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2018年2月23日

PS4 / PS Vita / Windows『聖剣伝説2 Secret of Mana』

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 ネット上では、すでに炎上に近いレベルで酷評を受けている、リメイク版『聖剣伝説2』。前作の時点で、シリーズを再始動するには不安の色が濃いデキだったので、個人的には大して驚いていない。内製か外注かは知らないが、今の聖剣スタッフに対してはリメイクのデキ云々以前に、技術的な不安がスゴい。

 ネットの評判を見ていると、まず大量のバグが大問題になっていて、その次にアレンジされた音楽の不評という感じ。音楽に関してはオリジナル版との切り替えが可能になっているので、傷は浅い。バグに関しても、さすがにアップデートで修正していくと思われるので、最悪のスタートではあるが、現在騒がれている点はそのうち沈静化するのではないかと思われる。

 本当の問題は、それ以外の部分だ。

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 前作のリメイクのように、イベントシーンがキャラの立ち絵だけということはなくなり、力が入っているのが分かって良い……のだが、キャラクターもボイス付きで喋るのに、まさかの口パクなしという所業。ランディは、この半開きの口のまま、「お~い、皆 待ってくれよう」と喋る。金髪はボブ、三角帽子はネスだが、彼らもそれぞれ、への字口、口閉じのまま喋る。口を開けたまま、あるいは閉じたままで身振り手振り喋る姿は、いっこく堂を見ているかのようだ。

 ドット絵の頃であれば口パクなんてしなくても良かったが、今回のようにキャラクターの 3D モデルをきちんとした造形で作った上で、アップで見せるカメラアングルにするなら、違和感が付きまとう。なんというか、力を入れるべき所と抜くべき所の選別判断に疑問符。

 そして、これだけは書いておきたい。前作でもそういうところがあったが、開発陣がリングコマンドの意味をまったく理解していない。

 リングコマンドの意味については1作目のリメイクについての記事でも書いたが、「現在のゲーム画面」を薄暗く表示しつつ、キャラクターを中心にアイコンを配置することで、現在のゲーム画面の情報を極力遮らずに、どのキャラクターのコマンド選択中であるかを視覚的に把握しやすくすることが利点のシステムだ。ドラクエのように階層ごとにウィンドウをいっぱい開いたり、場合によっては画面そのものをアイテム画面など別のものに切り替えて現在のゲーム画面から一旦切り離してしまうものが多い中、これは当時、画期的だった。

 それから 25 年経ってリメイクされたものが、これだ。

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 リングコマンドの真ん中にキャラが来ておらず、ただ単に画面の真ん中にメニューをリング状に並べている。この場合のリングの意味って、何だろう。少なくともこれは『聖剣2』のリングコマンドではない、別の何かだ。

 これはランディとポポイの2人パーティー状態だが、リングコマンドをランディからポポイに移動してみよう。

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ランディ

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ポポイ

 ほとんど間違い探しだが、分かるだろうか。カーソルの色が水色なのがランディ、緑色がポポイである。リングコマンドがそのキャラ中心に移動しないという時点で衝撃だが、現在選択中のキャラを、なぜこんなに分かりづらくしたのだろう。リング自体をキャラ中心に展開して、選択中のキャラに応じてリングの位置をそれぞれのキャラに移動することが、なぜできなかったのだろうか。

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Wii U のバーチャルコンソール版『聖剣伝説2』より。リングコマンドはこのようにキャラクターの周囲に配置され、選択したキャラクターに応じてリングごと移動する。

 一応、良い点もある。

・『聖剣2』のダッシュの性能はクセがあり、使いにくい印象が強かったが、今回は「普通のダッシュ」になった。
・前作(『1』リメイク)は、見た目は 3D なのに当たり判定が 2D になっているボスなどがいて、「アクション RPG なのに距離感がおかしくなる」という致命的な欠点を抱えていたが、今回はちゃんと当たり判定が 3D になっている。

 ……いかん、2つしかない。しかも後者は当たり前のことだった。

 ・ ・ ・

 音楽面についても少し書いておこう。

 今回の一部の曲は、曲が主張しすぎていて、ゲームミュージックであることを忘れている気がする。村や町の曲「夏の空色」は、本当にやかましい。このためだけに、オプションで音量を下げようかと思ったくらいだ。

 元は、村や町を散策しているときに流れていた、ホッとする感じの曲だったが、今回は途中からお祭りでも始まったのかというほどに重低音で「ド! ドド!」と、やたら攻撃的なサウンドになっている。スーパーファミコン版の「夏の空色」のキックドラムに相当する部分を別の音色で鳴らして再現しようとしているフシがあり、それが違和感の原因になっているような気がする。

 海外ではすでに YouTube で流されていたりするのだが、そのコメント欄では

「OH NONONONONOOOOOOOOOOOOO」
「I want to die.」
「What the hell,kikuta... what were you thinking. (なんてこった、菊田……一体どうしたんだ?)」

 ……と、だいたい日本と同じ反応。「wow they raped it hard」というコメントもあり、日本でよく言われている「原曲レイプ」すら世界共通語かよと驚かされる。

 これがアレンジアルバムに収録された曲なら別にいいと思うが、当時の感動を現代に蘇らせるための、どちらかというと原作に忠実な方向性のリメイク作品で、こういうアレンジはマズいんじゃないか……と思わされる曲が多かった。

 今回の『聖剣2』の曲群は、複数の作曲家がアレンジャーとして参加する形になっている。そのせいもあって統一感はなく、上記のような問題も出ているわけだが、一番の問題はそこではない。各作曲者たちは、おそらく曲しか聴いていないのではないか。その曲に合わせてゲームをやってみていない。サントラなどでその曲だけを単独で聴くことを前提として曲を作っている気がするのだ。

 昔は、曲の担当者もそのゲーム会社の社員で、ゲーム上で音を鳴らしてみて調整していたと思うが、複数のアレンジャーを使って、しかもそれらが外部の人間となると、現在はそういった微調整ができない環境にあるのかもしれない。
 また、当時はボイスがなく、フィールドでザコ敵と戦うときは、敵を攻撃した音と BGM のみが響いていた。おそらく、そのおかげもあって各 BGM が強く心に残っていたのではと思う。今回は武器を振るうときに「せやっ!」などの掛け声が入り、しかもそれが3キャラ分だ。結果、BGM を遮りまくりで、少々やかましく感じる。しかもその BGM も主張が激しいわけで。ゲームを構成する各要素たちが協調しておらず、全員が「俺が俺が」と前へ出ようとしている感じだ。

 音楽は人によっては感じ方が違うものだし、昔と同じにするなら作り直す意味がない。今回はオリジナル版を手掛けた菊田氏が編曲を担当している曲も多いのだが、それが不評になっているものもある。同じ漫画家でも昔と今で絵柄が違ったりするわけで、これは本当に難しい問題だろうなぁと思う。

 個人的には『シークレット・オブ・マナ・ジェネシス / 聖剣伝説2 アレンジアルバム』のノリで全曲作っちゃえば良かったんじゃないの、と思っているのだが、世間的にはこのアルバム自体が不評の部類のようなので、これまた難しい。正解がない。

 ただ、オリジナル版が優れていると感じる点は、メインメロディー部分が聴き取りやすいこと。当時は使える音色にも音数にも限りがあって、要らないものは極力削ぎ落す必要があったわけだが、それらが制限なく使えるようになった今、その成果がよく分かるというか。

 ・ ・ ・

 とりあえず、致命的なバグがいくつかあるようなので、アップデートを待ってプレイしたいと思う。

●後日追記

アップデート(Ver.1.02)配信開始のお知らせ

 基本的にバグへの対処だが、一部、リングコマンドが改修されているようなので、見てみる。

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ランディ

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ポポイ

 リングコマンドの中心に選択中のキャラの顔グラフィックをねじ込むという力技で対応。まあ、この短期間でできることといったらこれくらいだよな、とは思う。少なくとも、選択中のキャラが誰なのか分かりづらい問題はマシになった。ただ、ここまでくると、もはやコマンドをリング状に配置する意味自体がない気もする。せめてアナログスティックを倒した方向でコマンドを選べたら、アクセシビリティが高まったのだが……。

 なお、装備画面でのカーソルのデフォルト位置がゴミ箱なため、装備品を間違って捨てそうになる問題とか、防具屋で買い物の際、現在装備中の物との防御力の変化が見れないという、今時ありえない仕様はそのまま。

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| コメント (4)

コメント

いやーなんかアマゾンの評価がすごい事になってますね…
かく言う自分もとりあえず不満点をざっと並べると

リングコマンドの回転方向がオリジナルから逆になってるからちょいちょい回す方向を間違えるし、
おまけになんかレスポンスも悪くなってるし、
キャラと会話する時もなんか判定が狭いし、
会話時やイベント時に仲間が集合する時もキビキビしてたのがリメイクではなんかトロトロしてるし、
仲間の索敵範囲が狭くなってるのか、全然攻撃してくれなかったりするし、
追従が半端なのか、オリジナルより地形に引っかかり易くなってる気がするし、
(ただし画面スクロールが止まらなくなったからイライラ度は若干低い)
キャラの名前まで呼ぶフルボイスなのはいいけど、名前を変えると名前を呼ぶ所でいきなり「ポポポ」とSEが鳴るし、
(基本デフォ名は変えないプレイスタイルだが、なんとなくToHeartを思い出す)
攻撃方向がアナログになったせいか、特殊なモーションの必殺技はなんか当てにくい気がするし、
(単に自分が下手なだけか)
なんかやたら簡単になってる気がするし、
(マンティスアントを一発で倒せた事にびっくり)

ざっと思い返すだけで結構出てきてしまう始末なんですが、最大の問題点が、
元が聖剣伝説2だからこんなんでも割と楽しめちゃうという所で…


投稿者 nanase : 2018年2月27日 00:22

> なんかやたら簡単になってる気がする

時代に合わせて、ある程度は調整したっぽいですね。
攻略本のインタビューでそういったことが書いてありました。
3D化したことで難易度が変化してしまった敵もいたようで、そのへんも含めての調整だとか。

マンティスアントは弱いんですけど、あえて少しウロウロしてみると、原作同様にスタン攻撃してくるんですよね。
最初のボスで、どうやってもゲームオーバーにならない仕様の敵なんだから、
そもそも、あんないやらしい攻撃してくる必要自体ないと思うんですけど、原作重視で残したのかなぁ……とか。

> 元が聖剣伝説2だからこんなんでも割と楽しめちゃう

私も先へ進めたいんですけど、セーブデータに悪影響が出る可能性があるバグも散見されるので、
万が一を考えて、一旦ストップしています。アップデート待ちですね。

私は時々「ここは、こういう理由でアカンやろ」とマイナスイメージを含んだレビュー的なものも書きますが、
だからといって別に「このゲームはダメだからやるな」みたいに言っているわけではなく、
「それはそれ、これはこれ」として、あくまで判断材料のひとつとして見て頂ければと思います。
「バグひでぇな……。それはそれとして、やるか」とか、
「この人は、こう思ったのか。それはそれとして、やるか」みたいな。


投稿者 夢崎(管理人) : 2018年2月27日 01:55

プレイ再開してそういえばこんなのもあったな…という残念点を少々

オリジナル版では画面端でマップ移動を開始していたのが
リメイク版だとそれほど進まなくても画面遷移が始まっていきなり感があるのが若干不親切

画面移動時に画面外から走ってくる演出を無くしたのが残念

モンスターのやられ演出が始まるのが遅いせいで無駄に攻撃しやすくなっちゃってる

なんかランスが敵を貫通するようになっててやたら強い

なんかどんどん出てくる!
……3のリメイクがもしあったらどうなってしまうのか


投稿者 nanase : 2018年2月27日 02:03

> ……3のリメイクがもしあったらどうなってしまうのか

攻略本のインタビューを見る限りでは、当然『3』を見据えて、
むしろその先にある新作まで見据えてのリメイクだったようなのですが、
今の技術では当分無理なのではないか……と思わされます。
キャラ数も増えるし、何よりも『3』は仲間キャラの組み合わせパターンが多いので、デバッグの手間もスゴいはず。
『2』でこれだけバグが出るなら、『3』は逆にどれほどのバグが出るのか期待してしまいます。

前作のリメイクも敵の当たり判定とかバグとか結構ひどかったんですが、
ダウンロード専用ソフトだったこともあって、あまり表面化しなかったのかなぁと。


投稿者 夢崎(管理人) : 2018年2月27日 03:15

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