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2006年4月29日

かまいたちの夜、三度

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 『かまいたちの夜×3(トリプル) 三日月島事件の真相』が発表されました。

 個人的に、前作『かまいたちの夜2』は、チュンソフト作品群の中で最大の失敗作だと思っています。以前に書いた『かまいたちの夜2』のレビューを読んでいただくと分かりますが、以下に、その理由をカンタンに述べてみます。

 『2』のメインシナリオの執筆は田中啓文・牧野修の両氏。初代を執筆した我孫子武丸氏は全体の監修と、おまけシナリオを一編、担当された様子。田中・牧野両氏の本来の持ち味はミステリーというよりもホラー・グロテスク系であり、本格ミステリーを本業とする我孫子氏とは、かなりジャンル・文体が異なります。これが災いしてか、初代『かまいたち』の持つ親しみやすさ、我孫子イズムが失われ、前作のキャラクターを使って田中・牧野ワールドをミラクル全開パワーでお届けしちゃいました的な出来になってしまい、プレイヤーの大多数から批判を受けました。

 それだけならまだしも、全シナリオを見た証でもある「金のしおり」の後に、まだ何かあるような事を匂わせる演出も仕込んでいたため、プレイヤーの間では「まだ、真のエンディングが隠されているのではないか」とネット上で長期間に渡って論議されていましたが、結局何もありませんでした。

 これだけ「まだ何かあるのでは」と思わせた一因として、初代『かまいたち』最大の “トリック” とも言える「あの仕掛け」があったと思います。雑誌媒体では最後までこの仕掛けについて一切触れなかったこともあり、この隠し要素の存在すら知らなかった人も多かったのです。これがあっただけに、『2』にはそれを上回る「何か」があるに違いない、まだそれを見つけられた者がいないだけに違いない───と混乱を招く結果になってしまったと思われます。

 同時期にテレビ放映されたドラマ『かまいたちの夜』の方も結構アレな出来で、『2』の発売と同時に『かまいたち』を盛り上げようとするチュンソフト側の思惑とは裏腹に、拍手喝采を受けてしかるべき名作『かまいたち』の続編は散々な結果に終わったのでした。

 しかし今回発表された『3』の概要を見ると、これまた懲りずに期待せざるを得ません。
 まず全面的に我孫子氏の執筆に戻ったこと。そして『2』のみならず初代『1』からまとめて『1』『2』から続く三部作の完結編という位置づけになっていること。『1』も『2』もそれなりに完結はしていたと思うのですが、サブタイトルの「三日月島事件の真相」、そして初代にまで遡って「その真相」を明らかにする、という事は、我孫子氏なりに『2』のシナリオを料理し、1、2、3と一貫性を持たせるためでしょうか。「えっ、『2』を引きずるの? 舞台一新、完全新作でやり直してもらった方が……」という気がしないでもないですが、そのへんは我孫子氏の意地もあるのかもしれません。我孫子氏の手腕に期待がかかります。

 実は『かまいたちの夜』は、俺が推理小説の類を本格的に読むキッカケになったゲームでもあります。『かまいたちの夜』本編の事件は、ミステリー好きから見れば恐ろしく入門的な作りですが、それまで推理モノをマジメに読んだことのない人間にとっては、充分に面白いものでした。そして、本編が終わった後に出現するシナリオの数々。舞台と登場人物をそのままに、全く趣向の違うシナリオがどんどん展開されていく様は小説では表現できない、まさしく「ゲーム」であり、サウンドノベルというジャンルを確立させた立役者でした。

 それから、おそらくは我孫子氏の思惑通りというか、俺は氏の著作を『8の殺人』から順番に読んでいき、我孫子氏の作品を全て読み終えると、次は同じ講談社文庫の中の、別の作家の作品を……というように、どんどんハマッていったわけです。

 そんな経緯もあるものですから、『かまいたちの夜』には思い入れがあります。スーファミで初プレイしたカセットでは合計 250 回を超えるプレイ回数を記録しましたが、ピンク止まりで、金のしおりが出現せず。お金に困って一度中古に売ったものの、またやりたくなって「今度こそ」と意気込んで購入するも、金は出現せず。後に、ようやく例の仕掛けを知ってシナリオ全制覇するものの、どこかで選んでない選択肢があったらしく、金にはならず挫折(雪中迷路編のどうでもいい選択肢だと思われる)。
 後年、PS 版の発売と同時に購入し、チャートシステムが入っていたのでラクに金のしおりが出現。スーファミ時のキャンペーンで金のしおりにした人限定でもらえた CD「ちょっとエッチなかまいたちの夜」も収録されており、PS 版でようやく『かまいたち』をしゃぶり尽くすことに。さらに後年、別段何の追加要素もない GBA 版まで購入。これまた金のしおりまでプレイ。お前はどこの中毒者かと。

 好きな本は結末が分かっていても何度も読んでしまうものですが、『かまいたち』はスーファミ版から何度読んだか分かりません。これだけの再読に耐えうるのは、やはり一つ一つのセンテンスをとってみても非常に練られたものであり、読む時のリズム、テンポを全て計算し尽くして書かれていたからだと感じます。

 気になる『3』の発売は7月27日と案外早めな印象ですが、久々に発売が待ち遠しいソフトとなりそうです。あと、我孫子氏は必ず「ちょっとエッチ」要素を入れてくるので、『2』の官能編を上回るエロスにも期待。『2』は、みどりさんの尻と乳揺れだけは神だった。

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| コメント (2)

コメント

「かまいたちの夜」は自分も大好きな作品で、普段推理小説など全く読んでいなかった自分には、十分楽しめる内容でした。 中古で購入したのですが、確か当時はちょうど真冬の時期に毎晩、夜中に少しづつ進めていた記憶がありますね。 怖かったです。

で、一通りクリアしたと思って放ったらかしていたところ、1年くらいたってから、ふと“おまけシナリオ”の存在を教えてもらい、改めてプレイしなおしたという。 そして、その内容・ボリュームの多さから、この作品のスタッフのサービス精神の旺盛さを感じたものです。 当時はまだPCを持っておらず、当然ネットの環境もなく、情報を入手する術が皆無でした。 今でも覚えてます。 初めて友人にネットを体験させてもらった時に、自分が試した検索ワード。 “かまいたちの夜”。

「かま2」は発売直後に4980円だか4800円だかで購入。 一応、フローチャートを全部埋めて完全クリアーした状態で4500円で売却してしまったという…。 途中で投げ出すことはなかったとは言え、満足度はかなり低かったですね。 チャートを埋める“作業”になってしまったような感じ。 内容的には、“サスペンス”から、“ホラー”・“スプラッタ”になってしまったという印象。 怖いというより、不快・気持ち悪いだけ。 ちなみに、SFC版の「かま夜」の方はいまだに所有。

ちなみに、自分もGBA版もプレイ。 やっぱり面白かった。 そして何より、1で使われている音楽が好き。 昔、ニュースステーション(汚職事件か何か)で、犯人推理のシーンでの曲が流れてきた時は驚きました。

「かま3」も一応、いまだに購入予定リストに入ってます。 レビューも読ませていただきました。 出会うタイミングと希望額が合えば、購入し、実際に自分でプレイして判断してみようと思います。

余談ですが、本日、たまたま立ち寄った店で、購入リストに入れていたソフトの1つに出会えたので購入しました。 FF12のinternational版。 FF12は未プレイで買うならint版と決めてました。 2280円の30%引き。 いい買い物でした。 ただ、PS2作品は、買うだけ買ってプレイしていない作品が他にもいっぱい…。 MGS3にKHに金八に…。 なんせ、数年前にPS2本体を売ってしまったもので。 で、更に、世間ではFF13というこの時期にFF12購入という…。 

そりゃそうと、FF13の購入&プレイ予定はないのですか?


投稿者 toshi : 2009年12月19日 00:02

うおっ、スゲェ長文ありがとうございます。
しかも2週間くらい前だっ

>かまいたちの夜

前代未聞の仕掛けもスゴかったですけど、
とにかく全てが丁寧に作られてるゲームでしたね。
しおりに表示される数字が250回を越えたのは覚えてるんですけど、
それでも金のしおりは出なかった……。

>FF12のinternational版

やり応えは抜群なんですが、積んだままという……。
システム的には最高峰のやり込み度と面白さだと思いますよ。
俺、この戦争が終わったら全員モンクでやるんだ……。

>そりゃそうと、FF13の購入&プレイ予定はないのですか?

先日、我慢できずに本体ごと買ってしまいました。
ドラクエ9の時はネットの評判が実際のゲームのデキより
ひどすぎましたけど、今回は、おおむね評判通りだと思っていいです。
開発期間の長さや映像のクオリティのスゴさを考えると、
やはり「ゲーム」としてこれはどうなのか、という思いは
どうしても出てきますね。

一応全部クリアしてからレビュー書こうと思っているのですが、
ちょっと終盤で手こずってます。
なるべく早いうちにレビュー書けたらなと思います。


投稿者 夢崎 : 2010年1月 1日 06:38

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