2002年8月15日
「8月15日……今日じゃないか。」『かまいたちの夜2』レビュー
ようやく少し時間が空きましたので、書こう書こうと思っていた『かまいたちの夜2~監獄島のわらべ唄~』のレビューをば。買おうかどうか迷っている人は参考に、もうプレイ済みの方は自分の感想との相違を。とりあえずネタバレはしてないので安心してお読み下さい。
まず、今回は発売前から各界の著名人を多数起用したことをアピールし、チュンソフトらしくない宣伝攻勢で半ば無理矢理にでも盛り上げようとする勢いが感じられ、それが逆に若干不安だったのですが、それはある意味、当たっていました。
■不安要素その1「今回のシナリオは我孫子武丸氏ではない」。
メイン・サブともに田中啓文・牧野修両氏によるもので、我孫子氏はサブシナリオの1つ「わらび唄」編と、
完全なオマケである「ラブテスター編」のみの執筆。ここで問題なのは、田中・牧野両氏は小説家ではあるものの、ミステリを主に書いているわけではない、ということと、我孫子氏ほどゲームの事は分かっていない、ということ。我孫子氏はSFC版「かまいたちの夜」のオファーを受ける以前から『弟切草』をプレイしていたり、『不思議のダンジョン』シリーズの新作は必ずやり込んでいるほどのヘビーゲーマー。それ以前にも、アドベンチャーゲームを相当プレイされていた様子で、「テキスト主体のゲーム」の捉え方はおそらく他のどの小説家よりも優れていたと思われます。(全ハードを所持しているという噂も。)
そういったこともあり、SFC版『かまいたちの夜』は出色の出来で、テキストの読みやすさや舞台の分かりやすさも手伝って推理小説どころか本自体を普段あまり読まない層をも引き込み、テキストを読んでいくというゲームの性質を考えると異例の売上で、チュンソフトの名を一気に広めました。これは、メインシナリオが面白かったというだけではなく、舞台はそのままにキャラの役割がガラッと変わるサブシナリオや、発売から数年経っても気付いた人が少なかった驚愕の隠しシナリオ出現法などの、小説では出来ない手法を多数取り入れた結果、充分に「ゲーム」していたからだと思われます。
しかし今作はビジュアル面は相当に進化したものの、「テキストを読んでいくゲームである」ということへの配慮や、サブシナリオが異色すぎて一般性に欠けている感が強く、どうにも前作のクオリティに及んでいません。前作をやっておらず、今作で初めて『かまいたち』をプレイする方も多数おられると思うのですが、前作からの登場人物の引継ぎもあって、新規プレイヤーには受け入れられ難い作り。「かまいたちの夜」というネームバリューを利用したかったのでしょうが、これは逆に前作のファンの期待を裏切りつつ、新規プレイヤーにはあまり受け入れられなさそう、という踏んだり蹴ったりの結果になった気がします。
■不安要素その2「必要以上の商品展開」。
発売前から、前作の完全攻略本や今作のファンブック等の書籍、GBA版『かまいたちの夜』の発売、携帯で遊べる『かまいたちの夜』、どこに需要があったのか疑問なInternet版『かまいたちの夜』、そしてドラマ化、などなど、これでもかと『かまいたち』関連を強化。チュンソフトは元々「地味だが良いゲームを作るメーカー」としてコア層のファンが多かっただけに、この過剰とも言える商品展開は、とにかくライトユーザーに対して「こっちを向いてくれ」というオーラがビンビン来ており、本来のチュンソフトのカラーではない行動に不安を覚えずにはいられません。
そしてGBA版・Internet版に特に何の追加要素も無いことが判明したことによる「とりあえず発売しときました」感や、ドラマ版のどうしようも無い出来を目の前にし、発売前の盛り下がりは絶頂を迎えます。フォローしておくと、GBA版の出来は良く、初めて『かまいたち』をプレイされる方には、このGBA版をオススメします。携帯機とは思えないサウンドで、悲鳴もバッチリ。ただ、新規追加要素は皆無なので、『かまいたち』経験者に訴えるモノが無かったのは事実。買いましたけど。
あと、とどめに、悪かった点と良かった点を羅列してみます。最初に、悪かった点。
上の方でも書きましたが、メイン以外のシナリオの、あまりな特殊性。クリア後、とても「良かった」と言う人がいるとは思えない後味の悪さと、全体のバッドエンディングの比率の高さ、グッドエンディングですらバッドエンディングなものが多く、読後のカタルシスを得られるようなものがあまりにも少なかった点が今作最大の弱み。あと、ビジュアル面以外に目新しいことをしていない、言いかえれば「ゲーム」としての部分をおろそかにしている感が強く、サブシナリオにしても、キャラと舞台を使って作者が書きたいものを ただ書いただけ、というような。ユーザーに読んでもらった時、果たしてこれは楽しいか? ということまで考えていない気も。前作『かまいたちの夜』は我孫子氏の作風だからこそ成功した、と思わざるを得ません。
また、ビジュアル面は大幅に進化したものの、オープニングムービーの気になる映像の数々がゲーム内容とほとんど関係が無いというのもちょっと、どうかと。これはオープニングムービーの制作部隊が完全に別働してしまっているためですが、おそらく製作者はいくつかのキーワードとだいたいのイメージを伝えられて、そのイメージを映像化しただけと思われます。これはミュージシャンのプロモーションビデオ等でよく使われそうな手法(歌詞からいくつかのキーワードを取って、それをなんとなく映像化する)ですが、少なくともゲームのオープニングムービーはそれじゃダメだろう、と思ってしまうのです。
次に、メインであるミステリシナリオのパンチ力の弱さ。前作でも色々と突っ込まれてはいましたが、今回、メイントリックはともかく事件そのものが偶然完成した感が強く、イマイチ計画性に欠けます。トリックの核について触れる部分なので詳しくは書けませんが、実際にあれだけの舞台が揃っていたとしても実現はおそらく不可能で、前作は、あのシチュエーションが整えば実際に犯行が可能だっただけに、シナリオの完成度にも若干疑問を覚えます。すでにプレイされた方の確認用に、どこがマズかったかをこちらに書いておきました。これはネタバレを含みますので、見たくない人は回避して下さい。プレイする予定が無いので別に構わない、という人は堂々とクリック。
次に、良かった点。シルエットに凹凸を表現させ、それでいて顔などの細かいパーツは表現しない、シルエットの正常進化。これは非常に素晴らしく、どのくらい素晴らしかったかと言うと、

© CHUN SOFT
というわけです。
基本的にビジュアル面は誉めるべき点が多く、各シナリオでその成果をいかんなく発揮しています。今回のウリの1つである「ループムービー」(船に打ち寄せる波など、常に景色が動き続ける)はもちろん、シルエットの多彩な動き。なんと言っても官能篇の、みどりさんの腰の動きは必見。

© CHUN SOFT
いやホント動画でお見せできないのが心残りですが、壁に手をついて尻をこちらに向けているみどりさんが、これでもかと腰をローリングさせる様は圧巻。正直、シルエットというソニーチェックの抜け穴を使ったコンシューマにおける新しいエロの形を見た気がします。その他、髪をかき上げる際に乳揺れが起きたりと、チュンソフトの、みどりさんへの歪んだ愛情が垣間見えます。
さて、いかがだったでしょうか。テキストを読むゲームだけに、この話がどうだったか、とかの内容に触れることをお話しできないのが残念ですが、気持ち悪いものや、虫・蜘蛛、救われない話などが好きな方は楽しめそうなシナリオが盛りだくさん。ターゲットがコアすぎる気もしますが、とりあえず前作が好きだった人は別の意味で一見の価値アリ、というか『かまいたち』未経験者は絶対、前作からやって下さい。今作を初めてプレイして、このゲームが超お気に入りになる、ということは、すごい低確率な気がしますので。
最後に、気になる点を1つだけ。前作の最後の「隠し」を考えると、今作にもそれ以上の隠しがあると考えてしまうものですが、現時点で、あの巨大掲示板2ちゃんねるをもってしても何も判明しておらず、「隠しは何も無い派」も出てきています。これまでに比べ、「金の栞」に到達するまでがかなり簡単だったことと、金の栞出現後に現れる「とあるモノ」を見た後では、どう考えても何かがある気がしてならないのですが……。というかこれで何もなかったらチュンソフトの評判、だいぶ下がるような気が。もし何かがあったとして、それが今回のレビューを覆す凄まじい内容であった場合は、改めてレビューし直したいと思います。

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