■さいごに


 「Brandish 4」は評判が悪い。「4」がシリーズ初体験の方ならともかく、今までのシリーズ経験者にとっては
「4」は「Brandish」のゲーム性そのものを悪い意味で覆してしまうものだったからだ。

 まず、画面がクォータービューになったこと。これに関しては賛否の「否」しか聞こえてこず、
「賛」が見当たらないといった有り様だ。「Brandish」は常にキャラ=プレイヤーであり、背後が見えない緊張感、
振り向くことの必要性が実にリアルで、それそのものがゲーム性の一端を担っていたと言っても過言ではない。
しかし「4」のクォータービューはそれらを見事に打ち砕き、「画面上のキャラをマウスで操作している」
という感覚が前面に出てしまった。そこには「Brandish」で感じた「キャラとの一体感」が随分失せてしまっている。

 次に、登場キャラクターの一新。おまけに舞台も変わっており、「Brandish」マニアなら御存知の
「Bの呪縛」も全く見当たらない。それはまあいいとしても、「Brandish」の代名詞とも言うべき
「アレス」そのものがいなくなってしまっているのは痛い。もちろんドーラもいない。
この2人なくしてどこが「Brandish」なのか、と言えるほど2人の存在感は大きかった。
「3」までで、アレスとドーラの因縁みたいなものに一応の決着が着いてしまったための
心機一転の意味もあるのだろうが、やはり落胆は隠せない。

 しかしそれでは「4」はまったくもって「ダメ」だったのか、と言うと、頭ごなしにそうとは言えない。
まず「3」までで、従来の「Brandish」のシステムは完成してしまっており、もうアレンジのしようがない
ところまできていた。あのシステムのまま続編を作ることも可能だったろうが、それでは進歩が全く無い。
今回の「4」は実験作と言えるのではないだろうか。クォータービューにすることによって「立体感」が出た。
極端に発想を飛ばせば、これは3D化への布石ともとれる。「Brandish」の3D化は、ある意味、究極の形である。
背後への緊張感が一層高まり、ダンジョン内は一層ダンジョンらしくなるだろう。

 …ただ、現時点ではもし作る技術があっても、普及しているパソコンのスペックが追いついてないだろう。
ファルコムのゲームは大抵、ソフト発売時点での普及しているパソコンのスペックの平均をやや下回った
必要スペックであることが多い。なんというか、購買層を意識してのことももちろんあるのだろうが、
必要スペックをとことん低くして、なおかつ他のメーカーと比較しても絶対的に面白く、
クオリティの高いゲームを多数出しているという点は素直に凄いと思う。
…ただ、最近は過去のリメイク作品ばかりが目立つ、というのはあるが。

 さて前置きが長くなってしまったが、個人的に「4」は「外伝」として捉えている。
謎解きやマップ完成率などの要素は変わってないわけだし、そういう意味では充分に楽しめた。
というか、割と夢中だった。どうやら筆者はマップ完成率さえあればいいらしい。
キャラに「属性」があり、それぞれの属性でエンディングが違う、というのには少々呆れたが。
キャラによってマップは若干違うが、属性の違いではマップまでは変わらない。
まったく同じことを同じキャラで3度もしなければならないのだ。苦痛以外の何物でもない。
しかしこれには抜け道があって、「clear」フォルダ内にある「~.datファイル」のデータ番号を書き換えるだけで
クリアしていないキャラクターのエンディングが見れてしまうのだ。書き換えると言っても別に改造ではない。
ファイル名のリネームである。…リネームするだけでエンディングが見れる、というのは
プロテクトが固いことで有名なファルコムらしくないのだが。

 話が少々脱線してしまったが、要は「4」も、それなりにちゃんと遊べる、ということだ。
ネット上の批評の中には「4だけはするな」というものまであるほどだが、それは「Brandish」を愛するが故の苦言。
あまりにも変わりすぎてしまった「Brandish」に拒否反応を起こしている、といったところだ。
とは言え、筆者も「3」までのシステムの方が好きで、是非またアレスの続編を出してほしいのだが。
…しかしとりあえずは1~3までをWINDOWSに移植してくれないかなぁ。
未経験者の方は、現在WINDOWS版「4」がDVDパッケージサイズ版(ゲームはCD-ROM)になって
安く再発売されているので、是非この機会に触れてみてほしい。オープン価格となっているが、
ファルコム通販での値段は\2,980だ。

 筆者データ
(現在攻略途中なのでマップ完成率が99.99%止まりだったりします。)

 ところで「4」の前身「VT」の「VT」の意味が気になっていたのだが、どうやら「Victim's Tower」の略らしい。
「神の塔」とかいう意味だそうだ。…うーん、そのまんま。

 2001/05/XX 初版



戻る