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2001年3月 2日

吹雪の山荘は好きですか

表紙

 倉知 淳「星降り山荘の殺人」(講談社文庫)。まず「山荘」という文字が目を引きつけた。数ある推理小説のパターンの中でも「山荘」モノ、特に「吹雪の山荘」モノと言えばもう古典中の古典で、あまりにもアレなので最近は見ない舞台設定である。本を手に取り、裏返して見る。講談社文庫は本の裏にカンタンなあらすじが書いてあるのだ。

雪に閉ざされた山荘。ある夜、そこに集められた UFO 研究家、スターウォッチャー、売れっ子女流作家など、一癖も二癖もある人物たち。交通が遮断され、電気も電話も通じていない陸の孤島で次々と起きる連続殺人事件……。果たして犯人は誰なのか!? あくまでもフェアに、読者に真っ向勝負を挑む本格長編推理。」

 正直、驚いた。モロ「吹雪の山荘」モノである(なお、上の太字表記の部分は個人的にビビッときたところ)。

 使い古された舞台設定だが、俺は「吹雪の山荘」が大好きだ。使い古されているだけに作者の技量が問われる。あまりにもモロだったので、ほとんど条件反射でレジに持っていった。

 前置きが長くなったが、個人的にこの本は久々のヒットだった。例によって推理小説なので、どんな話で、こういうところが……と大っぴらに語れないのがツラいところだが、完全に後ろからナイフを刺された感じで、いざ結末を読んだ時は思わず顔がニヤけた。そうだ、なんでこんなことに気付かなかったんだ――。

 ひとつ、書けるとすれば、この本を読むタイミング。推理小説の熟練者(変な表現だが)ではダメだ。多分そこまで衝撃を受けない。全くの初心者でもダメだ。この衝撃の意味が 100 %伝わらない。初心者 ← 1 2 3 4 5 → 熟練者とすると、2か3の人が望ましい。いくつか推理小説を読んで、その面白さをある程度理解し始めた時に読んでみてほしい。車の運転と同じで、ちょっと慣れた時が一番アブナイ、ってヤツだ。

 真相を読める人もいるとは思う。読んでいない推理小説は無いというほどのマニアは世にはゴロゴロいるものだ。だが、こういう本に出会った時、つくづく自分が真相を読めなくて良かった、と思ってしまう。推理小説では騙されることが快感だ。いや、そうでない人もいるだろうし、騙され方によっては不愉快な読後感を残すものもあるが、基本的には騙されたい。気分は「お願い、最後まで上手く騙して……」である。

 全ての推理小説に共通の犯人がいるとすれば、それは作者である。そして、自分がその犯人に見事に殺された時が、俺の至福のひとときなのだ。

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