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2017年1月12日

映画『貞子 VS 伽椰子』

『リング』ファンとしては気になっていた1本。年始にゲオに行ったときにレンタルビデオコーナーも見て回っていたのだが、見事に全部レンタル中だった。12 月にレンタル開始されたばかりなので、まあ年末年始となるとそりゃ皆食いつくよねっていう。仕方ないので、U-NEXT の 31 日無料トライアルを利用して観ることに。

『フレディ VS ジェイソン』『エイリアン VS. プレデター』といったドリームマッチ映画は海外だと多いが、日本だとあんまり見られない。洋画に比べると、邦画はこういうキャラクター性に関しては弱い。『ゴジラ vs キングギドラ』みたいなのしか思いつかない。

 改めて邦画のドリームマッチを考えてみよう……となると、『男はつらいよ VS 釣りバカ日誌』みたいなワケの分からないことになる。何やるんだ。スーさんに見込まれた寅さんがスーさんの会社に入社して、得意の口上と実演販売でメキメキと頭角を現して一気に高給取りになって、背広姿で「オイ、さくら! 今帰ったぞ」とか言うのか。クソッ、ちょっとおもしろそうだぞ。限りなく『こち亀』臭がするが。そうか、そう考えると『こち亀』の根底にあるのは『男はつらいよ』だったのか。麗子=さくらポジなんだな……。

『あぶない刑事 VS 踊る大捜査線』とかも見てみたい。室井さんと木の実ナナが協力して後方支援とか超見たい。その他で対抗できるのは多分、時代劇の名優対決くらいだろう。『暴れん坊将軍 VS 遠山の金さん』くらいのことをやらないと、ジャパン的には分が悪い。暴れん坊将軍が殺陣でフルボッコした後に、お白州で金さんが裁きを言い渡すとか。悪人が「あっ、お前はあのときの……!」を2回も味わうという悪魔のコンボ。人間不信になるよな、きっと。

 あと、よく考えたら、俺の大好きな時代劇『八百八町夢日記』は、実在の凄腕奉行と鼠小僧が手を組むという、ある意味、ドリームマッチだったのかもしれない……。

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 ……というわけで話が逸れたが『貞子 VS 伽椰子』。何せ『リング』と『呪怨』の呪いを同時進行する必要があるので、駆け足な展開になるんじゃないかなーと危惧していたのだが、中盤までは予想以上におもしろく、「あれっ、まさかの名作……?」とワクワク。「適当に作った感」がなく、『リング』『呪怨』それぞれのシリーズに対するリスペクトが完璧。双方のシリーズ新作ともいえるような展開には正直、引き込まれた。ただ、話の展開速度上、呪いのビデオの猶予期間が7日から2日に変更されていたのは苦笑い。

 しかし、想像を絶する投げっぱなしからの聖飢魔Ⅱによるエンディングテーマスタートで、悪い意味で度肝を抜かれた。ここまで何も解決しないで突然終わるのもスゴい。「おもしろくなってきた! さあ、ここからどうする!」というところで唐突に終わるので、感想としてはやっぱり「えー……」になってしまう。超惜しい作品。

 このテの対決モノは、「双方の得意とする武器が、相手にどういう形で通用するか?」という、ファンの妄想する戦闘能力格付けチェック的な部分こそ焦点なんじゃないかと思うが、貞子が俊雄を髪の毛でテレビの中に引きずり込んだ!→しばらく経ってから普通にそのへんに俊雄出現、みたいな、「あれ? 結局ノーダメージだったの?」という肩透かしの応酬。バトルが進んでいる感じが全然ない。

 海外のホラーは物理的な攻撃、一般人が対抗できない圧倒的殺人力による恐怖が多いのに対し、日本のホラーは「呪い殺す」という、非常に攻撃力が表現しづらい抽象的なもの。ここがネックになって、お互いの戦闘能力を満足に表現できなかったのではと感じる。

 この映画を楽しみに観るような人は「貞子と伽椰子の直接対決」を待ち望んでいると思うのだが、そういったシーンは終盤の 10 分程度。前述のノーダメージムードと相まって、物足りなさを感じる人は多いように思う。ただ、貞子も伽椰子も実体を持たない幽霊のようなものだと思っていたので、伽椰子が貞子を床に押さえつけたときにゴンッて音がしてたのは、ちょっと笑ってしまった。

 伽椰子と俊雄はそれなりに物理攻撃も強い感じだが、貞子は「超能力による心臓停止」という、「伽椰子と俊雄に効くんかそれ」という攻撃しか持たないためか、『貞子3D』から追加された “髪の毛による攻撃” が多い。元々、貞子の髪の毛はホラーとしての記号のひとつであって、攻撃手段じゃなかったんだけどね……。『貞子3D』のときはなんかもう新手の歌舞伎妖怪みたいになってたし。

 しかし、伽椰子と俊雄は家ありきの怨霊、貞子はテレビありきの怨霊なので、その点をもっとフィーチャーしてほしかった。お互いの弱点に気付き、そこを突く、みたいな。お互いが「どう攻めるか」をもっと見たかった気はする。……でも、いざ出現したらもう貞子はテレビ関係なく動けるし、俊雄は家の外の扉付近まで出て来てたしなぁ。両者共、弱点があるようでないのかもしれん。貞子はギロ目ショットも使ってたし、なんだかんだで、短時間ながらもお互い手の内はフルに使っていたのだろうか……。

 弱点といえば、貞子出現後に霊媒師が「貞子の目を見るな!」と助言してたのは、ちょっとおもしろかった。呪いのビデオを見て生還した人間は貞子とは会わずに済んでいるはずなので、地味に初の貞子対策助言者。貞子は超能力で心臓麻痺を起こさせるはずなので、目を見ようが見まいが関係ないはずなんだけど、なんか主役の女の子は目をつむって回避してたし、「目を見なければセーフ」とかいう新しいルールが追加されたんだろうか。貞子だけ弱点が増えていく。

 この映画、「企画として聞いた瞬間は『おもしろそう!』ってなるけど、冷静に各要素を検証していくと『あ、これ、やっちゃダメなやつだ』という点がどんどん判明していく」という、厄介なケース。どちら側も「死という概念がない怨霊」だから、どんなに物理的な攻撃を繰り出そうが、呪い力で何らかのダメージを与えようが、いくらやったところでどっちも死ななくて決着つかんよねという。

 それでもやはり、アクションシーンにもう少し工夫をして、貞子と伽椰子の呪いバトルを「魅せる」ことができていれば、海外でも人気を博したんじゃないだろうかと思えるだけに残念。海外にはいないタイプのキャラだし、外国人こういうの好きそう。気が早いけど、ハリウッドリメイクしてほしい。もう、貞子が髪の毛の隙間に見える目からレーザー出していいよ。

 そういや後半、デキる霊媒師コンビとして「経蔵」と「珠緒」という2人が出てくるのだが、なんかスゴい既視感があるんだよな……。何だろう。この既視感の元になってる記憶のほうを知りたい。大昔の霊媒系マンガか何かだと思うんだけど。昭和の香り。この1作で消費するにはもったいないキャラクター性を感じただけに、この映画の投げっぱなし結末は残念としか言いようがない。

『リング』での貞子の動きは不気味そのもので、あの歩き方は個人的に芸術だと思っているのだが、あれと比べると本作の貞子はスタイリッシュで、どこか女らしさすら感じさせるのが印象的だった。テレビから出てきて立ち上がったとき、顔が見えないけど美人に見えるというか。

『リング』の最後に出てくる貞子も女性が演じていたのだが、あっちはどこか女らしさを捨てた、“怨霊らしさ” があって、だからこそ余計に怖かった。「具体的に、何がどう違うのだろう」と『リング』を観返してしまったが、『リング』の貞子は女性にしてはかなり長身の演者であることや、肩幅が結構あることなどが大きいかもしれない。あの「肩から来る」感じの歩き方は本作でも健在。

 あと、本作の貞子は両手を体の前で揃えるポーズが多いが、『リング』の貞子は割と普通に立っているだけだったりする。↓の宣伝動画に至っては、立ち姿が内股ということもあって、もはや怖いというより可愛い。

 この『貞子 VS 伽椰子』は小説版も出ており、しかも小学館ジュニア文庫版角川ホラー文庫版で話も微妙に違うらしい。『リング』大好きっ子の俺は小説版はおろか漫画版すら網羅したほどなので、ぜひ読んでみたくはあるのだが、よりによってなぜ2種類も出すのか……。小学館ジュニア版は映画版準拠、角川ホラー版は結構なオリジナル展開らしい。うーん……両方読んでみたいが、今の俺は1冊読むのに多大な時間を要する首の持ち主……。

 それはそうと U-NEXT の無料トライアルは、31 日以内に解約手続きをすれば一切お金はかからない。せっかくなので期間中にフルに利用してから解約しようとは思っているが、あと何日か忘れないようにせねば……。「あと何日か気にしながらビクビクする」って、こんなところにまさかの貞子テイスト。

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