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2011年2月22日

フォース・カインド

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 実際にあった事件と、その記録映像を映画内で使用するというノンフィクション風味のフィクション。タイトルの『フォース・カインド』とは “第四種接近遭遇” の意味で、宇宙人による拉致を指す。宇宙人とかオーパーツとか、もう大好き。

 精神分析医・タイラー博士は、ここのところ睡眠障害を訴える患者が複数出てきていることに気付く。その全員が「夜、フクロウを見た」と証言しており、タイラー博士は催眠療法によって、夜の間に患者の身に何が起こっていたのかを探る……という感じの内容。

 眠っているはずの時間帯に、タイラー博士の絶叫と謎の言語がボイスレコーダーに録音されていて、その言語を解明していったら古代シュメール語であることが判明する辺りなんかは宇宙人大好きっ子には結構たまらないんじゃないかと思うが、肝心の事件が今ひとつ。何かを解決したわけでもなく、結果的に宇宙人の1人勝ち状態なので、不完全燃焼的な後味が残る。「宇宙人って得体が知れなくて怖いよね」で終わっちゃってる。

 このへんの話の弱さは「ノンフィクションを装う」にあたってはリアルで良かったのかもしれないけど、今の時代、フィクションかノンフィクションかなんてすぐバレるわけで。wiki によるとこの作品、映画の宣伝のためにニュース記事の偽造まで行っていたらしく、後でアラスカ記者クラブに2万ドルの和解金を支払ったとか。ア、アホか。そのことを報道すんな。いろんな意味で台無しだ。

 以上のことから、いろんな意味で残念な映画に分類されてしまうことになるかなという気がするけど、決して友好的とは言い難い宇宙人の描写と、“姿” を出さない演出、“フクロウを見た気がする” というキーワード、拉致されて何かを埋め込まれたという人たちに催眠療法で無理やり記憶を取り戻させた後の末路などはゾゾッとさせていて上手い。

 でも一番怖いのが、“実際の映像” のほうのタイラー博士役の人の顔。劇中では悲惨な目に遭ってる(ことになってる)人で、その壮絶な体験や後の疲弊っぷりを表すためにこういう顔の人を選んだのか……いや、ある程度は特殊メイクだと信じたいけど、西川きよし顔負けの目玉の大きさで、映像のせいで異様に色白に見えて、ホントに怖い。Amazon のページ内に掲載されてるその人の写真にはモザイクがかかっていて、笑ってしまった。ひどい。これ、ただのインタビュー受けてるときの写真なのに、ショッキング映像みたいに扱われてる。

 映画としてのタイラー博士役はミラ・ジョヴォヴィッチ。この人は半裸でベヨネッタみたいな戦いを繰り広げるイメージがあるので、特にセクシーシーンもないこの役は、ひたすら地味だった。「私は、こ、こういう役もできるんだからね!」という、女優としての幅を広げるために受けた仕事なのかもしれないが、観ている側としてはもうミラ・ジョヴォヴィッチの無駄遣いとしか言いようがない。

 もっとこう……宇宙人にさらわれて、宇宙船内でシャツのボタンを引きちぎられて胸が露になるも、悲鳴ひとつあげずにキッと宇宙人を睨みつけ、さらに下も脱がされるも、秀逸なカメラワークで際どい部分だけは見えないハイキックで反撃。宇宙船内の一室にある地球の物コレクション部屋みたいなところから日本刀を奪い、ストップモーション多用して宇宙人を片っ端から真っ二つ。飛び散る緑色の血。「さあ、脱出するわよ」と、同じくさらわれてきた相棒の男の拘束を解いてる最中に、

「HEY、ミラ、その……さっきからボクの下半身がキャトルミューティレーションされそうだ……」
「? どういうこと? 奴らに何かされたの?」
「いや、奴らじゃなくてキミだよ……そこにボクの上着があるから、それを着たほうがいいんじゃないかな」
「!(全裸に近い格好だったことに気付いて両手で体を隠しながら) ど、どこを見てたの!」
「どこって……(指で胸を指しながら)キミの UFO と……(下半身を指しながら)エリア51、かな」
「バチーン(平手打ちで暗転)」

 次回作は、そんな感じでお願いします。

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