« Xbox360『円卓の生徒』体験版レビュー | メイン | DS『逆転検事2』レビュー »

2011年2月 5日

Xbox360 Live Arcade『Hydrophobia』レビュー

P

 2010 年 9 月配信の Xbox LIVE アーケード(ダウンロード専用)ゲーム。価格は通常、800 マイクロソフトポイント(日本円換算で 1,200 円程度)だが、水浸しスペシャルという謎の安売りセールで半額の 400 ポイント(日本円換算で 600 円程度)になっていたので購入。

 タイタニックの数倍の大きさを誇る、航海する海上都市・クイーン オブ ザ ワールド号。その 10 周年を記念する大祭の日、都市がテロリストに占拠されてしまう。あちこちで発生する浸水、火災。海上都市のシステムエンジニアでもあり、水恐怖症でもあるケイトは、エンジニア仲間に通信で状況を知らせてもらいながら、この危機に立ち向かう……といった感じのストーリー。

 “水” をテーマにしたアクションで、銃撃戦の部分は TPS。扉や隔壁が壊れて水が流れ込んできて、つい今さっきまで床だったところが水中の底深くに……ということも珍しくない。そういった注水と排水を繰り返し、道中のテロリストを TPS で蹴散らしながら目的地を目指す。

01

02

03
動画で観たり、実際にゲームをやってみるのが一番なのだが……単に水の表現がスゴいのではなく、動く水、うねる水、生きている水の動きがスゴい。流体力学をゲームに取り入れた世界初の「流体力学エンジン」で動いているそうな


 テーマにしているだけあって水の表現はサスガなのだが、それ以外の部分が残念ながら二流どまり。アクション部分や水以外のグラフィックは一世代前のレベルで、特筆する点はない。
 TPS 部分に関しても大して優れているわけではないのだが、場所柄、水中での戦闘が多く発生するため、「水中での撃ち合い」という珍しいシチュエーションを味わうことができる。

水中戦
ケイトの武器は「ソニック弾」という弾を使える銃。弾数無限で水中でも撃てるが、撃つ前に若干のチャージタイムが必要。でも敵も普通に撃ってくるし、敵はチャージタイムがない気がするんだが……


 このゲームの最も優れている点は「水に起因する緊張感の持続」。水に足をとられて、思うように動けない。でも敵がすぐ後ろに迫っているから、早く物陰に隠れないと……とか、ちょっとずつ水かさが増えてきてるから早く突破口開かないと天井まで水が来て溺死してしまう……とか、潜水してバルブを開いてこないといけない。でも早く水面に出ないと息が……とか。

 大量の水を前にした人間の脳が発する危険信号みたいなものを常に感じながらのプレイで、冷静に見ればゲームの流れは単調なのだが、この緊張感のおかげで、先へ先へと進めるモチベーションが途切れずに繋がっている。普通のゲームにある「時間制限イベント」を連続でゲームに組み込んだ感じ。こう聞くと「落ち着かなさそうだな……」と思われるかもしれないが、慣れてくると「あ、ここはノンビリしてても溺れることはなさそうだ」と、ウロウロすることもできる。エマージェンシーコールは鳴り響いてるけど。

 ただ、肝心のゲーム内容は目的地を探すおつかい状態。常にマーカーで次の目的地が示されるので分かりやすいが、自分がどういう目的でそこへ向かっているのか、現在位置はだいたいどの辺なのかといったことが非常に把握しづらい。マップはいつでも確認できるし、見下ろし型と 3D 型の切り替えもできる優秀なマップ機能なのだが……。

 最もダメな点は、あまりにも唐突な終わり方。というか終わってないし、何も解決してない。全 10 章の3章くらいが終わった感じ。どうやら続編ありきで作られたものだったらしく、これは完全に予想外だった。タイトルに「エピソード1」とか、つけておいてくれよ……。

 クリア後に「チャレンジルーム」という、テロリストとの戦闘だけを時間制限ありで楽しむモードがプレイ可能になるのだが、このモードで唐突にケイトが水を操る特殊能力に目覚めている。続編をちゃんと作っているとしたら、以後、本編でもこの能力を使っていくのだろうけど、なんだかブツ切り本編といい、色々と急いで形にして出しちゃいました的なニオイを感じるゲーム。まだ寝かせといて、じっくりと作り込む段階じゃなかったのかなあという印象を受けた。世界観や導入部は面白いだけに、残念すぎる。

 タイトルにもなっている『Hydrophobia』とは、水恐怖症という意味。主人公のケイトが水恐怖症であること、そしてプレイヤーもまた、このゲームを通じて水の恐怖を思い知る……という意味で優れたタイトル名だとは思うが、その前に俺が未完結ゲーム恐怖症になりそうだよ。

adbar
adbar
adbar
adbar