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2019年7月 1日

『Bloodstained: Ritual of the Night』発売から10日ほど経って……

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 2019 年全体で見ても、個人的に首位争いをするレベルで期待していた『Bloodstained: Ritual of the Night』。一通りクリアして、Steam 版は実績コンプリート、Xbox One 版はバグで実績が1つだけ解除されないが、それ以外はコンプリート。というわけで、記憶が新しい今の内に、レビューというほどではないけど、ちょろっと書いておきたい。

 とにかくユーザーが求めていたものをキッチリ出してきたという感じで、変に冒険していない。特に『悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲』(以下、『月下』)のファンを全力で喜ばせようという心意気を感じる。『月下』をベースに、『暁月の円舞曲』から始まったソウルシステムを盛り込み、グラフィックこそ 3D で今風に仕上げてはいるが、とことん手堅い作り。

 カレーやハンバーグが嫌いな子供は少ないと思うが、これはおそらく、美味しいと感じる人が多い「最大公約数的な位置にある食べ物」であることと、「普遍的な美味しさ」を持つ食べ物である点が大きいと思う。
『Bloodstained: Ritual of the Night』は、「お前ら、こういうのが好きなんだろうが!」と、メトロイドヴァニアが好きな奴らにとってのカレーやハンバーグを持ってきた。焼肉でもなく寿司でもない、高級料亭の料理などでもない、普通のカレーやハンバーグだ。これがクッソ美味い。我々は「これが食べたかったんだよ」と涙を流しながら咀嚼しているところなのだ。

 ただ、ちょっと気になる部分はある。


リリース直後の、尋常ではない量のバグ

 今回驚いたのは、国内発売のソフトだったら炎上しかねないほどのバグが大量に残ったまま、パッケージソフトとして発売したこと。よく知らんけど、外国って結構こういうスタイルなんだろうか。「後でパッチ当てればいいや」の精神もここまで来たか、みたいな。日本版のリリースが遅れているのは物流面での問題とのことだが、実際はどうであれ、日本版が遅れたのは結果的に良かったのではとすら思う。現時点ですでに致命的なバグはアップデートで落ち着きつつあるので、日本版はちゃんとした状態でリリースされるだろう。

 Steam 版はギリギリでパッチが当たった状態でリリースできたのか、致命的なバグはないのだが、PS4 版と Xbox One 版はパッケージソフトをオフライン環境で遊んだらエラいことになるから気をつけろ。俺は待ちきれずに Xbox One 版のパッケージを買ったのだが、発売日に7ギガくらいのパッチが落ちてきた。ほとんど中身総入れ替えじゃないの、これ。ちなみに、発売日のパッチではバグがまだ結構ダダ漏れで、それから約1週間後のアップデートで、ようやく落ち着いた感じ。

 バグの種類も、予想外のバグではなく、普通は開発終盤に必ずやるであろう、最低限のチェック作業をしていれば絶対に見つかるレベルのバグ。つまり、発売を急いだせいで潰しきれなかったバグという印象が強い。山ほどある中から、いくつかピックアップしてみよう。以下、Xbox One 版で確認したもの。

■悪魔図鑑(モンスター図鑑)関連
・図鑑には、そのモンスターが落としたアイテムが記載されるのだが、明らかにもうアイテムを落としているのに、ずっと「????」になったままの項目がいくつかある。(※アップデートで修正済)
・一部のモンスターのグラフィックが、他のモンスターと入れ替わって表示される。(※現在もそのまま)
・本来は図鑑に記録されるはずの敵が記録されないため、図鑑コンプリートの実績が絶対に解除できない。(※アップデートで修正済)
・アップデート前と後で、図鑑に記録される敵の HP や経験値などのデータが、まるっきり異なっている。

■錬成関連
・錬成したアイテムが記録されるリストがあるのだが、錬成したはずのアイテムが突然リストから消えて「????」になることがある。(※アップデートで修正済)
・敵からのドロップしか入手手段のないアイテムを使用する錬成があるが、一部、絶対に落とさないようになってしまっているせいで、全アイテムを入手した実績が絶対に解除されない。(※アップデートで修正済)
・アイテムを分解できる「解体」という要素があるのだが、解体できるはずのアイテムが、どうやっても解体リストに出てこないことがある。(※アップデートで修正済)

■その他
・アクセサリーは2つ装備できるのだが、いつの間にか勝手に片方が外れていることがある。(※アップデートで修正された?)
・クエストの「New!」マークが、いつまで経っても、どうやっても消えない。(※アップデートで修正済)
・入るのに鍵が必要な部屋に、鍵なしで普通に入れる。(※アップデートで修正済)
・埋めたはずのマップが、埋めていないように見える箇所がある。(※今もそのまま。マップ踏破率には影響はない)

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キニナルー

・マップ踏破率の最大値が、なぜか 100.10 %。(※アップデート後は 100.00 %に)
・1周クリアで難易度ハード、2周クリアで難易度ナイトメアが解禁されるが、データ引き継ぎで難易度ナイトメアに挑むと 100 %フリーズする。(※アップデートで修正済)
・アイテムは「カシミ」なのに、レシピは「カシミ装備のレシピ」になっている。(※今もそのまま)
・会話のテキストに結構誤字がある。(※今もそのまま)

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「いつでも」の間違い。似たようなミスは、ここ以外にもあったような気がする。

・アップデート前と後で、宝箱の中身が違う。
・アップデート後は、マップ上に宝箱のマークが表示されるように。アップデート前の状態だと、マップの画質も微妙に悪い。
・オープニングで表示される絵の一部がラフ画状態(※右がアップデート後)

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オープニングで、ここだけ突然、絵が雑になるので「!?」とビビる。

 他にもいろいろあるのだが、ゲームをやっていない人には分かりづらい内容なので割愛。ハッキリ言ってアップデート前の状態は商品としてヤバいレベル。発売から1週間ほど経ったあたりでアップデートが来て、致命的なバグはだいたいなくなったが、1週間でどうにかなるのなら、発売を少し遅らせりゃ良かったのに……と思わなくもない。アップデート前後で図鑑のデータ(敵の HP や経験値)や宝箱の中身も違うことから、バグだけでなく、開発終盤でのバランス調整も間に合っていなかった雰囲気がある。

 今も一部のユーザーに尾を引いているバグとして、アップデート前のセーブデータをアップデート後に読み込むと、開けていないはずの宝箱が開いていたり、その逆で、もう取ったはずの宝箱が閉まっていてまた取れる、というものがある。これでマズいのが、宝箱から手に入るキーアイテムの類。どうも、キーアイテムが入っている宝箱が開いていると進行不能になるらしく、解決方法は「アップデートした状態で最初から始める」しかないらしい。キツい。


バッカー(支援者)が、望んだハードで発売日に遊べない

 例の、日本版の発売が遅れる問題。発売日を発表した後、発売直前になってから判明するような内容ではないと思うのだが、今作の流通に携わった人は一体何をやっていたんだろうという感じ。Steam 版のコードを配布するという応急処置はしたものの、このゲームがちゃんと動くだけの PC を持っていなかったらアウトだしなぁ。

 実はスピンオフ作品の『Bloodstained: Curse of the Moon』(※2018年の6月頃にリリース。『Ritual of the Night』の支援者は無料でもらえた)のときにも似たようなことがあった。支援者にはダウンロードコードが送られてくる手筈だったのだが、なぜかコードの配信が遅れ、結果、支援者は待たされ、配信開始日に普通に買った人が一番早く遊べた。釈然としないものを感じたが、まさか、また同じことをやらかすとは……。


しかし、ゲームのデキは良い

 そんなこんなで、発売までの立ち回りはとてもほめられたものではないが、ゲームのほうは、ほぼ文句がないデキ。クリアしたときは「えっ、もう終わり?」という気持ちでいっぱいで、最初は「ボリューム不足だろ」と思っていたのだが、プレイ時間を見る限りでは、極端に短いということはない。つまりクリアまで、それだけ夢中だったということだろう。クリア後にトロフィー/実績コンプ狙いでプレイしていたら、結構いい時間になった。

 2周目をやってみて思うのが、ゲーム進行の際のストレスが限りなくゼロに近いということ。普通、どんなに好きなゲームでも、「ここはちょっとメンドイんだよな……」と感じる場所がある。『月下』にしても、スタートからクリアまで正攻法で一息でいけるかというと、キツい。「難しい」のではなく、「疲れる」とでも言うのだろうか。中途半端に長いし、「今日はこのへんにしておくか」と区切りをつけたくなる場面が絶対ある。

 しかし本作はサクサク進めるうえ、1周がちょうどいい長さ。データ引き継ぎで周回プレイが可能なため、「2周目の半ばくらいまでやっておくか」と思ってプレイしていたら、「……次のエリアまでやっておくか。……いや、もう1つ次までにしておくか」と、結局一気に2周目のラストまでいってしまった。「やめどきが見つからない」という言葉が、これほどふさわしいゲームも珍しい。

 歯応えを求める人は、データ引き継ぎなしで難易度ナイトメアに挑むことも可能で、ボスラッシュモードやスピードランモードもある。ただ、スピードランに関しては、『ドラキュラ』シリーズで恒例だったバグ利用による変態移動プレイが早くも確立されつつあり、床は抜けるわ、まだ行けないはずの水中を無理矢理通り抜けるわ、まだ序盤なのにスキルを駆使して空中を無限ジャンプし始めるわと、世界レベルで、スゴい勢いで開拓されている。


水中を進む方法

 今後、アップデートでプレイアブルキャラの追加やローグライクモードなるものが予定されており、その他にも無料の DLC がいろいろと予定されている。日本版の正式リリースまでには、良い感じで継続して盛り上がりそうではある。

 書き忘れるところだったが、音楽もイイ。特に城のエントランスの曲は『月下』以降の『ドラキュラ』シリーズが持つ耽美なイメージを見事に引き継いでいて、↓の動画の1分11秒あたりからの、70~80年代の歌謡曲みたいなフレーズがたまらん。どこか、ポール・モーリア的な雰囲気がある。

 Steam ではサウンドトラックも配信開始しているのだが、フェードアウトせずにブツ切りやら1ループでおしまいやら、どうもサントラとしての仕様が杜撰らしく、曲は良いのに、たいへん評価が低い。というか 60 ドル以上の支援者にはデジタルサウンドトラックとデジタル攻略本が付くらしいのだが、それだけでも先にくれよ!

 コナミよ、今、GBA と DS の『ドラキュラ』シリーズを現行機で遊べるようにしたら売れると思うぞ。『Bloodstained: Ritual of the Night』でメトロイドヴァニアを食い足りていない奴らが、今まさに飢えている。GBA のは Wii U のバーチャルコンソールで配信されているから、実現は、さほど難しくはないはず。問題は DS のだが、タッチパネルを使う仕掛けがある以上、移植できそうなハードは Nintendo Switch くらいだろうか。

 とりあえず攻略ページを立ち上げて、全エリアの詳細マップと悪魔図鑑だけはがんばって作ったので、今後プレイする人は役立ててくれい。あとはアイテムデータ、奥義、シャード、クエストのリストを埋めていけば、攻略ページとしては一応の完成といってもいいのだが、地味に時間かかりそうだな、これ……。

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