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2000年7月14日

ファイナルファンタジーIX

パッケージ

 前評判ほどではなかったんじゃないか、というのが素直な感想。確かにグラフィックは綺麗になる一方だし、ムービーも凄い。だけど、RPG としての何かが足りない気がする。

 ストーリーがこう来て、キャラクターがこう動いたなら、もっと感動できただろうに……システムも、もっとこうなら長く遊べただろうに……と、プレイしていて思うことしばしば。すごいんだけど、すごくない。ほとんどが想像の範囲内だったとでも言えばいいのだろうか。あまりにも普通すぎた印象。

 感動とは “”不意打ち” のようなもので、キャラクターから予想していなかった言葉が飛び出したとき、こういう展開なら次はこういう感じかな、という予想を綺麗に裏切った時に発生しやすいもの。『IX』では、そういった「えっ、そう来る?」みたいなことが全くなかった。何か起きても「あ、ふーん、そうなんだ、なるほど」の連続。起伏に乏しい平行線が続く。ゲーム自体は先へ進めたい気持ちはあるものの、進める過程に別段ハラハラドキドキはなく。なんとなく話が進み、とりあえずアビリティを覚えたいので戦闘する。そしたらいつの間にかディスク4枚目。そんな感じ。

 こう書くとつまらなさそうに見えるけど、本当につまらない RPG は最後までやる気が起きない。どんなにエンディングが凄いと聞いても、途中で嫌になったらエンディングも全然気にならない。その点、『IX』はそんなこと一度も思わなかったし、むしろ何の疑問もなくエンディングまで到達したことは凄いことなのかもしれない。

■演出面
 最も印象に残っているシーンは、冒頭とエンディング。ストーリーへの導入は良く、いつの間にか引き込まれていた感じ。エンディングは割と王道だが、あれで良かったと思う。

 ただ、途中に、もうちょっと仲間がカッコ良く見えるエピソードが欲しかった。盗賊団・タンタラス団の「イエッサー!」みたいな決めポーズがあるけど、「あー、絶対ここであのポーズくるわ。これは涙腺ちょっとくるわ」と思ってたら来なかったシーンがあったので、肩透かし感をくらった場面もあった。

■音楽面
 RPG における BGM ってのはかなり重要で、なんてことないストーリーを感動的に見せてしまう魔力すら持っているものだけど、『IX』では「おっ、この曲いいな」と思う曲がなかった。いや、音楽に関しては人の好みそれぞれなのでなんとも言えないけど、メロディが頭に残ってる曲が1つもなかった。さすがに何回も聞いた戦闘の音楽は耳に残ってるけど、特に好きというわけじゃないし、嫌でも頭に残ったという感じ。

■キャラクター
 リアル傾向にあった最近の FF から “原点回帰” を謳い、頭身を下げた『IX』。しかし、デフォルメするならドット絵の頃の FF ぐらいまで戻るか、この頭身が不自然じゃないアニメ調にするかしないとダメな気がする。「変に頭身を下げたリアル CG」というのは、どうもシックリこない。頭身が下がった割にストーリーは重いし、昔の FF にあったコメディ的なノリがないので、ビジュアルとストーリーのギャップも感じた。剣と魔法のファンタジーな世界観はそのままでリアル頭身にしたほうがウケは良かったような気がする。

 頭身とは別に、仲間キャラクターも歴代 FF の中ではカナリ濃い口。主人公からしてシッポ生えてるし、RPG において重要な「カッコイイ男キャラ」と「美人な女キャラ」がいない。甲冑姿の小太り銭形警部、弱気な黒魔道士、ドレッドヘアの男、パロムとポロムの片割れみたいな女の子、赤いスナフキンみたいなネズミ女竜騎士。人かどうかすら怪しい大食い。正直、濃すぎる。

 唯一まともな外見はヒロインだけだが、そのヒロインも頭身下げてるせいで、年齢がイマイチ、ピンとこない。パーティメンバーの中には結構いい歳したキャラもいるのだが、頭身のせいで、なんか少年探偵団を操作してるみたいな感じになる。

 テーマだった “原点回帰” のひとつに “クリスタルの復活” があった。昔の FF は毎回何らかの形でクリスタルが関わっており、今回は久々にタイトルロゴの後ろにまでクリスタルが現れている。古き良き FF イズムが炸裂するのか……と思いきや、いざクリアしてみると「……別にこれクリスタル要らなくね?」といった感じだったのは残念。ラスボスの唐突具合もひどい。

 最後に……
「どう? 『IX』って面白かった?」と聞かれると、多分「ええ、まあ」と答えるんじゃないかと思う。つまらなくはない。でも人に勧めたくなるほどメチャクチャ面白いというわけでもない。「可もなく不可もなく」という言葉を体現しているような作品だった。

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