」系のバッドエンドの窓口としてあるべきだと思うが、
 どの選択肢を選んでも、誰の名前を入力しても犯人は分からないまま全部バッドエンドになるのは如何なものかと思った。

 あと、『1』で好評だったから今回も使ったのか、単なるファンサービスなのかは分からないが、
 サブシナリオのひとつに「スパイ編」を持ってきたのは、まさに『1』の栄光を追い求めるかのようだった。
 だが、デキとしては、かなりひどい。

 ペンションを舞台にテロリストたちと戦う話だが、似たような話は『1』で見ているし、
 比較されるのは当然なのに、『1』のスパイ編と比べてあまりにも面白くない。
 盛り上がりもなければ、やたら多いバッドエンドも、ただただ銃殺されるだけ。
『1』のスパイ編ってスゴかったんだな……と思い知らされた。

 なお、読了率を100%にする上で、このスパイ編はかなりややこしい作りになっており、
 バッドエンドと未読部分をしらみ潰しにしていく作業感がすさまじい。
 そういった、コンプリートへの無駄な障害として立ち塞がるという意味でも、このスパイ編の戦犯度は高い。

 音楽面でも『1』の遺産は大きい。
『かまいたち』シリーズはすべてプレイしているが、記憶に残っている音楽は、全部『1』の曲だ。
「サウンドノベル」というくらいだから、場面に合わせたBGMの威力を効果的に使ってほしいものだが、今回は特にサウンドが弱い。
 サントラも発売されるようだが、サントラを発売できるだけの曲数があったことに驚くほど。それくらい印象が薄い。


犯人入力
犯人入力シーンで流れるBGMは、『1』からおなじみの緊迫感あふれる名曲「ひとつの推理」。
良く言えば「これぞ『かまいたち』」という感覚の訪れを漂わせ、
悪く言えば、音楽面でもいまだに『1』の持つ力に頼っている



●選択肢とバッドエンドの価値

 バッドエンドは、単に「ああ、主人公が殺されちゃった。やり直し」というだけのものではない。
 なぜここで、この状況だと殺されたのかを推理するための重要なヒントでもある。
 もしくは、ちょっとふざけた選択肢から発生する、「なんでこんなことに!?」といった、プレイヤーを楽しませるための、お笑い系エンド。
 ……のはずが、今回は本当に何の面白味もない「ただのバッドエンド」だらけ。
 選択肢についても、意味のある選択肢は少なく、いろいろ分岐しているように見えて特に何の意味もないものがほとんどだった。

 サウンドノベルでプレイヤーができることは選択肢を選ぶことだけ、といっても過言ではない。
 ただ選ぶだけ、されど、選ぶだけ。
 それだけ重要なものなのだということを、作り手側が理解していない。
 バッドエンドの質に関しては、今回のは子供が作ったゲームブックの域。


 今回、新しい仕掛けとして「1WAY選択肢」「SECRET選択肢」「おさわり選択肢」などがあるが、
 これらも、入れる必要があったのかと疑問に思う。

 A、B、Cと選択肢があったとして、一度Bにカーソルを動かすとAに戻れなくなる「1WAY選択肢」、
 一定時間が経過すると選択肢が変化する「SECRET選択肢」、
 アドベンチャーゲームのように周囲を調べることができる「おさわり選択肢」。

 ぶっちゃけて言えばすでに他のゲームで採用されているシステムばかりで、新鮮味はない。
 問題なのは、それらがまったく効果的に機能していないことだ。

 まず、「1WAY選択肢」はフローチャートシステムがある以上、ほとんど意味がない。
 チャートで戻って選び直せば、普通の選択肢と同じだ。

「SECRET選択肢」は15秒というカウントが妙に長く、カウントが0になる過程で変化するのは選択肢が「消える」ことだけ。
 0になると新たな選択肢が出現するが、要するに選択肢がA、B、Cとある場合、
「15秒経ったらDも選べるよ」と同義であり、コンプリートを目指す際に単に面倒くさい選択肢と化している。
 だいたい、画面に「SECRET選択肢」って堂々と表示するのもどうなんだ。全然シークレットじゃない。


スパイ編 スパイ編
時間経過で写真のように選択肢が消え、今までなかったCが現れる。
要するにCを選ぶには15秒待たなくてはいけないだけ。


おさわり
ラウンジを「おさわり」で調べる際の画面。
実は一枚絵ではなく360度グルグルまわせるようになっているのだが、
あまり大した発見もなく、意味はなかったように思う


「おさわり選択肢」は名称こそ選択肢だが、マウスで画面を調べるアドベンチャーゲームと同じことができるわけで、
 色々と可能性がある……はずが、「ここを調べたらこんなものが!」ということは皆無に近く、
 わざわざ調べさせる意味はあったのか? というものが大半を占める結果に。

 そんなわけで残念な感じの「おさわり選択肢」だが、今後配信されるピンクシナリオで真価を発揮すると見ている。
 わかるだろ?


 その他、背景やキャラが動きまくって進化していた『2』の良いところはどこへやら、全体的にほとんど動かない。
 PS3やPS Vitaというハードでの発売は単に現行機だからという理由であり、
 ゲームとしてはそれらのハード性能を用いるまでもない、恐ろしく低技術で手間をかけていないものとなっているのが残念だ。


スパイ編
スパイ編にて、暗闇の中、テロリストを麻酔銃で狙撃するシーン。
「おさわり選択肢」システムの流用で、
敵はまったく動かないし、時間制限もないので、狙撃を外す要素がない


 元々、サウンドノベルは高いハード性能を必要としないジャンルだし、ハード性能を使った派手でゼイタクな演出は必要ないが、
 プレイヤーに現状を分かりやすく把握させたり、建物の作りを理解させたり、
 臨場感を高めるための動き、プレイヤーをより楽しませるための演出といった最低限の手間は、ちゃんとかけてほしいと思う。


●最後の "隠し"

『2』『×3』と、クリア後に長期間「何かある」「いや、もうない」とプレイヤーを惑わせた隠し要素。
 今回は『×3』にはなかった「チュンソフ党の陰謀編」が復活し、隠し方もなかなか上手い。
 犯人入力画面で「あさの」と入れると、初代ディレクターの麻野氏がテロリストの格好で登場してヒントを言うことと、
 黒のしおり開放直後にもヒントがあるので、そこまで難しくはない。

 しかし「チュンソフ党の陰謀編」も定番化しているので、「まだ最後に何かあるだろう」と勘繰るのは当たり前。
 トロフィーリストを見ると1つだけ隠しトロフィーになったままのものがあり、
 トロフィーサイトでそれが「プラチナのしおり」だということは判明していた。
「金のしおりの上がある!」という事実と、表示される読了率が100%になってもプラチナのしおりが表示されないということで
 どんな隠し方をしているのかとワクワクしたが、意外にもスンナリと解決してしまった。

「金のしおり」の後にミステリー編をプレイしていると、『2』の電波文のような不気味な文章がランダムで出てくることがある。
 これら自体には何の意味もなく、気味悪さをカンジさせるにしてはデキもひどいものだが、
 これらを全種類見るとプラチナのしおり取得となる。

 電波文の登場箇所はネット上の情報交換ですぐに突き止められるが、出現そのものがランダムなので、
 同じ場所を何度も読んでは戻り……の繰り返しになる。スパイ編のバッドエンド埋めもひどかったが、これもひどい。
 ゲームとして、何の面白さもない。

 フローチャートはスクロールすると結構空欄があるので、その辺に何か仕込まれてると思ってたんだけどなぁ……。
 まだ何かあると期待したい……って、また『2』『×3』と同じだな、これは。


●何が『真』だったのか?

『×3』は『3』ではなく、『1』と『2』の本編も同時収録してるから『かまいたちの夜×3』なんだ、ということだった気がするが、
 別にあれを『3』ということにして今回が『4』でも良かったんじゃないか。
 それとも、ホテルやマンションのルームナンバーが「4」や「13」を嫌うように、『4』を避けたのだろうか。
 何にしろ、『真』の名に応えたとは言えないデキであることは確かだと思う。

 発売前に公式サイトで毎週更新されていた「ちょっとおかしなかまいたちの夜」で、
「真という字は分解すると『十一人目』にならないだろうか」といった話があり、「おお、なるほど」と思ったものだが、
 プラチナのしおりや「100%クリア」のプラチナトロフィーまで明らかになった今、
 別に隠し要素に絡むこともなく、意味はなかったようだ。

 妖怪「かまいたち」に関するネタも限界に来ていると思うので、「かまいたちの」にこだわらず、
「~の夜」シリーズとして発展させたほうがいいんじゃないかとも思う。
 また妖怪の名前にすることで統一感を出してもいいし。

 ただ、ひとつ言えるのは、我孫子氏はすべてのシナリオを自分ひとりで書いたほうがいい、ということだ。
 ひとりで書くのは大変かもしれないが、もう、作家の質の問題と、統一感の重要性が如実に出てきてしまっている。

『かまいたちの夜』、ひいてはサウンドノベルというジャンルは、
 文章が好きな人によって、文章が好きな人に向けて、文章の可能性を追求して丁寧に作られた結果、完成したもの。
 もし次回作を作るつもりがあるならば、初代の丁寧さを思い出して、
 一文、一文を吟味し、ひとつひとつを大事に、画面に表示していってほしいと思う。

 こんなにほめてないレビューをわざわざ書くのも、文章が好きだから、『かまいたち』が好きだからなんだ。
 ホ、ホントよ。


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[真かまいたちの夜 11人目の来訪者] | コメント (6)

2011年10月20日

Deal of the Week 10/19~10/26……と真かま夜とダークソウルと秘宝伝説

dow


Halo: Reach

 ・DLC「ディファイアント マップ パック」
 800MSP→400MSP

 ・DLC「ノーブル マップ パック」
 800MSP→400MSP


 実績絡みのDLC2つ。ソフト持ってて、DLCはまだ買ってない人向け。
 俺は『Halo』シリーズはサッパリなのでスルー。

 あと、価格改定なのか謎の値下げセールなのかは分からないが、『悪魔城ドラキュラ Harmony of Despair』が半額の600MSPになっている。
 興味あったけど1200はタケーなーと思ってた人はチャンス。

『悪魔城ドラキュラ Harmony of Despair』は、「『ドラキュラ』で4人co-opってヤダ何ソレーさげぽよー」とか思ってたら
 予想以上に面白い逸品だったのだが、ある程度パーティプレイを楽しみ終わると、あとはレアアイテムを求めて同じボスに何度も挑む
 ハック&スラッシュと化すので、その単調さをどうにかできないかと思う。


PS3/PS VITA『真かまいたちの夜 11人目の訪問者』 12月17日発売

『真かまいたちの夜』は、まだとりあえず発表しただけだろうと思っていたら、いつの間にか発売日が12月17日に決定していた。これは買わねば。
 公式サイトのおまけコンテンツである「ちょっとおかしなかまいたちの夜」は、タイトル通り、ちょっと面白いので、何気に楽しみにしている。
 SFC版のフォントや、「終」への入り方を再現しているのが素晴らしい。

 ただ、今回はすべて我孫子氏によるシナリオかと思っていたら、他にも作家が数名関わっているようだ。
 まあ、さすがに『2』みたいなことにはならないだろう……。


・なぜかアジア版だけ微妙に発売日延期になっていた『DARK SOULS』が、ようやく発送された。
 フタを開けてみれば北米版も欧州版もリージョンロックなしらしいので、見事に一番運の悪いものを引いてしまったようだ。
 もうkonozamaを通り越してbuzamaだよ。10月終わるよ。

 PLAY-ASIA.comだと、これを書いている現在ではまだ限定版の在庫が残っている。発売日延期によるキャンセルが相次いだのかもしれない。

 限定版は、ゲームソフト以外に

 ・Game guide
 ・Special hardbound art book
 ・Original soundtrack
 ・Behind-the-scenes video

 ……が付いてて通常版と1,000円くらいしか違わないので、なんとなくオトク。

 英語だとあまりにもゲームに支障が出るようだったらPS3の日本語版を買おうかとも思っていたが、
 どうやら難易度がハンパないらしいので、2回もやる気にならないのではないかと不安に。


・難易度といえば、数年間寝かせていたDSの『サガ2 秘宝伝説』をやっとラスボスまで進めたのだが、
 最終防衛システムがありえないくらい強化されてて、早くもクリアを諦めている。

 勝つには、ここからさらに何時間もかけてザコ戦を繰り返して強化するだけなのでやる気も出ないし、そもそも最大HPの上がりにくいこと。
 俺の見込みだと最低あと10回は「最大HPがアップ!」が出てもらわないと勝てないんだけども、
 ラストダンジョンで1時間戦って1回も上がらないって、お前、俺をここであと何時間戦わせるつもりだよ。

 レビューを書きながらプレイしていたのだが、ほめる点が全くなく、遊んでも、レビューを書いても、またそのレビューを誰かが読んでも、
 誰も何も得られないのではないかと心配するほどにひどいリメイクなので、
 このまま記憶から消してしまうのがベストではないだろうかと思い悩む今日この頃。

 ・・・

 あー、『サガ2 秘宝伝説』のリメイクまだかなー!



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